VRMMOの世界で第2の人生を謳歌します。

ヤキメシ

文字の大きさ
49 / 69

49.マラアイ村

しおりを挟む
冒険者ギルドを後にし、西門に行く。


その付近には馬車をレンタル出来るところが多数あり、馬小屋もたくさんある。


その馬を見ていると商人に声をかけられた。


「お、兄ちゃん!馬車を借りるかい?」


「そうしようかなと思っています。安い馬車でいくらするんですか?」


「うちで一番安いのは、1日で馬車と馬で銅貨30枚、御者付きだとプラス銅貨20枚だな。」


そうか、馬車を操縦する人も必要なのか。


あの4人の誰か馬車を操縦できないのかな。


聞くの忘れてたわ。


でも、どうせ馬車をここまで返しに来ないといけないわけだし、しばらくこっちに帰ってくる予定もないのだから、御者付きの方がいいか。


「その馬車は5人乗れますか?」


「幌馬車だから、大きな荷物とかがないかぎり大丈夫だな。」


「なら御者付きでお願いします。」


「1日でいいんだな?」


「はい。」


「じゃあ、合計で銅貨50枚だ。」


銀貨1枚を渡し、お釣りを貰う。


「今から準備すっから少し待ってな。」


御者が2頭の馬を操り馬車を引いて来た。


馬車は、商人とかが使っていそうな半円の木の枠に白い布を被せた物だった。


「私は御者のゲルミアと申します。よろしくお願いします。」


「俺はバルトです。こちらこそよろしくお願いします。」


「今日はどちらまで行くのですか?」


「北西にあるマラアイ村までお願いします。」


「マラアイ村ですね。分かりました。」


「それで、時間はどのぐらいかかりますか?」


「大体7時間ってとこですかね。」


7時間か、結構かかるな。


歩きだと10時間ぐらいかかるからまだマシではあるが、もう少し早く着くと思っていた。


「そんなにかかるんですか。」


「馬も2時間ごとに休憩を取らせないとダメになりますからね。それぐらいかかるんですよ。」


そうなのか、イメージ的に歩きのスピードなら一日ずっと大丈夫なイメージがあったけど、そうでもないのか。


それからしばらく待っていると、四人が買い物を済まして来た。


「これ残った金です。」


ラエアから金を受け取る。


「よし!行くか!」


馬車に乗りマラアイ村に向けて出発した。


御者が言った通り、二時間ごとに休憩を取り馬に干し草や水を与えていた。


御者から聞いたところによると、馬は1日に10kgは食べるし、水も30Lぐらいは飲むそうだ。


だから、その量を積むのはスペースも取るし邪魔なので、魔法のバッグが必須アイテムなようだ。


うーん、馬は将来的には持っておいた方が良いだろうと思っていたのだが、思ってたより金が掛かるんだな。


そうして、7時間後、魔物に襲われることもなく、無事にマラアイ村に着くことができた。


既に空はオレンジ色に染まっていた。


「これはこれは、あなた様がバルト様かね?」


年老いたお婆ちゃんが声をかけてきた。


そのお婆ちゃんは白髪で、腰もほぼ90度に曲がっていて杖をついていた。


そして、目も開いているかどうかもわからないほど細かった。


その他にも、俺たちが村に向かってきているのを誰かが見たのだろう、既に人が集まってきていた。


ちらほらと子供の姿も見えた。


「そうです。」


「そうですかそうですか。ようこそお越しくださいました、新しい領主様。わしは村長のカレナです。それで、何用ですかな?」


「ここに住むもうと思いまして。」


細かったお婆ちゃんの目がカッと大きく開く。


「なんじゃと!?それはまた何故ですかな?こんな小さな村、貴族様が住むような場所では有りませんぞ!」


どうやら歓迎されていないようだ。


多分、貴族なんかに住まれるとやりずらくなるのだろう。


会うたびにペコペコしないといけないし、失言とか無礼をはたらけば殺されることもある。


そういうことをする貴族も多いのだ。


だからこそ、俺のような貴族にはいてほしくないのだろう。


「マラアイ村を大きくするためです。」


「そんなことわし達は望んでおられませぬぞ。よそ者に住まわれるのなんてお断りじゃ。」


「村長!」


周りの村人が村長の発言に慌てて村長を止める。


まー、思いっきり帰れ!って俺に言ってるようなものだしな。


参ったな。出来れば仲良くしていきたいのだが。


「大丈夫ですよ。俺に対しては変な遠慮はせずハッキリと言ってくださっていいです。殺しは絶対しないので。村長、俺はこの村を発展させたいだけです。発展できれば、皆さんの暮らしも今以上に良くなると思うのですが。」


「わしたちは今の暮らしに満足しておる!そんな手助けは無用なのじゃ!」


俺というよりは貴族を嫌っているようだな。


さて、どうしたものかな。


「他の皆さんも村長と同じ考えですか?」


「……」


黙りか。


そりゃあ、村長の前じゃ言いにくいか。


質問を変えてみるか。


「村長は貴族を嫌っているように思えます。どうして嫌っているのですか?」


「わしは、息子をお主たち貴族に殺されたのじゃ!この恨みは一生忘れん!」


村長は目に涙を浮かべながら叫んだ。


それは貴族が嫌われても仕方ないな。


「そうだったのですか……でも、俺は先日までは平民でした。村長が恨んでいる貴族とは少し違うと思いますよ。」


「なに?お主、元は平民なのか?」


「はい。」


その返事を聞いたとき、村長の顔から怒りの感情が消えた。


「そうだったのか。だが、どうして貴族になんかなったのかね?」


さて、ここはどう答えるべきか。


適当な嘘をつくことも可能だが……


例えば、村長は貴族を恨んでるみたいだし、貴族を内側から壊すためとかいう理由は好まれそうだな。


だが、まあここは正直に答えておくか。


別に隠すようなことでもないし、


「好きになった人が貴族だったので、俺も貴族になるしかなかったんですよ。」


「なんと!?そのためにわざわざ貴族になったと?」


「はい。それ以外に道はなかったので。」


「そうかそうか。好きな女の為にそこまで出来るか……お主は良いやつみたいじゃな。さっきは怒鳴って悪かったのう。」


「いえ、大丈夫ですよ。それより、俺達はこの村に住んでも良いですか?」


「もちろんじゃ!今日はわしの家に泊まると良い。そこで詳しい話を聞かせておくれ。」


強行手段を取らずに済み、何とか友好的な関係を築けそうだった。


村長の部屋に俺の連れ全員が入り、俺と村長は椅子に座り話をした。


村長の家は、他の家よりは少し大きかった。


「バルト様の目的はこの村を大きくすることだと言いましたな。どのぐらい大きくするつもりなのですかな?」


「村から街と呼ばれるぐらい変えるつもりです。」


「なんと!そこまで大きく……それは無理なんじゃないのかね?」


「いえ、可能ですよ。」


「ほう、自信があるようじゃな。良かろう、わし達もできる限りの助けはしようではないか。村が発展するならそれは良いことだからのう。」


「ありがとうございます。」


最初はどうなることかと思ったが、仲良くやれそうだったので安心した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

処理中です...