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9.オオカミ
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「さてと、家の中を見ていくか」
俺はゴブリンの集落に戻り、家の中を見ていくことにした。
しかし、ゴブリンの家には寝る為の草の布団があるぐらいで他には何もなかった。
うん、予想してたけど何もないな。
武器庫みたいな家も合ったけど、良い武器があるわけでも無かったので無視した。
収穫はなしか……ま、小さい集落だったしこんなもんかな。
そう思い帰ろうとしたとき、ふと小さな檻が目についた。
「あれ、こんなのあったんだ。」
近づいてみると、そこには小さな子犬がいた。
何者にも染まらない真っ白な毛が特徴的だった。
この世界にも犬っていたんだな。
多分、ゴブリン達が食べようとしていたのだろう。
(犬か……これは使えるかもな)
犬は非常に優秀である。
ちゃんとしつければ命令を聞くようになる。
それに、ゴブリンの臭いを覚えさせれば、これまで以上に楽にゴブリンを見つけられるようになるかもしれない。
狩りに使われる猟犬は、獲物を見つけてから二つの役割に――細かい違いはあるが――分かれる。
1つ目は主人が獲物を射った時に、逃げた獲物を追いかけ止めを刺すタイプの猟犬。
2つ目は主人が射った時に、逃げた獲物を吠えながら追い込み、主人に位置を教え止めを刺せるようにする。
この犬が猟犬に向いている犬かは分からないが、鼻が良いのは間違いない。
俺はそう思い、この犬を飼うことに決めた。
子犬を囲っている檻は、良く見ると軽く地面に刺さっているだけの檻で、簡単に持ち上げることができた。
ゴブリンが作った物だしこんなものだろう。
「こっちおいで」
俺はしゃがんで手を伸ばし、犬に語りかけた。
最初は戸惑ってた犬も根気よく待つと、近づいてきて手を舐めてきた。
「よーしよしよし!」
俺は犬を撫で回す。
(結構可愛いな。)
尻尾を見るとブンブン振っていた。
どうやら喜んでいるようだ。
それを見てさらに撫で回した。
一時の至福の時間である。
だが、そんな楽しい時間も直ぐに終わった。
今まで俺を見ていた子犬が急に森の方を見たのだ。
俺も何だろうなと思いながら子犬が見ている方を見て耳を済ましてみると、足音が聞こえてきた。
――それも複数の。
危険を察知した俺は犬を抱き、足音が聞こえてくる反対側の森に走り込んだ。
森の中から様子を見てみると20体以上のゴブリンがやって来た。
多分、逃がした二匹のゴブリンが近くの集落に助けを求め、やって来たのだろう。
さすがに子犬を抱えている今、戦うのは厳しいのでそのまま逃げることにした。
子犬に吠えられたら困るとこだったが、幸いなことに吠えなかったので助かった。
「よしよし、よく吠えなかったな」
子犬の頭を軽く撫でる。
そして、子犬を顔の前まで持ってくる。
「お前には期待してるからな」
「わん!」
子犬は元気よく返事をした。
しかし、バルトはこの時大きな勘違いをしていた。
バルトが子犬だと思っていたのは、実はオオカミの子供だったのだ。
神話や童話などで多くの話があるオオカミ。
中には恐怖の象徴や悪として捉えられているが、非常に賢い生き物である。
その賢さを現す話として狼王ロボの話が有名だろう。
ロボは狼の群れのリーダーで、家畜を襲っていた。
その被害に苦しんだ人達は、毒の餌を仕掛けたり、武器を持ち殺そうとしたが、毒の餌は見抜かれ、武器を持つ人の前には姿を現さず、人を嘲笑うかのように罠を回避してきた。
しかし、狼退治の専門家にロボの妻であるブランカが捕まり殺されると、ロボは怒り狂い遂には捕まってしまう。
鎖に繋がれたロボは、人間から与えられる水や食べ物には一切手をつけず餓死してしまった。
人間に一切屈服しない姿と野生の気高さを見た専門家は、妻を先に殺すという自身の卑劣さを恥じたという。
このような話があるほど、狼は誇り高く、気高く、賢い動物なのである。
この世界での狼がどの程度の地位に有るのかは分からないが、バルトの大きな力となるのは間違いないだろう。
―――村に子犬を連れて帰ると大騒ぎになった。
「お前それは狼じゃねぇか!」
どうやら、俺が犬だと思っていたのは狼だったらしい。
「その狼がどの種類に当てはまるかは分からねえが、もし……もし仮にフェンリルだとしたら……いつかこの国が滅びるぞ。そうじゃなくても、狼は危険だ!」
この世界での狼というのは中々強い存在らしい。中でもフェンリルは、群を抜いて強く国を簡単に滅ぼせるだけの力をもっているみたいだ。
まあ、もとの世界でも神話として出てくるぐらいだしな。
「俺が責任もって育てるから!まだ、子供だし大丈夫だって。もし危険だと思ったらちゃんと殺すから」
こいつが仮にフェンリルだとしたら、ちゃんと飼い慣らせればものすごい戦力になる。
フェンリルではなかったとしても、俺の良いパートナーになることは間違いない。
というか、フェンリルなんてそうそういるわけもない。
もし、飼い慣らせなかった場合は責任をもって殺す覚悟はある。
結局、村人達を説得することに成功し飼えることになった。
今は家の前におり、しゃがみこんで狼に語り掛ける。
「お前、狼だったのか。」
「わん。」
「良い返事だな。あ、お前にも名前を付けないとな。そうだな……ウィル、お前はウィルだ」
「わん!」
どうやら気に入ってくれたようだ。
(てか狼なのにわんって鳴くんだな)
犬が大きな声で゛わん〝と鳴くのは理由がある。
本来ならば、犬同士でコミュニケーションを取るときは小さな声で十分なのだ。
しかし、イヌ科より人間の耳が悪いため、人間にも聞こえるように「わん」と鳴くそうだ。
つまり、人間に合わせてくれているのだ。
犬の祖先でもあるオオカミも、人間に飼われると「わん」と鳴くようになるらしい。
ウィルも子供ながら賢い頭でそれを瞬時に理解し、バルトに合わせているのである。
さて、これからウィルを狩りでも使えるように、しつけていかなければならない。
まずは待てからだ。
俺はゴブリンの集落に戻り、家の中を見ていくことにした。
しかし、ゴブリンの家には寝る為の草の布団があるぐらいで他には何もなかった。
うん、予想してたけど何もないな。
武器庫みたいな家も合ったけど、良い武器があるわけでも無かったので無視した。
収穫はなしか……ま、小さい集落だったしこんなもんかな。
そう思い帰ろうとしたとき、ふと小さな檻が目についた。
「あれ、こんなのあったんだ。」
近づいてみると、そこには小さな子犬がいた。
何者にも染まらない真っ白な毛が特徴的だった。
この世界にも犬っていたんだな。
多分、ゴブリン達が食べようとしていたのだろう。
(犬か……これは使えるかもな)
犬は非常に優秀である。
ちゃんとしつければ命令を聞くようになる。
それに、ゴブリンの臭いを覚えさせれば、これまで以上に楽にゴブリンを見つけられるようになるかもしれない。
狩りに使われる猟犬は、獲物を見つけてから二つの役割に――細かい違いはあるが――分かれる。
1つ目は主人が獲物を射った時に、逃げた獲物を追いかけ止めを刺すタイプの猟犬。
2つ目は主人が射った時に、逃げた獲物を吠えながら追い込み、主人に位置を教え止めを刺せるようにする。
この犬が猟犬に向いている犬かは分からないが、鼻が良いのは間違いない。
俺はそう思い、この犬を飼うことに決めた。
子犬を囲っている檻は、良く見ると軽く地面に刺さっているだけの檻で、簡単に持ち上げることができた。
ゴブリンが作った物だしこんなものだろう。
「こっちおいで」
俺はしゃがんで手を伸ばし、犬に語りかけた。
最初は戸惑ってた犬も根気よく待つと、近づいてきて手を舐めてきた。
「よーしよしよし!」
俺は犬を撫で回す。
(結構可愛いな。)
尻尾を見るとブンブン振っていた。
どうやら喜んでいるようだ。
それを見てさらに撫で回した。
一時の至福の時間である。
だが、そんな楽しい時間も直ぐに終わった。
今まで俺を見ていた子犬が急に森の方を見たのだ。
俺も何だろうなと思いながら子犬が見ている方を見て耳を済ましてみると、足音が聞こえてきた。
――それも複数の。
危険を察知した俺は犬を抱き、足音が聞こえてくる反対側の森に走り込んだ。
森の中から様子を見てみると20体以上のゴブリンがやって来た。
多分、逃がした二匹のゴブリンが近くの集落に助けを求め、やって来たのだろう。
さすがに子犬を抱えている今、戦うのは厳しいのでそのまま逃げることにした。
子犬に吠えられたら困るとこだったが、幸いなことに吠えなかったので助かった。
「よしよし、よく吠えなかったな」
子犬の頭を軽く撫でる。
そして、子犬を顔の前まで持ってくる。
「お前には期待してるからな」
「わん!」
子犬は元気よく返事をした。
しかし、バルトはこの時大きな勘違いをしていた。
バルトが子犬だと思っていたのは、実はオオカミの子供だったのだ。
神話や童話などで多くの話があるオオカミ。
中には恐怖の象徴や悪として捉えられているが、非常に賢い生き物である。
その賢さを現す話として狼王ロボの話が有名だろう。
ロボは狼の群れのリーダーで、家畜を襲っていた。
その被害に苦しんだ人達は、毒の餌を仕掛けたり、武器を持ち殺そうとしたが、毒の餌は見抜かれ、武器を持つ人の前には姿を現さず、人を嘲笑うかのように罠を回避してきた。
しかし、狼退治の専門家にロボの妻であるブランカが捕まり殺されると、ロボは怒り狂い遂には捕まってしまう。
鎖に繋がれたロボは、人間から与えられる水や食べ物には一切手をつけず餓死してしまった。
人間に一切屈服しない姿と野生の気高さを見た専門家は、妻を先に殺すという自身の卑劣さを恥じたという。
このような話があるほど、狼は誇り高く、気高く、賢い動物なのである。
この世界での狼がどの程度の地位に有るのかは分からないが、バルトの大きな力となるのは間違いないだろう。
―――村に子犬を連れて帰ると大騒ぎになった。
「お前それは狼じゃねぇか!」
どうやら、俺が犬だと思っていたのは狼だったらしい。
「その狼がどの種類に当てはまるかは分からねえが、もし……もし仮にフェンリルだとしたら……いつかこの国が滅びるぞ。そうじゃなくても、狼は危険だ!」
この世界での狼というのは中々強い存在らしい。中でもフェンリルは、群を抜いて強く国を簡単に滅ぼせるだけの力をもっているみたいだ。
まあ、もとの世界でも神話として出てくるぐらいだしな。
「俺が責任もって育てるから!まだ、子供だし大丈夫だって。もし危険だと思ったらちゃんと殺すから」
こいつが仮にフェンリルだとしたら、ちゃんと飼い慣らせればものすごい戦力になる。
フェンリルではなかったとしても、俺の良いパートナーになることは間違いない。
というか、フェンリルなんてそうそういるわけもない。
もし、飼い慣らせなかった場合は責任をもって殺す覚悟はある。
結局、村人達を説得することに成功し飼えることになった。
今は家の前におり、しゃがみこんで狼に語り掛ける。
「お前、狼だったのか。」
「わん。」
「良い返事だな。あ、お前にも名前を付けないとな。そうだな……ウィル、お前はウィルだ」
「わん!」
どうやら気に入ってくれたようだ。
(てか狼なのにわんって鳴くんだな)
犬が大きな声で゛わん〝と鳴くのは理由がある。
本来ならば、犬同士でコミュニケーションを取るときは小さな声で十分なのだ。
しかし、イヌ科より人間の耳が悪いため、人間にも聞こえるように「わん」と鳴くそうだ。
つまり、人間に合わせてくれているのだ。
犬の祖先でもあるオオカミも、人間に飼われると「わん」と鳴くようになるらしい。
ウィルも子供ながら賢い頭でそれを瞬時に理解し、バルトに合わせているのである。
さて、これからウィルを狩りでも使えるように、しつけていかなければならない。
まずは待てからだ。
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