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はじまり
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「う、ん~~~~~っ!」
少女は背伸びをして春の匂いを吸い込んだ。そよ風が、点在する木々の葉を優しく揺らしている。
陽の光は里の丘全てを生きている喜びに輝かせている。少女も例外ではなかった。
水のせせらぐ音。地面に置いた籠にいっぱいの洗濯物。
「今日は、ぜえっこうのお洗濯日和だね~」
独り言をつぶやき少女はもう一度籠を持ちあげて川へ向かう。
水の音が近づく。緩やかな傾斜の道を辿れば目の前に広がる光を反射した水面。
「つめたっ!」
水に手を浸けて叫ぶ声はどこか嬉しそう。雪解け水の気持ちいい冷たさを味わいたかったから当然だった。
籠から衣類を取り出し水に浸け鼻歌交じりにこすり始める。
「いつも思うんだけど...どっかの物語みたいに、川上から大きな桃が流れてきたりとか...面白いことないかなぁ」
普段ならいつもどおり洗濯を終わらせて小屋へ戻るだけだった。
洗い始めてから数分後、川上から”ソレ”が流れてくるまでは...
何か予感めいたことがあったのではなかった。何気なく上流に顔を向けただけ。
視界には水面にプカプカ浮かんでゆっくり流れてくる物体。大きさは1~2m四方。何かの荷物包みのようだった。
(イベント!!きたあっ!!)
少女は目を輝かせ靴を脱ぎ好奇心に導かれるまま浅瀬の川を荷物包みに向かって歩む。
「わ、とと...」
水底に足をとられて転びそうになったのは興奮して慌てていたから。
「これ...何だろう?」
荷物包みに手を触れる。何気なく視線を下に向け動転した。
「!?...ひ、と...?」
水面に浮いている荷物包みの下で仰向けになっていたのは気を失っていた男の人だった。
【これから始まるのお話は、里に住んでいた平凡な少女と何やら曰くありそうな男との旅立ちの物語。
どうか最後まで紡げますように。皆にこの物語の結末を届けられますように。】
少女は背伸びをして春の匂いを吸い込んだ。そよ風が、点在する木々の葉を優しく揺らしている。
陽の光は里の丘全てを生きている喜びに輝かせている。少女も例外ではなかった。
水のせせらぐ音。地面に置いた籠にいっぱいの洗濯物。
「今日は、ぜえっこうのお洗濯日和だね~」
独り言をつぶやき少女はもう一度籠を持ちあげて川へ向かう。
水の音が近づく。緩やかな傾斜の道を辿れば目の前に広がる光を反射した水面。
「つめたっ!」
水に手を浸けて叫ぶ声はどこか嬉しそう。雪解け水の気持ちいい冷たさを味わいたかったから当然だった。
籠から衣類を取り出し水に浸け鼻歌交じりにこすり始める。
「いつも思うんだけど...どっかの物語みたいに、川上から大きな桃が流れてきたりとか...面白いことないかなぁ」
普段ならいつもどおり洗濯を終わらせて小屋へ戻るだけだった。
洗い始めてから数分後、川上から”ソレ”が流れてくるまでは...
何か予感めいたことがあったのではなかった。何気なく上流に顔を向けただけ。
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「これ...何だろう?」
荷物包みに手を触れる。何気なく視線を下に向け動転した。
「!?...ひ、と...?」
水面に浮いている荷物包みの下で仰向けになっていたのは気を失っていた男の人だった。
【これから始まるのお話は、里に住んでいた平凡な少女と何やら曰くありそうな男との旅立ちの物語。
どうか最後まで紡げますように。皆にこの物語の結末を届けられますように。】
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