スミレの恋

ももくり

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不測の事態

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 ………………
 どうやら“大手飲食企業”の担当者は、
 冒険してみたいお年頃だったらしい。

 そもそもファミリー層が好んで利用するタイプのイタリアンレストランなのに、お披露目パーティーはまるでクラブ状態で。DJなんぞが進行を務め、いわゆるパリピとやらが大量に生息していたのである。
 
「なんか私たち、場違いだよね」
「俺もそう思ってる」
 
 言葉とは裏腹に、私たちは目立っていて。
 
 ライトグレーのジャケットに白パンツという下手をすればスノッブに見える服装も、藤井にかかれば、あら!不思議。清潔感が漂う、オシャレ上級者に見えるのだ。
 
 そして私も“露出狂”の呼び名に相応しく、オフショルダーにミニ丈のニットワンピで健闘。この2人がどんなに地味に振る舞っても、きっとモブキャラには見えないだろう。
 
「あの~、ちょっとお時間よろしいですか?」
「えっ、ああ、はい」
 
 藤井に声を掛けてきたのは明らかに業界の人で。どうしてそれが分かるのかと言うと、テレビカメラをこちらに向けているからだ。この人たちは何故パリピではなく、私たちを選んだのか。反感を買うことを承知の上で答えよう。
 
 見た目がべらぼうに美しいからだ。
 
 我らがいるだけでパーティーの格が上がる。
 ああ、羨望に満ちた周囲の視線が痛い。
 
 だが、断る!
 
 だって貴臣に見られたら困るもん。いや、奴とは別れるつもりだけれども。テレビで心変わりを知らせるだなんて、そんな終わらせ方は本意では無い。

 断ろうと私が口を開けたその瞬間、恰幅の良いオジサンがこちらに近寄って来る。よく見ると、今回の冒険を目論んだクライアント側の担当者だった。
 
「藤井さん、今回はいろいろお世話になったね。パーリィ、たのしんでるかあああいッ?!」
「イエエエィ!」
 
 …ふ、藤井??
 どうしちゃったんだい??
 
 さり気なく彼は目で訴えてくる。
 
 時に男は、自分を犠牲にしてでも成し遂げなければならないことが有るのだと。そう、これが俺の仕事なのさと。
 
「さあ、藤井さん!俺が推薦したんだよ。このカップルにインタビューするようにって。もちろん受けてくれるよね?」
 
 そんなキラキラした瞳で訴えられては、断れないではないか。
 
「もちろんOKですよッ!なあスミレッ」
「イ、イエエイッ」
 
 流れ、流されて。
 こうして人はオトナになっていくんだね。
 
 顔で笑って、心で泣いて。
 
 私は淡々とインタビューに答え続けた。訊けば明晩11時から放送するのだと。そんな時間に貴臣がテレビを観るはず無いと、ホッとしたのも束の間。
 
「…スミレ?何してんだよ」

 放送を待たなくても今、この場所に
 貴臣本人がいるなんて。
 
 驚き過ぎて、アゴが外れそうだった。
 
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