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世界で一番愛されている私
しおりを挟むだって、知らなかったから。だから私、貴臣に酷いことをたくさん言ったかも。
>そんな安っぽいペラペラのスーツ、
>着てて恥ずかしくないの?
>もっと身なりにはお金を遣いなさいよ。
>えっ、またオバさんの手料理を食べるの?
>それじゃ私、ただの迷惑女だわ。
>たまには外食しましょうよ。
>貴臣は私のこと、全然考えてくれない。
>貴臣は私のことが嫌いなんでしょ?!
そんなこと、無かったんだ。
ペラペラスーツも、外食に行けなかったのも、全部全部、私のため。あの暴君の言いなりになって、必死でお金を貯めていたからだったんだ。…ここで貴臣ソックリな目をしたオバさんが、シミジミと言う。
「スミレちゃん、世界で一番愛されているわね」
うう、このタイミングでそれは卑怯だ。
こんなの泣くに決まっているではないか。
>世界で一番愛されている
誰から?
もちろん、貴臣から。
今まで、『愛してる』も『好きだ』も言われたことが無くて。一緒にいても変な雑学を延々と喋り続けるし、私から連絡しないと自然消滅しそうなほどで、しかもあの人、目が合うとスグ逸らすのに。
それでも私のことが好きだったんだって。
しかも世界で一番愛しているんだって。
…ああ、溢れる。
どんどん心が満ちていく。
「うっ、ぐふっ、うわああああん!!」
「スッ、スミレちゃん??泣いちゃダメよ」
「おほほ、相変わらず泣き顔が不細工ね~」
ううう、鬼母めッ。娘が泣いているというのに何てことを。
「ひっ、ぐうう、オバさん、貴臣さんを産んでくれて有難うございましたっ」
「あら、どういたしまして」
「ちょっとスミレ、貴女を産んだ私に御礼は?」
いちいちウルサイッ!!…という意味を込めてギンッと母を睨む。それから私は、オバさんが持って来てくれたコートを羽織ってからペコリとお辞儀する。
「オバさん、お母さん、正直に話してくれて有難うございました。私はちょっくら外出してきます」
「って、もちろん貴臣に会いに行くのよね?じゃあ私はもう少しこちらでお喋りして帰るわ」
「どうぞどうぞ。大場さんなら大歓迎よ~」
全然タイプの違う2人なのに、なぜだかオバさんと母は気が合うらしく。よく似た笑顔で私にヒラヒラと手を振る。
さあ、貴臣の元へ。
早く、早く。
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