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38.決意
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「最後か……」
オークの死体回収も、これが最後の1体。
あの子達の所に戻らないと。
正直気が重い。
「やっぱ伝えるべきだよな……」
考えに考えた結果、母親の死を言うことにした。
嘘をつき、騙すという選択もあった。
しかし、それは結果的にあの子達を更に傷つけることになる気がした。
生きていると信じていたのに、実は死んでいたと知る。
それを知ったとき、あの子達は母親の死と、信じていた人に裏切られたという2つの事実を知ることになる。
それに、俺があの子達の立場だったらやっぱり教えてほしかったと思うだろう。
だから、事実を伝えることにした。
「ウィル、行くよ。」
重い足をなんとか動かしてあの子達の待つ所に行った。
「バルトお兄ちゃん!」
俺の足音を聞いて、クレアが隙間から飛び出して抱きついてきた。
「ごめんね、遅くなって。大丈夫だった?」
「うん!わー!おっきな狼しゃんなの!」
ウィルに気がついたクレアは、ウィルに抱きつき遊んでいる。
ウィルも満更ではないのか、クレアが触るのを許していた。
「お兄さん。お母さんは?」
クレアに続くように隙間から出てきたシャルは、ウィルよりもお母さんのことが気になるようだ。
「クレアちゃん。こっちにおいで。」
「なぁに?」
「今から言うことをよく聞くんだよ。」
『うん』
二人とも俺の真剣さを感じたのか大人しくなる。
「クレアちゃんとシャルちゃんのお母さんは……死んだ。」
俺は二人が泣くことを予想していたが、泣くことはなかった。
「バルトお兄ちゃん。死ぬってどういうことなの?」
クレアはまだ死というものを理解していなかったのだ。
シャルが泣かないのは、元々何かを感じ取っていたのだろうか。
うつむいているため表情が分からない。
「死ぬってことはもう、お母さんに会えないってことだよ。」
「もう、会えないの?」
「うん。」
「お母さんとご飯食べられないの?」
「うん。」
「もう一緒に遊べないの?」
段々とクレアの瞳が濡れてくる。
「うん。」
「もう一緒に寝られないの?」
「うん。」
俺は頷くことしか出来ない。
「もうお話できないの?」
「うん。」
「ウソなの!嘘つくお兄ちゃんなんて大嫌い!うわぁぁぁぁん!」
クレアが大声で泣く。
それにつられて、今まで我慢していたシャルまで泣き出した。
「ごめん、ごめんな。」
そんな俺に出来ることは、二人を抱き締めることと謝ることだけだった。
それからしばらく、2人の泣き声が洞窟に響き渡っていた。
俺はクレアをおんぶし、シャルと村まで戻っていた。
クレアは泣きつかれ眠ってしまっている。
「――お兄さん。」
「なに?」
「本当のこと言ってくれてありがとうね。私、頑張るよ。お母さんの最後の言葉、クレアを守ってねだったの。だから私、クレアを守る!だってお姉ちゃんだから!」
俺はそのとき見せてくれた笑顔を忘れることはないだろう。
現実と向き合い、自分も辛いはずなのに妹を守ると言って笑った顔。
目にはまだ少し涙の跡がある。
こんなにも美しく、儚い笑顔は見たことがなかった。
「帰ってきたぞー!」
俺たちの姿を見た村人の一人が声をあげる。
それを聞いて俺の回りに村人が集まってきて村長がシャルを抱き締める。
「シャル、無事で良かった。」
「村長……」
「よくぞ助け出してくれた。心から感謝するのじゃ。」
「いえ、3人助けられなかったですから。」
「そんなに落ち込むな。仕方のないことじゃ。お主が来なければ皆殺されておったわ。」
「はい……」
「して、その3人はどうしたのじゃ?」
「まだ洞窟に。俺一人では運べませんので男二人、手を貸していただきたい。」
「分かったのじゃ。」
「シャルはここで待ってて。」
「うん。」
クレアを女性に預け、村人の男二人を連れ洞窟に戻った。
ウィルは念のため村に置いてきた。
「これは酷い……」
女性の死体を見て、男が言葉を漏らす。
「これで体を綺麗にして服を着させるんだ。」
袋から服、水、布を取り出し、二人に渡す。
それを使いきれいにしていく。
「どれが、シャルとクレアの母親ですか?」
「あなたが服を着せたその人ですよ。」
「この人が……」
確かに、この3人の中で一番美しかった。
シャルとクレアの可愛さもこの人譲りなのだろう。
俺は彼女の手を握る。
助けてやれなくてすまない。
あなたもあの子達の成長を見守りたかったよな。
誰があの子達を育てるかは分からないが、大事に育ててくれると思う。
あなた譲りでとても可愛いからね。
それに俺が不自由は絶対にさせない。
悔いが残っていると思うが、どうか安らかに眠ってくれ。
「よし、行こう。」
女性たちを抱え、洞窟を後にした。
オークの死体回収も、これが最後の1体。
あの子達の所に戻らないと。
正直気が重い。
「やっぱ伝えるべきだよな……」
考えに考えた結果、母親の死を言うことにした。
嘘をつき、騙すという選択もあった。
しかし、それは結果的にあの子達を更に傷つけることになる気がした。
生きていると信じていたのに、実は死んでいたと知る。
それを知ったとき、あの子達は母親の死と、信じていた人に裏切られたという2つの事実を知ることになる。
それに、俺があの子達の立場だったらやっぱり教えてほしかったと思うだろう。
だから、事実を伝えることにした。
「ウィル、行くよ。」
重い足をなんとか動かしてあの子達の待つ所に行った。
「バルトお兄ちゃん!」
俺の足音を聞いて、クレアが隙間から飛び出して抱きついてきた。
「ごめんね、遅くなって。大丈夫だった?」
「うん!わー!おっきな狼しゃんなの!」
ウィルに気がついたクレアは、ウィルに抱きつき遊んでいる。
ウィルも満更ではないのか、クレアが触るのを許していた。
「お兄さん。お母さんは?」
クレアに続くように隙間から出てきたシャルは、ウィルよりもお母さんのことが気になるようだ。
「クレアちゃん。こっちにおいで。」
「なぁに?」
「今から言うことをよく聞くんだよ。」
『うん』
二人とも俺の真剣さを感じたのか大人しくなる。
「クレアちゃんとシャルちゃんのお母さんは……死んだ。」
俺は二人が泣くことを予想していたが、泣くことはなかった。
「バルトお兄ちゃん。死ぬってどういうことなの?」
クレアはまだ死というものを理解していなかったのだ。
シャルが泣かないのは、元々何かを感じ取っていたのだろうか。
うつむいているため表情が分からない。
「死ぬってことはもう、お母さんに会えないってことだよ。」
「もう、会えないの?」
「うん。」
「お母さんとご飯食べられないの?」
「うん。」
「もう一緒に遊べないの?」
段々とクレアの瞳が濡れてくる。
「うん。」
「もう一緒に寝られないの?」
「うん。」
俺は頷くことしか出来ない。
「もうお話できないの?」
「うん。」
「ウソなの!嘘つくお兄ちゃんなんて大嫌い!うわぁぁぁぁん!」
クレアが大声で泣く。
それにつられて、今まで我慢していたシャルまで泣き出した。
「ごめん、ごめんな。」
そんな俺に出来ることは、二人を抱き締めることと謝ることだけだった。
それからしばらく、2人の泣き声が洞窟に響き渡っていた。
俺はクレアをおんぶし、シャルと村まで戻っていた。
クレアは泣きつかれ眠ってしまっている。
「――お兄さん。」
「なに?」
「本当のこと言ってくれてありがとうね。私、頑張るよ。お母さんの最後の言葉、クレアを守ってねだったの。だから私、クレアを守る!だってお姉ちゃんだから!」
俺はそのとき見せてくれた笑顔を忘れることはないだろう。
現実と向き合い、自分も辛いはずなのに妹を守ると言って笑った顔。
目にはまだ少し涙の跡がある。
こんなにも美しく、儚い笑顔は見たことがなかった。
「帰ってきたぞー!」
俺たちの姿を見た村人の一人が声をあげる。
それを聞いて俺の回りに村人が集まってきて村長がシャルを抱き締める。
「シャル、無事で良かった。」
「村長……」
「よくぞ助け出してくれた。心から感謝するのじゃ。」
「いえ、3人助けられなかったですから。」
「そんなに落ち込むな。仕方のないことじゃ。お主が来なければ皆殺されておったわ。」
「はい……」
「して、その3人はどうしたのじゃ?」
「まだ洞窟に。俺一人では運べませんので男二人、手を貸していただきたい。」
「分かったのじゃ。」
「シャルはここで待ってて。」
「うん。」
クレアを女性に預け、村人の男二人を連れ洞窟に戻った。
ウィルは念のため村に置いてきた。
「これは酷い……」
女性の死体を見て、男が言葉を漏らす。
「これで体を綺麗にして服を着させるんだ。」
袋から服、水、布を取り出し、二人に渡す。
それを使いきれいにしていく。
「どれが、シャルとクレアの母親ですか?」
「あなたが服を着せたその人ですよ。」
「この人が……」
確かに、この3人の中で一番美しかった。
シャルとクレアの可愛さもこの人譲りなのだろう。
俺は彼女の手を握る。
助けてやれなくてすまない。
あなたもあの子達の成長を見守りたかったよな。
誰があの子達を育てるかは分からないが、大事に育ててくれると思う。
あなた譲りでとても可愛いからね。
それに俺が不自由は絶対にさせない。
悔いが残っていると思うが、どうか安らかに眠ってくれ。
「よし、行こう。」
女性たちを抱え、洞窟を後にした。
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