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甘ずっぱい生活
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※R18です。
※背後に誰もいないか確認くださいませ。
「手を出してこない?」
「はい、そうです」
そう訊き返したのは先輩の佐和さんで、
答えたのは私こと武内杏奈である。
>オフィスエッチが目的のはずなのに、
>彼が襲ってくれません。
結婚式を来週に控えた多忙な御方にそんな悩みを伝えたら、すぐ飲みに誘われて。コンビニ横にある人気の焼鳥屋さんで、こうして赤裸々に報告させられている次第だ。
それよりも枝豆って先に出てくるんじゃないの?サラダも普通は先だよね?これって私の偏見?たぶん厨房の中で『焼き担当』と『その他担当』で役割分担しているんだろうけど、最初に焼鳥が出てきて、食べ終わった頃に枝豆とサラダって。こう見えて私、結構健康オタクだからッ。血糖値上昇を抑えるために食べる順番は野菜が最初って決めてるのッ。
「え、だからネギマのネギしか食べなかったの?」
「体が資本ですから。だからパソトレもしてます」
「パソトレ?ナニソレ」
「パーソナルトレーニングですよ」
「ふーん」
「って佐和さん、興味無いでしょ?!」
「さあ、じゃあ本題に入ろっか」
「…ぐっ」
きっとこの人は何でもお見通しなのだ。思い詰めて、自分から切り出しておきながら、いざとなると逃げるみたいにして雑談しかしないヘタレな私のことを。
「石本くんって、ああ見えて結構繊細だよ」
「はい、知ってます。物凄く気を遣う人だってことも。頑張ってサービスで話しまくって、眠る直前に布団の中で1人反省会とかしてるんだろうなって。なんだかそういうところも愛おしいんですよねえ」
自分で言っておきながら、まるで愛の告白みたいだと気付いてヘドモドする。
「女はね、恋をすると漁師になるのよ」
「は?」
「相手を魚だと思いなさい」
「はあ?」
「大物であれば大物であるほど、その技量が問われるの。釣り竿1本で挑むも良し、丈夫な網で掬うも良し、疑似餌で誘ったり、集魚灯なんてモノを使うテも有るわ」
「はいい?」
言いたいことが分かるような、分かんないような。
「でもこれだけは覚えておいて。部屋の中に閉じこもっていても魚は手に入らないのよ、杏奈ちゃん」
「そうですか」
クワッと口を開けて佐和さんは私を叱り出す。
「『そうですか』じゃないでしょうッ!進めと言ってるの!!だって欲しいんでしょ?その魚がキレイで美味しそうで、自分の目には一番素敵に見えるのなら荒波を乗り越えて漁に出なさい!!」
「えと、キレイだとは思うけど美味しそうとは…」
「はあん?!そんなワケないでしょおおおがッ!男を見て美味しそうかどうか必ず女は考えるものなのッ!美味しそうじゃない男なんて付き合おうと思わないし、私の沢野なんて死ぬほど美味しそうなんですけどッ!」
「う…、はい、…ごめんなさい」
この時の佐和さんの顔があまりにも怖かったので、何かアクションを起こさないと叱られそうで。『多忙な時期にも拘わらず時間を割いて、魂を込めたアドバイスをしてやったのに何もしなかったのかワレ?!』と思われないように、取り敢えず動くことにしたのである。
……
「ちょ、ちょ、待って杏奈ちゃん?!」
「待てない、だって(佐和さんが怖いんだもん)」
後半部分はもちろん声に出していないが、私の表情で切羽詰まっていることは伝わったと思う。
「そんな切ない顔しないで…。杏奈ちゃん、もしかして俺のことを?」
「うん、大好きだよ。それに(佐和さんは凄く怖いよ)」
しつこいが後半部分は言葉にしていないし、言ったとしてもきっと佐和さんLOVEな石本くんは同意してくれないと思う。
イェイ!名付けて“ラブホ大作戦”!!
酔ったフリして歩けないと騒ぎ、あら、こんなところに丁度いい休憩所が?じゃあちょっとだけ休もうか…と言わせたのだッ!もちろんタクシーが捕まり難い場所でしかもラブホが近くにある店をリサーチして飲んだし、数日後に佐和さんが結婚するというこの時期を選べばきっと傷心の石本くんは誘いに乗るだろうと全て計算済みだ。
佐和さん、これが私の追い込み漁ですッ。
数分前まで『歩けない』と言っていた女がいきなり目の前で全裸になり、驚きを隠せない様子の石本くん。そんな彼をベッドに押し倒し、震えながらキスをすると意外にも甘い吐息が漏れてきた。
おや、おやおや??
くるりと引っ繰り返され、形勢逆転。今度は私が押し倒されており、首筋から胸へとキスが下りていく。そしてピチャピチャとヘソを舐めたかと思うと、今度は両膝を立てさせられ、股の辺りで石本くんのふわふわの髪が揺れている。
「ふあああっ、ん、舐められてる…」
「うん、舐めてるねー」
これで佐和さんに成果を報告出来るよ…って、こんなこと話せるワケないじゃん!
「大好きな石本くんが、私のアソコを舐めてる…」
「うん、俺も杏奈ちゃんのこと大好きだからねー」
「あは、私のこと大好き?」
「うん。失いたくないくらい大好き」
「佐和さんは?」
「え?なんでココで佐和さんが出てくんの?」
入れられた指が2本に増え、ピリリとした快感に思わず脚を閉じようとするのを石本くんの左手で遮られ、尚も尋問は続く。
「んあ、や、そこすごく気持ちいい…よ、ん、もっとして」
「して欲しかったら、答えて。なんで佐和さんが出てくるのかな?」
「この前…んあああっ、石本くん、寝言で佐和さんの名前をッ、ん、んん…」
「仕事かなんかの夢でも見てたんだろうな。寝言で名前呼んだら、好きってことになっちゃうの?違うよね?」
ここでお色気モードのスイッチをブチリと切って、上半身を起こしながら石本くんを問い詰める。
「へ?じゃあ佐和さんのことは好きじゃないの?」
「い、いいねえ、その切り替えの早さ。実に俺好みだな。…いや、佐和さんのことは好きか嫌いかで言うと好きだけど。でも、セックスは出来ないなあ」
「それはつまり」
「それはつまり、恋愛対象じゃないってこと」
「じゃあ、どうして私に手を出してくれなかったの?もしかして私も恋愛対象じゃないってこと?」
「そ…れは…」
眉をハの字にして悲し気に彼は俯く。なんだ、いったいどうしたと言うのか。盛り上っていたはずのエロい空気が瞬く間に冷めてしまい、石本くんは視線を泳がせた。
「ねえ、どうして?」
「さっきも言ったと思うけど、失いたくなかったから。俺、メチャクチャよく喋るだろう?難あり物件だってことは自覚してて、こんな俺とストレス無く付き合ってくれる杏奈ちゃんは貴重だし、もし恋愛関係に移行して別れたりなんかしたら友達としても一緒にいて貰えなくなるから。それならいっそ、友達のままでいようかなって思ってた。でも、やっぱりこうして目の前で好きなコに誘われたら、俺も男だし、理性なんかすっ飛ぶと言うか…」
ああ、もう。真剣な場面だと言うのに。可愛い石本くんの凶悪な高ぶりが視界に入って、私の目は釘付けとなる。パンツを穿いているのにそんなに存在を主張出来るってことは、もしかしてかなりの大きさではあるまいか?
さわさわ。
思わず興味津々でパンツ越しにそれを触ると、『んっ』と可愛く喘がれたので直接ご対面してみようと思い、ゴム部分に手を掛けた。
「え?あの、杏奈ちゃん?この流れでパンツ脱がすって、その…」
「ゴチャゴチャ煩いよ!『別れるかも』なんて考えるヒマが有るんなら、『どうすれば別れずに済むか』を考えてッ!だってっ、好きって言ったよ、私。大好きだって。それに対して石本くんも私のことを好きだと答えてくれた。…ね?それでいいじゃない。もっと好きにさせてよ。そして、もっと好きになって」
ズルンとパンツを脱がすと、想像通りの石本ジュニアがそこにいて。まるで『こんにちは!』と言わんばかりに元気よく私に挨拶してくれる。
「あー、くそ、杏奈ちゃんの言うとおりだ。よし、もっと好きにさせてやる。だから身も心も繋がるぞ!」
「おう!望むところだわッ」
言葉は乱暴なのに、キスは繊細で優しい。
探るかのように、
それでいてずっと前から知っていたかのように。
求められているかのように、
それでいて全てを与えてくれるかのように。
…そんな不思議な気持ちにさせてくれる人。
「ん?今、目にチカチカって星が浮かんだ!」
「ははっ、軽くイッちゃったのかもな」
そう言いながらグリグリと石本くんが腰を回す。今のところ何もかもが完璧で怖いくらいだ。
「ふふっ」
「なに笑ってんの?」
「ずっと石本くんって王子様みたいだと思ってて」
「へ?ああ、それで現実とのギャップに気付いたって感じ?」
「ううん。やっぱり王子様だなって。だって『キミを失いたくない』とか本気で言うんだよ?私、まるでお姫様じゃない?そうやって世界一幸せな気分にしてくれるんだもん、だからアナタはやっぱり王子様だよ。うふふっ、本当に幸せだなあ。石本くん、だあい好き」
「…杏奈、もう、お前、そういうの卑怯…」
「え?あっ?やん、何で急に大きくなるの?!
ちょっと、やだ、激しいよッ」
「ムリムリムリムリ、もう止まらないって」
恐ろしいほどの高速ピストンに奥歯がガチガチ鳴り、味わったことのない快感が押し寄せてくる。
「ん~ッ、う、ああああっ」
「イク、イクイクイク…あッ!」
同時に果てて、甘い空気のまま脱力した。荒い呼吸が落ち着くとどちらともなくキスを浴びせ合う。
「すごく気持ち良かったね!」
「ああ、身も心も繋がってたからな!」
……
その翌日。
「佐和さんが、『石本くんが急に無口になって気持ち悪い』とか言ってたよ」
そう密告する私に彼はビールを半分ほど飲んでから、照れ臭そうに答えた。
「だって黙ってても喋ってても、俺のこと好きだって杏奈が言うんだもん。だからなんかどっちでもいいかなって」
「うん、本当にどっちでも好きだよ」
ふふっと彼が笑うと、私もつられて笑う。
ああ、甘酸っぱい。
なんでこんなに愛おしいんだろう?
そんなことを考えながら私は、
今日もめでたしめでたしの先を生きるのだ。
…そう、この人と共に。
--END--
※たぶん、これにてシリーズも完結します。
※お付き合いいただき、誠に有難うございました。
※背後に誰もいないか確認くださいませ。
「手を出してこない?」
「はい、そうです」
そう訊き返したのは先輩の佐和さんで、
答えたのは私こと武内杏奈である。
>オフィスエッチが目的のはずなのに、
>彼が襲ってくれません。
結婚式を来週に控えた多忙な御方にそんな悩みを伝えたら、すぐ飲みに誘われて。コンビニ横にある人気の焼鳥屋さんで、こうして赤裸々に報告させられている次第だ。
それよりも枝豆って先に出てくるんじゃないの?サラダも普通は先だよね?これって私の偏見?たぶん厨房の中で『焼き担当』と『その他担当』で役割分担しているんだろうけど、最初に焼鳥が出てきて、食べ終わった頃に枝豆とサラダって。こう見えて私、結構健康オタクだからッ。血糖値上昇を抑えるために食べる順番は野菜が最初って決めてるのッ。
「え、だからネギマのネギしか食べなかったの?」
「体が資本ですから。だからパソトレもしてます」
「パソトレ?ナニソレ」
「パーソナルトレーニングですよ」
「ふーん」
「って佐和さん、興味無いでしょ?!」
「さあ、じゃあ本題に入ろっか」
「…ぐっ」
きっとこの人は何でもお見通しなのだ。思い詰めて、自分から切り出しておきながら、いざとなると逃げるみたいにして雑談しかしないヘタレな私のことを。
「石本くんって、ああ見えて結構繊細だよ」
「はい、知ってます。物凄く気を遣う人だってことも。頑張ってサービスで話しまくって、眠る直前に布団の中で1人反省会とかしてるんだろうなって。なんだかそういうところも愛おしいんですよねえ」
自分で言っておきながら、まるで愛の告白みたいだと気付いてヘドモドする。
「女はね、恋をすると漁師になるのよ」
「は?」
「相手を魚だと思いなさい」
「はあ?」
「大物であれば大物であるほど、その技量が問われるの。釣り竿1本で挑むも良し、丈夫な網で掬うも良し、疑似餌で誘ったり、集魚灯なんてモノを使うテも有るわ」
「はいい?」
言いたいことが分かるような、分かんないような。
「でもこれだけは覚えておいて。部屋の中に閉じこもっていても魚は手に入らないのよ、杏奈ちゃん」
「そうですか」
クワッと口を開けて佐和さんは私を叱り出す。
「『そうですか』じゃないでしょうッ!進めと言ってるの!!だって欲しいんでしょ?その魚がキレイで美味しそうで、自分の目には一番素敵に見えるのなら荒波を乗り越えて漁に出なさい!!」
「えと、キレイだとは思うけど美味しそうとは…」
「はあん?!そんなワケないでしょおおおがッ!男を見て美味しそうかどうか必ず女は考えるものなのッ!美味しそうじゃない男なんて付き合おうと思わないし、私の沢野なんて死ぬほど美味しそうなんですけどッ!」
「う…、はい、…ごめんなさい」
この時の佐和さんの顔があまりにも怖かったので、何かアクションを起こさないと叱られそうで。『多忙な時期にも拘わらず時間を割いて、魂を込めたアドバイスをしてやったのに何もしなかったのかワレ?!』と思われないように、取り敢えず動くことにしたのである。
……
「ちょ、ちょ、待って杏奈ちゃん?!」
「待てない、だって(佐和さんが怖いんだもん)」
後半部分はもちろん声に出していないが、私の表情で切羽詰まっていることは伝わったと思う。
「そんな切ない顔しないで…。杏奈ちゃん、もしかして俺のことを?」
「うん、大好きだよ。それに(佐和さんは凄く怖いよ)」
しつこいが後半部分は言葉にしていないし、言ったとしてもきっと佐和さんLOVEな石本くんは同意してくれないと思う。
イェイ!名付けて“ラブホ大作戦”!!
酔ったフリして歩けないと騒ぎ、あら、こんなところに丁度いい休憩所が?じゃあちょっとだけ休もうか…と言わせたのだッ!もちろんタクシーが捕まり難い場所でしかもラブホが近くにある店をリサーチして飲んだし、数日後に佐和さんが結婚するというこの時期を選べばきっと傷心の石本くんは誘いに乗るだろうと全て計算済みだ。
佐和さん、これが私の追い込み漁ですッ。
数分前まで『歩けない』と言っていた女がいきなり目の前で全裸になり、驚きを隠せない様子の石本くん。そんな彼をベッドに押し倒し、震えながらキスをすると意外にも甘い吐息が漏れてきた。
おや、おやおや??
くるりと引っ繰り返され、形勢逆転。今度は私が押し倒されており、首筋から胸へとキスが下りていく。そしてピチャピチャとヘソを舐めたかと思うと、今度は両膝を立てさせられ、股の辺りで石本くんのふわふわの髪が揺れている。
「ふあああっ、ん、舐められてる…」
「うん、舐めてるねー」
これで佐和さんに成果を報告出来るよ…って、こんなこと話せるワケないじゃん!
「大好きな石本くんが、私のアソコを舐めてる…」
「うん、俺も杏奈ちゃんのこと大好きだからねー」
「あは、私のこと大好き?」
「うん。失いたくないくらい大好き」
「佐和さんは?」
「え?なんでココで佐和さんが出てくんの?」
入れられた指が2本に増え、ピリリとした快感に思わず脚を閉じようとするのを石本くんの左手で遮られ、尚も尋問は続く。
「んあ、や、そこすごく気持ちいい…よ、ん、もっとして」
「して欲しかったら、答えて。なんで佐和さんが出てくるのかな?」
「この前…んあああっ、石本くん、寝言で佐和さんの名前をッ、ん、んん…」
「仕事かなんかの夢でも見てたんだろうな。寝言で名前呼んだら、好きってことになっちゃうの?違うよね?」
ここでお色気モードのスイッチをブチリと切って、上半身を起こしながら石本くんを問い詰める。
「へ?じゃあ佐和さんのことは好きじゃないの?」
「い、いいねえ、その切り替えの早さ。実に俺好みだな。…いや、佐和さんのことは好きか嫌いかで言うと好きだけど。でも、セックスは出来ないなあ」
「それはつまり」
「それはつまり、恋愛対象じゃないってこと」
「じゃあ、どうして私に手を出してくれなかったの?もしかして私も恋愛対象じゃないってこと?」
「そ…れは…」
眉をハの字にして悲し気に彼は俯く。なんだ、いったいどうしたと言うのか。盛り上っていたはずのエロい空気が瞬く間に冷めてしまい、石本くんは視線を泳がせた。
「ねえ、どうして?」
「さっきも言ったと思うけど、失いたくなかったから。俺、メチャクチャよく喋るだろう?難あり物件だってことは自覚してて、こんな俺とストレス無く付き合ってくれる杏奈ちゃんは貴重だし、もし恋愛関係に移行して別れたりなんかしたら友達としても一緒にいて貰えなくなるから。それならいっそ、友達のままでいようかなって思ってた。でも、やっぱりこうして目の前で好きなコに誘われたら、俺も男だし、理性なんかすっ飛ぶと言うか…」
ああ、もう。真剣な場面だと言うのに。可愛い石本くんの凶悪な高ぶりが視界に入って、私の目は釘付けとなる。パンツを穿いているのにそんなに存在を主張出来るってことは、もしかしてかなりの大きさではあるまいか?
さわさわ。
思わず興味津々でパンツ越しにそれを触ると、『んっ』と可愛く喘がれたので直接ご対面してみようと思い、ゴム部分に手を掛けた。
「え?あの、杏奈ちゃん?この流れでパンツ脱がすって、その…」
「ゴチャゴチャ煩いよ!『別れるかも』なんて考えるヒマが有るんなら、『どうすれば別れずに済むか』を考えてッ!だってっ、好きって言ったよ、私。大好きだって。それに対して石本くんも私のことを好きだと答えてくれた。…ね?それでいいじゃない。もっと好きにさせてよ。そして、もっと好きになって」
ズルンとパンツを脱がすと、想像通りの石本ジュニアがそこにいて。まるで『こんにちは!』と言わんばかりに元気よく私に挨拶してくれる。
「あー、くそ、杏奈ちゃんの言うとおりだ。よし、もっと好きにさせてやる。だから身も心も繋がるぞ!」
「おう!望むところだわッ」
言葉は乱暴なのに、キスは繊細で優しい。
探るかのように、
それでいてずっと前から知っていたかのように。
求められているかのように、
それでいて全てを与えてくれるかのように。
…そんな不思議な気持ちにさせてくれる人。
「ん?今、目にチカチカって星が浮かんだ!」
「ははっ、軽くイッちゃったのかもな」
そう言いながらグリグリと石本くんが腰を回す。今のところ何もかもが完璧で怖いくらいだ。
「ふふっ」
「なに笑ってんの?」
「ずっと石本くんって王子様みたいだと思ってて」
「へ?ああ、それで現実とのギャップに気付いたって感じ?」
「ううん。やっぱり王子様だなって。だって『キミを失いたくない』とか本気で言うんだよ?私、まるでお姫様じゃない?そうやって世界一幸せな気分にしてくれるんだもん、だからアナタはやっぱり王子様だよ。うふふっ、本当に幸せだなあ。石本くん、だあい好き」
「…杏奈、もう、お前、そういうの卑怯…」
「え?あっ?やん、何で急に大きくなるの?!
ちょっと、やだ、激しいよッ」
「ムリムリムリムリ、もう止まらないって」
恐ろしいほどの高速ピストンに奥歯がガチガチ鳴り、味わったことのない快感が押し寄せてくる。
「ん~ッ、う、ああああっ」
「イク、イクイクイク…あッ!」
同時に果てて、甘い空気のまま脱力した。荒い呼吸が落ち着くとどちらともなくキスを浴びせ合う。
「すごく気持ち良かったね!」
「ああ、身も心も繋がってたからな!」
……
その翌日。
「佐和さんが、『石本くんが急に無口になって気持ち悪い』とか言ってたよ」
そう密告する私に彼はビールを半分ほど飲んでから、照れ臭そうに答えた。
「だって黙ってても喋ってても、俺のこと好きだって杏奈が言うんだもん。だからなんかどっちでもいいかなって」
「うん、本当にどっちでも好きだよ」
ふふっと彼が笑うと、私もつられて笑う。
ああ、甘酸っぱい。
なんでこんなに愛おしいんだろう?
そんなことを考えながら私は、
今日もめでたしめでたしの先を生きるのだ。
…そう、この人と共に。
--END--
※たぶん、これにてシリーズも完結します。
※お付き合いいただき、誠に有難うございました。
応援ありがとうございます!
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❤͟͟͞͞ ❤͟͟͞͞ =( '-' ❤ )ラブパンチ(♥´꒳`*)人(*´꒳`♥)
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|≡(_つつ≡o o_)≡|
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末長くお幸せに!!
*'``・*。
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+ (´∀` ) *。+゜
`*。 ヽ、 つ *゜*
`・+。*・'⊃+゜
☆ ∪~。*゜
`・+。*・
最後までお付き合いくださり、誠に有難うございました。
そして、まるで宝塚のフィナーレの如きラブパンチ感想もとっても嬉しいです。
恥ずかしながら、自作のキャラを勝手に妄想することが多く、杏奈ちゃん役は与田祐希さん(『量産型リコ』というドラマが大好き!)が良いなーとか畏れ多くも考えていたりしますの。
石本くん役は…うーん、なんか浮かばない。え、もうそんなの真剣に考えるなと?は、はい。これにて失礼致しますう。