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~ファンタジー異世界旅館探訪~【前日譚】現実と異世界の狭間
第5話「一歩ずつ前~通路の先へ」
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突然のことに思わずビクッとしてしまった優希だったが、その重い扉が開くにつれ何ともいえない表情になっていった。外開きの鋼鉄製の扉は予想通り1m近い厚みがあり、手動での開閉は苦労するだろうと思われたし、挟まれたらもれなくぺしゃんこだろう。そうちょうど扉のそばに置いたままだった食材のたっぷり詰まったクーラーボックスだろうと。
慌てて引き寄せた。幸い底の方に少々引きずった跡がついた程度だったので、まあ大丈夫だろう。
やがて、開いた時と同様に大きな音を響かせて扉は開ききったようだ。開いた扉とコンクリートの隙間はそれなりに開いていたので、それほど慌てなくても大丈夫だったらしい。人が挟まれたら大変だからかも知れない。
扉の奥を覗いてみたが、やはりというか人はいないようだ。ということは扉の開閉を操作したのは監視カメラの向こうの人物らしい。
これまでの散々な痴態の数々に、思わず抗議の意味も込めて監視カメラを睨んだが、良く考えたら今もあちら側はこちらをモニター越しに見ている訳で、もし逆の立場だったら自分はひどくマヌケかも知れない。録画とかしているんだろうし恥を晒すのは止めておこう。そう思うと急に恥ずかしくなり、監視カメラの前から消えたくなってきた。
急ぎ荷物を抱えると飛び込むように中に入った。
扉の奥は工事現場などに見かけるようなカバーに保護されている電球の光で照らされていた。LED電球ではない暖色系の照明がより薄暗さを強調させている。ただ手前しか点灯していないらしく10m先より先は全くの暗闇だった。
明かりの届く範囲でしばらく佇んでいると、まるで閉じ込めてしまおうといわんばかりに鋼鉄製の扉が閉まり始めた。内側では反響によってより大きな音を立てて扉が閉まっていく。後ろを振り返った優希は完全に閉まりきるまでじっと扉を見つめ続けた。
ひと際大きな音を立てて扉は閉じるのを確認して、優希が正面を向くと「カッ」「カッ」という音とともに照明が次々点灯していった。ただ長く続くと思われたそれはあっけなく終わりを迎えた。30m程先に新しい扉で通路が分断されているようだったからだ。今度の扉は入り口と違い、潜水艦の水密扉のような構造で通路全体を金属製の隔壁で区切ったような造りのようだ、扉の中央には巨大なハンドルがありこれを回せば開きそうだった。
足下に気をつけながらゆっくりと扉の前まで移動すると、若干躊躇ったがそろーりとハンドルに手を掛けようとした。あと少しで掴めるという所で、急にハンドルが回転しだした。慌てて手を引くと「ガン」という乱暴な音がして、こちらの扉もゆっくりと開いていった。
これは何かの嫌がらせなのだろうか? 辺りを確認すると案の定、監視カメラが設置されていた。
足下に注意して扉を潜ると同じく次々と照明が点灯していく。ただ先ほどと違ったのはいつまでも音が鳴り止まないことで、通路自体は照らされても向こう側は確認出来ない程だった。
最初はおっかなびっくり歩を進めていた優希だったが、慣れか、はたまた荷物が重いことで効率よく進むことを学習したのか足取りも落ち着きを見せていた。だが、新しい扉を抜けた先のトンネル状の通路は、微妙高低差やカーブなども多く、狭い通路の圧迫感や、湿度の高さ、空気が停滞しているような不快感が疲労とともに表に出てきて、その歩みを遅いものにしていた。
やがて時間の感覚が曖昧になってきた頃、ついに前方に扉が見えてきた。
今度の扉は、今までの二枚の扉の丁度中間のような仕様で、水密扉のように中央にハンドルはあるものの扉やヒンジなどの構成部品がとにかく分厚く造られていて多少のことではビクともしないだろうと思われた。
今までのこともあり少々警戒してたが、近づく前から扉が開き始めた。
やがて重厚な扉から白い光が漏れ出てくると中の様子を窺い知ることが出来た。
この先はもうコンクリート打放しの通路ではなく、何かの施設に直接繋がっている扉だったようで、左に繋がる通路の側面に設置されているらしく目の前に白い壁が見え、床は乳白色のリノリウム独特のツヤを感じさせた。
優希は通路の終わりにさしかかると、少し上を向いて監視カメラがあるのを確認してみた。
だが、すぐに視線を扉の奥に向けると、何かを決断するかのように一歩を踏み出すのだった。
慌てて引き寄せた。幸い底の方に少々引きずった跡がついた程度だったので、まあ大丈夫だろう。
やがて、開いた時と同様に大きな音を響かせて扉は開ききったようだ。開いた扉とコンクリートの隙間はそれなりに開いていたので、それほど慌てなくても大丈夫だったらしい。人が挟まれたら大変だからかも知れない。
扉の奥を覗いてみたが、やはりというか人はいないようだ。ということは扉の開閉を操作したのは監視カメラの向こうの人物らしい。
これまでの散々な痴態の数々に、思わず抗議の意味も込めて監視カメラを睨んだが、良く考えたら今もあちら側はこちらをモニター越しに見ている訳で、もし逆の立場だったら自分はひどくマヌケかも知れない。録画とかしているんだろうし恥を晒すのは止めておこう。そう思うと急に恥ずかしくなり、監視カメラの前から消えたくなってきた。
急ぎ荷物を抱えると飛び込むように中に入った。
扉の奥は工事現場などに見かけるようなカバーに保護されている電球の光で照らされていた。LED電球ではない暖色系の照明がより薄暗さを強調させている。ただ手前しか点灯していないらしく10m先より先は全くの暗闇だった。
明かりの届く範囲でしばらく佇んでいると、まるで閉じ込めてしまおうといわんばかりに鋼鉄製の扉が閉まり始めた。内側では反響によってより大きな音を立てて扉が閉まっていく。後ろを振り返った優希は完全に閉まりきるまでじっと扉を見つめ続けた。
ひと際大きな音を立てて扉は閉じるのを確認して、優希が正面を向くと「カッ」「カッ」という音とともに照明が次々点灯していった。ただ長く続くと思われたそれはあっけなく終わりを迎えた。30m程先に新しい扉で通路が分断されているようだったからだ。今度の扉は入り口と違い、潜水艦の水密扉のような構造で通路全体を金属製の隔壁で区切ったような造りのようだ、扉の中央には巨大なハンドルがありこれを回せば開きそうだった。
足下に気をつけながらゆっくりと扉の前まで移動すると、若干躊躇ったがそろーりとハンドルに手を掛けようとした。あと少しで掴めるという所で、急にハンドルが回転しだした。慌てて手を引くと「ガン」という乱暴な音がして、こちらの扉もゆっくりと開いていった。
これは何かの嫌がらせなのだろうか? 辺りを確認すると案の定、監視カメラが設置されていた。
足下に注意して扉を潜ると同じく次々と照明が点灯していく。ただ先ほどと違ったのはいつまでも音が鳴り止まないことで、通路自体は照らされても向こう側は確認出来ない程だった。
最初はおっかなびっくり歩を進めていた優希だったが、慣れか、はたまた荷物が重いことで効率よく進むことを学習したのか足取りも落ち着きを見せていた。だが、新しい扉を抜けた先のトンネル状の通路は、微妙高低差やカーブなども多く、狭い通路の圧迫感や、湿度の高さ、空気が停滞しているような不快感が疲労とともに表に出てきて、その歩みを遅いものにしていた。
やがて時間の感覚が曖昧になってきた頃、ついに前方に扉が見えてきた。
今度の扉は、今までの二枚の扉の丁度中間のような仕様で、水密扉のように中央にハンドルはあるものの扉やヒンジなどの構成部品がとにかく分厚く造られていて多少のことではビクともしないだろうと思われた。
今までのこともあり少々警戒してたが、近づく前から扉が開き始めた。
やがて重厚な扉から白い光が漏れ出てくると中の様子を窺い知ることが出来た。
この先はもうコンクリート打放しの通路ではなく、何かの施設に直接繋がっている扉だったようで、左に繋がる通路の側面に設置されているらしく目の前に白い壁が見え、床は乳白色のリノリウム独特のツヤを感じさせた。
優希は通路の終わりにさしかかると、少し上を向いて監視カメラがあるのを確認してみた。
だが、すぐに視線を扉の奥に向けると、何かを決断するかのように一歩を踏み出すのだった。
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