伊賀忍者に転生して、親孝行する。

風猫(ふーにゃん)

文字の大きさ
58 / 60
第六章 伊賀忍者 藤林疾風 戦国に同盟を作る

第九話 上杉謙信公と、伊賀の疾風。

しおりを挟む

元亀3(1572)年7月上旬 越後春日山城 
藤林疾風


 甲斐から北信濃の川中島に至り、広大な敷地持つ本家信濃善光寺の門前で、猿飛紙縒が率いる伊勢巫女の一隊と合流した。

 この時期、本家善光寺はご本尊の阿弥陀如来像や寺宝は武田信玄が甲斐国甲府へ移転し大御堂本尊の善光寺如来や寺宝は上杉謙信が越後へ持ち帰っていた。
 だが信濃善光寺の域内には、この時代の地方では珍しい尼寺「大本願」がある。
 住職は「善光寺上人」と言い、門跡寺院ではないが代々公家の出だ。

 大本願に多くはないが、米や味噌、醤油、砂糖、塩、胡麻油などを寄進し、また、伊勢芋の種芋を渡して増やし広めていただくようにお願いし、お参りした。
 上人はたいそう喜んでくれて、伊勢神宮の祭主殿に宛てた礼状を託された。

 善光寺の入口では佐助の姉である猿飛紙 こより率いる8名の伊勢巫女達と合流した。
 彼女らは越中の村々を巡回し、病気や怪我の治癒をしながら、一向一揆の情勢を探っていた者達だ。

「あらぁ佐助、久しぶり。背丈は変ってないね。」

「紙縒ねえちゃん、俺はもう25だぞ。背丈が伸びる訳ないだろ。」

 ちなみに佐助の身長は158cm、紙縒は162cmで負けている。
 それをいつも紙縒が揶揄のである。プイっと顔を背ける佐助に、なおも紙縒が追討ちを掛ける。

「あらもう25才にもなったのね。そろそろお嫁さんを貰わなくちゃね。うちの知世ちゃんとは仲が良いのでしょう。うふふ、約束はしてるの?」

 姉ちゃんやめでくれぇ~、おいらの精神がズタズタだぁ。『行き遅れの姉ちゃんには言われたくない』とか返したいが、そんなことを言えば命が幾つあっても足りない。姉ちゃんには幼少の頃から一度も勝ったことがないのだ。
 ああ、知世ちゃん真っ赤になってこっちを見てる。皆、なんで黙って見ているんだ。

「才蔵、なんとか言ってやれよ。」

「はあっ、紙縒殿、その辺にしておいては如何か。佐助が萎縮して警護が疎かになっては困り申す。」

 疾風様の助けだ。なんで才蔵さんに言わせてんだ? あれっ、紙縒ねえちゃんが俯いて顔が赤いぞっ。もしかして、才蔵さんは姉ちゃんの弱点なのか?

 そんな佐助姉弟の馴れ合いを皆で微笑ましく眺めた後、しばらく行くと、粗末な竹編みで囲った関所もどきの門があり、数人の武士達に誰何された。
 伊勢神宮から伊勢巫女達を率いて、上杉謙信公に謁見するために参ったと伝えた。

 俺と佐助、才蔵の3人は、伊勢神宮の神職の出で立ちで、お銀は伊勢巫女姿で他の伊賀者達は商人姿で4台の荷車を引いているのだ。


 だが、俺達を中々通さず押し留めようとする北信濃の土豪の兵に、業を煮やした俺は、謙信公からの書状と拝領された脇差しをかざし、これ以上理由もなく押し留めるのであれば、謙信公に訴え厳しく処罰していただくと言ったが、土地の領主に許可を得るから待てとの一点張りだ。
 どうやら土豪の兵士達は、自分達の領主に知らせ、あわよくば俺達の荷の強奪を図るようだ。

 しかし間もなく、越後の軒猿と思しき10数人の男達を率いた武将が現れ、土豪達を一喝した。

「お前達、お館様の許しもなく関所など設けるとはどういうことだっ。直ちに撤去し、領主左門守に春日山城へ登城せよと伝えよ。半刻のうちに終わらさねば、己ら皆打首に致すぞっ。」

 どうやら、国境を見張っていた軒猿の報告で駆けつけたようだ。上杉謙信公に拝謁のため伊勢神宮から遣わされたというと、すぐに『ご案内致す。』言われ、俺達は周囲を軒猿達に囲まれながら春日山城へたどり着いた。


 春日山城は越後直江津の山城で海岸線から3km程の位置にある標高200m弱の春日山にある。
 山頂から西へ延びる稜線上には、大小5つの砦があり、南北東の山中及び平地には7つの砦が春日山城と道で繋がれ、一体となっている堅城である。

 城に上がり旅の汚れを落とすとすぐに、伊賀者達と伊勢巫女に荷駄を預け、俺と才蔵、佐助、お銀、紙縒で拝謁となった。
 謙信公の傍らには、5人の家臣が控えていた。

「伊勢神宮より使いとして参りました伊勢巫女の宰領を致しております、伊賀の藤林疾風と申します。
 此度は上杉謙信公より伊勢神宮へ伊勢巫女らへのお礼状をいただきましたので、不躾とは存じましたが『伊勢芋』の種芋を献上致したくまかり越しました。」

 俺が伊賀者であることを明かすと、傍らの家臣達の目が驚愕と警戒の色に染まった。

「うむ、伊勢神宮の歩き巫女はその方の差配であったのか。過日の書状に認めたとおり、昨今の冷夏による不作に見舞われたが、伊勢芋のおかげで領民達の多くが助かっておる。あらためて礼を申す。」

「過分なるお言葉、痛み入ります。此度はご領主様の手で伊勢芋を増やし広めて頂きたく種芋を持参致しましたので、ご笑納ください。」

「その方は伊賀の者、何故、他国の越後に斯様なことを致すのか。」
 
「謙信公と同じにございます。謙信公は、義によって天下静謐を毘沙門天様に誓ったと聞き及びました。
 我らは、戦乱で苦しむ民を領国の分け隔てなく、皆仲間として助けたいと願う者達にございます。」

「 · · さようか。しかし何ぞ礼をしなくてはならぬな。望みがあれば言うてみよ。」

「 · ·  しからば、謙信公の武勇をお貸しいただきたく存じます。」

「むっ、、何れの者を倒せと言うのだ?」

「御仏の名を語る一向一揆衆を倒すために、お力をお貸しください。」

「ぬっ、一向一揆か。奴らは元より我が領国に攻め入り敵対しておるわ。それを今さら、如何にするというのだ。」

「一向一揆を鎮めるまでの不戦同盟を結んで頂きたくお願い申し上げます。これなるは、織田信長公よりの書状にございます。」

 さらに、懐から北条氏政の書状を出し差し出す。
 書状に目を通した謙信は、読み終えた書状を家臣に渡し広間にいる一同にも読ませた。
 そしてしばし瞑目の末、顔を上げて言った。

「これは誠か。このようなことができるのか。」

「既に武田勝頼殿に会い、釘を刺しております。
 盟を破れば、織田、徳川、浅井が、そして同盟を結ぶ北条も助けませぬ。加えて上杉が一斉に攻め掛かると。
 同盟を結べば後顧の憂いなく、全力で一向一揆討伐に当たれます故に。」

「受け申そう。積年の仇を遂げる機会なれば是非も無し。
 疾風殿、そなたらはしばし当地に逗留願えぬか。上杉家の武勇をご覧に入れ申そう。」

「承知仕る。我が配下は伊賀の手練達、一揆勢の物見にご助力致しましょう。」

 こうして俺と伊勢巫女、伊賀者達は上杉家の戦に参戦することとなった。





【 上杉謙信の実像 その1 】

 越後の上杉謙信という戦国武将は、毘沙門天を崇拝し、生涯不犯を誓い、義に厚く、車懸りの戦法で無双し、敵に塩を送った。
 そんな美化された印象イメージがある。

 毘沙門天は四天王の単独の呼称で、四天王で並び祀られる時は、多聞天と呼ばれる。
 謙信が祀ったのは、刀八毘沙門天と呼ばれる刀を八本持ち、獅子に乗り、頭上に如来をいただく像のようだ。
 その姿から武神とされ多くの戦国武将から崇拝されたが、起源は天竺インドの財宝神クベーラのようだ。

 さて、謙信は毘沙門天を財宝神と知っていたのだろうか。
 高級衣服原料の青苧あおそ(イラクサ)の座を差配して全国に広め、莫大な利益を上げた。
 しかし、質素な暮らしを旨とし、家臣達は豪勢な饗宴の食事で戦が近いのを知ったという。

 また、今川家が武田家に塩止めを行った際、宿敵信玄に塩を送ったとあるが、送ったのではない、売ったのである。
 しかも独占販売のため、多大な利益を得ている。
 従って、美談でもなんでもなく、敵の弱みにつけ込んで暴利を得ただけのことだったのだ。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

兄貴のお嫁さんは異世界のセクシー・エルフ! 巨乳の兄嫁にひと目惚れ!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
ファンタジー
夏休み前、友朗は祖父の屋敷の留守を預かっていた。 その屋敷に兄貴と共に兄嫁が現れた。シェリーと言う名の巨乳の美少女エルフだった。 友朗はシェリーにひと目惚れしたが、もちろん兄嫁だ。好きだと告白する事は出来ない。 兄貴とシェリーが仲良くしているのを見ると友朗は嫉妬心が芽生えた。 そして兄貴が事故に遭い、両足を骨折し入院してしまった。 当分の間、友朗はセクシー・エルフのシェリーとふたりっきりで暮らすことになった。

処理中です...