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こんな日が来るとは思っていなかった
しおりを挟む※ここからコトリ視点に戻ります。
…………
「いも」「うと??」
そう呟いた後で長い長い説明をされ、あまりの驚きに声を失ったままで先生の顔を睨みつける。
実の兄?そんな、今更…。
もっと早く教えてよ!!
自分だけが全てを知っていて、何も知らない私を笑って眺めていたってワケでしょ?てっきり私に気が有ると思ったじゃないのッ。おい、こら、恥をかかせたなッ。
右手をグーの形にしたまま、駆け寄る私。それを見ても先生は余裕の表情で…いや、それどころか大きく両手を広げるのだ。
「おいで、コトリ」
「う、うわああああん」
ギュウギュウと抱き締められながら、私は子供のように声を上げて泣きじゃくる。
「よしよし、お前、泣くと不細工だなあ~」
「ブ、ブスじゃないもん!!」
こんな日が来るとは思っていなかったから。
家族から捨てられて、友だちにも裏切られ、誰も私を愛してなんかくれないんだって。辛くて悲しいことの連続で、こんな人生なら生まれてくるんじゃなかったって。
──なのに。
本当は、お父さんにすごく愛されていて。そして、こんなに私のことを気にしてくれる、もう1人の兄が存在していただなんて。しかも私には今、バカみたいに愛してくれる浦くんがいる。
…いったい、何これ??
一気に人生が逆転したんですけど。
もしかして私、死ぬの??
「ううううっ!」
「おい、何だよコトリ。急に唸るな」
あまりの驚きに縮こまっていた心臓が、やっと元通りに動き出したので私は呟く。
「…ああ、生きてて良かった」
もしかして私は、この言葉を言うために、
今まで生きてきたのかもしれない。
…それから。
残念だけどタイムリミットがやって来た。というか、もともと平日の早朝だったし。出社時間が迫っていたので改めて終業後に会う約束を取り決め、私たちはマンションを出た。
本当になんて不思議な1日なのだろう。
朝イチで兄が1人増えて。
昼には継母を追い出したとの連絡が入った。
それは、榮太郎様と一緒に近日中にオープン予定の新店舗の視察をしていた時のこと。そのまま雑誌の取材を受ける予定だったのだが、相手の編集者にトラブルが発生したとかで。1時間ほど待たされることになったのである。
そんな時に、父から電話が掛かって来て。相変わらず荒い鼻息に紛れた聞き取り難い声で、こう言われたのだ。
「ぷひゅ、待たせたな。ようやく縁が切れたぞ」
「だっ、誰と?」
「清会長も亡くなったことだし、あのデブスを追い出してやったわ!!あははは」
「デブス…」
それだけでもう全てを理解したのだが、ご丁寧に父は解説してくださる。
「ぶひゅひゅ、デブでブスのことだ」
「ああ、はいはい。継母ね?ていうかお祖父さん、亡くなったの?!」
「ぶひゅ、ああ、そうだ。数年前にガンが見つかってな。もう長くないと言われていたんだが。それでもしぶとく頑張りやがって。今晩、通夜だ。来れるか?」
「そ、それは行かなきゃダメでしょ…」
ていうか普通、メインはそっちじゃない??
先に継母を追い出した報告をしてくるって…。
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