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彼がとうとうXXしてくれた!
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……
資料室は地下1階に有り、普段はガッチリ施錠されている。そのため利用者はいちいち総務部に申請し、鍵を借りて来なければいけないのだ。しかも地下1階は資料室と用度室があるだけでその半分以上を駐車場としてスペースを割かれており。駐車場へは専用通路が設けられているため、滅多に人が来ないフロアと言っても良いだろう。…だからまさかココであの人に会うとは思ってもみなかったのである。地下1階の廊下を意気揚々と歩いていると、台車を押している彼がいて。いや、正確には押さずに後ろ手で引っ張りながら彼は私の名を呼んだ。
「あれッ、愛宕さん?!朝礼前なのにどうして地下にいるの?」
「大野さん…。あのっ、資料室で作業している人宛てに書類を渡すよう頼まれまして、それで、じゃあッ!」
動揺のあまり唐突に話を終えようとすると、案の定、二の腕をガッシリと掴まれてしまう。
「冷たいなあ。せっかく会えたんだし、もうちょっと話そ?」
「うあぇ、おお、のぅ…さん」
…私、混乱し過ぎ。『OH!NO!』と『大野』のダジャレなのか。そうなのか、私??
いや、ここで時間を費やしている場合じゃない。良いハゲの配慮で少しだけ時間を貰えたが、早く山田君と大事な話を済ませ、オフィスに戻って仕事に取り掛からねば。給料分だけキッチリ働かないと、お天道様に申し訳ないではないか。そんな思いで大野さんを振り切ろうとするが、敵はなかなか手強い。
「やっぱ運命なのかな?こんな地下で偶然会うなんてスゴイ確率だよね」
「いえ、同じ会社で勤務しているんですもん、確率もクソも無いですよ」
「いや、だって地下なんて滅多に来ないよ、俺」
「ふうん、そうなんですか。じゃあ!」
「だから待ってくれって。まだ朝礼まで数分あるし、それまで喋ろうよ」
「いえ、私は急ぎますので。じゃあ!」
大野さんはヒマでしょうが、私は今から山田君と大事な話をするのです。だからなるべく早く彼の元へ向かわないと、仕事の時間に食い込んでしまうではないですか。
「俺さ、A4のコピー用紙を8箱も持って行かなきゃいけないんだよねー」
「それは大変ですね。じゃあ!」
いったい何度『じゃあ!』を言わせるつもり?
いや、私がこの人を振り切ればイイだけか??
そんな自問自答を繰り返していると、キイ、と資料室のドアが内側から開き。中から山田君が顔を覗かせたかと思うと、彼は私たちを確認した途端ドアを閉めてしまう。今すぐそこへ向かいたいのに、私の腕は大野さんに掴まれたままだ。
ここで私はふと気づくのだ。大野さんに気のある素振りをして振り回しているのは自分の方だと。この人も、私に脈があると思っているからこそこんなにしょっちゅう絡んでくるのだ。自分の姿を重ね『冷たくするのは可哀想』とか、もしかしてこのまま好きになれるかも…などとズルズル放置していたけれど山田君の本心を知った今、ケジメをつけるべきではなかろうか。
「私、やっぱり、山田君が好き!!」
この言葉は驚くほど私の口にシックリ馴染んだ。そうだ、あの頃は繰り返しこの言葉を彼に伝えたのだ。それはまるで呪文のように、何度でも何度でも。
「ええっ、あの、愛宕さん??俺の名前は『大野』なんだけど…」
「だから、私が好きなのは山田君なんです!!」
両脚を大股に広げ、私は腹の底から声を出した。
「山田君!!聞こえてるなら出てきてッ!!今から愛宕乃里がアナタに愛の告白をしますッ」
カチャッ。
即座にドアが開き、再び山田君がこちらをそおっと覗いている。お前は天照大神かッ?!そこは天岩戸かッ?!そう突っ込みたい心を抑え、私は胸を張ったまま彼を手招きした。おずおずと彼は資料室を出て、こちらに歩み寄って来る。その姿を凝視しながら私は大きく息を吸い、ゆっくりと口を開く。
「や、山田君ッ!私ね…」
「待て」
お、おやおや??
勢いをつけて一気に想いを伝えたいのに、ご飯を前にした犬みたいに『待て』ですと。ズッコケそうになるその右足を踏ん張ってジッと山田君の目を見つめると、彼は山田史上最強の笑顔で私に言うのだ。
「男の俺から言わせてくれ」
ゴクリ、と喉を鳴らしたのは大野さんで。私はツーンと痛む眉間と格闘しながら頷いた。泣く、きっとこのままじゃ私、絶対に泣く。
「俺はこの前、乃里に振られたけどそれでもまた懲りずに言うぞ。だってお前も俺に何度も冷たくされたのに、たくさんその言葉をくれたから。
…好き、もうすっげえ好き。
めちゃくちゃ好き。
乃里っ、お前のことが大好きだ!!
だから、俺の彼女になってくださいッ!!」
資料室は地下1階に有り、普段はガッチリ施錠されている。そのため利用者はいちいち総務部に申請し、鍵を借りて来なければいけないのだ。しかも地下1階は資料室と用度室があるだけでその半分以上を駐車場としてスペースを割かれており。駐車場へは専用通路が設けられているため、滅多に人が来ないフロアと言っても良いだろう。…だからまさかココであの人に会うとは思ってもみなかったのである。地下1階の廊下を意気揚々と歩いていると、台車を押している彼がいて。いや、正確には押さずに後ろ手で引っ張りながら彼は私の名を呼んだ。
「あれッ、愛宕さん?!朝礼前なのにどうして地下にいるの?」
「大野さん…。あのっ、資料室で作業している人宛てに書類を渡すよう頼まれまして、それで、じゃあッ!」
動揺のあまり唐突に話を終えようとすると、案の定、二の腕をガッシリと掴まれてしまう。
「冷たいなあ。せっかく会えたんだし、もうちょっと話そ?」
「うあぇ、おお、のぅ…さん」
…私、混乱し過ぎ。『OH!NO!』と『大野』のダジャレなのか。そうなのか、私??
いや、ここで時間を費やしている場合じゃない。良いハゲの配慮で少しだけ時間を貰えたが、早く山田君と大事な話を済ませ、オフィスに戻って仕事に取り掛からねば。給料分だけキッチリ働かないと、お天道様に申し訳ないではないか。そんな思いで大野さんを振り切ろうとするが、敵はなかなか手強い。
「やっぱ運命なのかな?こんな地下で偶然会うなんてスゴイ確率だよね」
「いえ、同じ会社で勤務しているんですもん、確率もクソも無いですよ」
「いや、だって地下なんて滅多に来ないよ、俺」
「ふうん、そうなんですか。じゃあ!」
「だから待ってくれって。まだ朝礼まで数分あるし、それまで喋ろうよ」
「いえ、私は急ぎますので。じゃあ!」
大野さんはヒマでしょうが、私は今から山田君と大事な話をするのです。だからなるべく早く彼の元へ向かわないと、仕事の時間に食い込んでしまうではないですか。
「俺さ、A4のコピー用紙を8箱も持って行かなきゃいけないんだよねー」
「それは大変ですね。じゃあ!」
いったい何度『じゃあ!』を言わせるつもり?
いや、私がこの人を振り切ればイイだけか??
そんな自問自答を繰り返していると、キイ、と資料室のドアが内側から開き。中から山田君が顔を覗かせたかと思うと、彼は私たちを確認した途端ドアを閉めてしまう。今すぐそこへ向かいたいのに、私の腕は大野さんに掴まれたままだ。
ここで私はふと気づくのだ。大野さんに気のある素振りをして振り回しているのは自分の方だと。この人も、私に脈があると思っているからこそこんなにしょっちゅう絡んでくるのだ。自分の姿を重ね『冷たくするのは可哀想』とか、もしかしてこのまま好きになれるかも…などとズルズル放置していたけれど山田君の本心を知った今、ケジメをつけるべきではなかろうか。
「私、やっぱり、山田君が好き!!」
この言葉は驚くほど私の口にシックリ馴染んだ。そうだ、あの頃は繰り返しこの言葉を彼に伝えたのだ。それはまるで呪文のように、何度でも何度でも。
「ええっ、あの、愛宕さん??俺の名前は『大野』なんだけど…」
「だから、私が好きなのは山田君なんです!!」
両脚を大股に広げ、私は腹の底から声を出した。
「山田君!!聞こえてるなら出てきてッ!!今から愛宕乃里がアナタに愛の告白をしますッ」
カチャッ。
即座にドアが開き、再び山田君がこちらをそおっと覗いている。お前は天照大神かッ?!そこは天岩戸かッ?!そう突っ込みたい心を抑え、私は胸を張ったまま彼を手招きした。おずおずと彼は資料室を出て、こちらに歩み寄って来る。その姿を凝視しながら私は大きく息を吸い、ゆっくりと口を開く。
「や、山田君ッ!私ね…」
「待て」
お、おやおや??
勢いをつけて一気に想いを伝えたいのに、ご飯を前にした犬みたいに『待て』ですと。ズッコケそうになるその右足を踏ん張ってジッと山田君の目を見つめると、彼は山田史上最強の笑顔で私に言うのだ。
「男の俺から言わせてくれ」
ゴクリ、と喉を鳴らしたのは大野さんで。私はツーンと痛む眉間と格闘しながら頷いた。泣く、きっとこのままじゃ私、絶対に泣く。
「俺はこの前、乃里に振られたけどそれでもまた懲りずに言うぞ。だってお前も俺に何度も冷たくされたのに、たくさんその言葉をくれたから。
…好き、もうすっげえ好き。
めちゃくちゃ好き。
乃里っ、お前のことが大好きだ!!
だから、俺の彼女になってくださいッ!!」
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