昔の恋を、ちょっとだけ思い出してみたりする

ももくり

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まだまだ嵐は続く?

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 嫌われたくなくてずっと心に溜めていた膿が、一気に噴出してしまったようだ。

「…ごめん。そんなに嫌だったのなら、その都度言ってくれれば良かったのに」
「はあん?」

 斜め後方に立っている店長へと座ったままで顔を向ける。デスクライトがその顔を、怪談話でもしているかの如く効果的に照らす。

「ひっ!」
「普通はね、言わなくても分かるのよッ」

 この人は根本的にどこかが欠けてるんだ。
 改めて絶望し、大きな溜め息を吐く。

「あの頃のアヤは笑って送り出してくれてたし。その…一緒に店を盛り立てるつもりで、むしろ女性客や女性スタッフを俺の努力で囲い込んで来いと言われているような気がして、だから…どんな時でも頑張ったんだけど…。いやゴメン。俺だな、やっぱり俺が全部悪かったんだ。あのさ、そういうの全て直しても、ダメか?」
「うん、無理。店長はもう恋愛対象にはならないよ」

 過去を綺麗サッパリ捨て、未来へ進もう!と、この時の私は思っていたのである。




 ………………
「いらっしゃいませ」

 嵐は尚も続いており、夜の部でもその猛威を振った。

「帯刀様、お久しぶりですね」
「ああ、少し間を空けてしまって申し訳無い。仕事の方がバタバタしていたもので」

「茉莉子ちゃんは3日ぶりかしら?いつもご贔屓にして頂いて有難うございます」
「残念ながら私はヒマですのでね。本当は毎日でも通いたいところですが、お義母様に引っ張り回されているので」

 数カ月前までウチの店でバイトしていた茉莉子ちゃんが、旦那さんと一緒に来店し。ドルチェを運んだ際に旦那さんが、こんなことを言い出した。

「ところで店長はいらっしゃるかな?」
「はい、いつもの如く厨房におりますが。呼んでまいりましょうか?」

 非の打ちどころの無い、それはもう完璧な笑顔で帯刀氏は頷いた。

『店長を呼んでくれ』だなんて初めてだ。多分『今日の料理は美味しかったよ』とかいうテレビでよく見るアレをするんだ。

 ぷぷっ、帯刀氏も人の子よのう。などと勝手に決めつけて厨房へと足を急がせる。

「店長!お客様が話したいことが有るそうです」
「えーっ、俺、今すごく忙しいんだけど。適当に理由つけて断ってくれないかな」

「いいんですか?帯刀様ですよ」
「…喜んで行かせていただきます」

 なんだかんだ言って、帯刀氏は上客で。来店のたびに目玉が飛び出そうな高級ワインを必ず注文してくださるのである。

 ビュンと音がしそうなほどの素早さで、店長は厨房を出て行き。その後ろ姿を眺めていると誰かに肩を叩かれた。

「はい?って、茉莉子ちゃん?!」
「食事の途中で席を外してゴメンナサイッ」

 この人は生粋のお嬢様のせいか、微妙に謝るポイントがズレているのだ。

「ウチの夫、店長に、女、紹介」
「なに、なんでカタコト??いやでも、話は通じてるけどっ。どうして急にそんな世話を焼こうと?」

 外見だけで判断して悪かったな、帯刀氏って意外とハートフルな御方なのね。とか良い方に解釈していたら、実情は違った。

「ウチの夫、ちょっと脳の一部がイカレてて、私をモテモテだと思い込んでいるの。で、店長が私を好きにならないようにと予防線を張る意味で女をあてがうんだって」
「ああ、そうでしたか」

 女をあてがうって…。
 さすが天下の帯刀グループ。

「ごめんね、忙しいのに邪魔ばかりして」
「いえ、大丈夫ですよ。それよりもその話、阻止した方がいいかも。だって店長、女癖が相当悪いので…」

 きっと素敵なお嬢様を紹介しようとしていると思ったから、必死で止めようとしたのに。茉莉子ちゃんはサラリと言うのだ。

「ああ、それは大丈夫。榮太郎ってば腹心の者に店長を調査させていて、過去はどうあれ現在はクリーンだって言ってた。それに相手もかなりの黒歴史を持ってる女性で、あ、知ってるかな?中林コトリさんっていうの」



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 ※コトリさんは『かりそめマリッジ(茉莉子編)』に登場していたメンタルつよつよ女子です。プロフィールはこのあと紹介しますので、しばしお待ちを。

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