夏の終わりに君が消えた

ぼの

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第11話 2人のクリスマスイブ

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今まで一人で迎えてきた冬休み。

そしてクリスマスイブは僕にとって誕生日でもある。

夏休みとは違って少し短い期間でも、想像の倍出される宿題の山。

一人で机に向かいながら、友達のLINEやインスタに移るクリスマスならではの光景にため息が漏れる。


いつもの待ち合わせ場所に着く。

ここに着く少し前。

駅前でハグをしているカップルを見た。

二人が流していた涙が変に心に残ってしまった。


それでも今日の僕は、
目的地に早くついた。

前に二人でしたいと話していたこと、カラオケ。

フリータイムで予約して二人で過ごした時間。

何も変なことは考えていない。

目に映る結衣さんの姿に見惚れているだけ。

一緒にデュエットを歌ったり、アニメソングや失恋ソングを歌って場を明るく和ませたり。

難しい曲でも高得点をたたき出す結衣さんの姿に見とれていた。

準備して練習した曲も全て伝えることが出来た。

六時間ほどの時間は瞬く間に過ぎていき、外を出た時は僕らの上には、建物に少し遮られた大きな月が顔を出していた。

とても大切だった。とても嬉しかった。








でも僕らは、何も前に進んでいないことをふと思ってしまった。











今以上のことを求めるわけじゃない。
今の幸せに飽きたことでもない。





でもなんだろう。
一言で言うとそれは「いつも通り」
















結衣さんが今に満足してるのか分からない。

今以上を求めているかも分からない。


















僕は気づかない。

いつも感じていたこの幸せを、
「当たり前」と捉えてしまうことに。








二人で繋いだLINEに目を通しながら、いつの間にか冬休みと言う時間は過ぎ去っていて、久しぶりに着た制服を見て少し違和感を持つ。







久しぶりに入る教室。



そしてその視線。




必ず君の姿がある。












たとえどんなことが起きても、

ずっと二人で居たいと思っている。




僕らの前に、
どんな壁が立ち塞がったとしても。
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