冷たい指先に温もりを。

LYO

文字の大きさ
上 下
1 / 4
出逢い

1

しおりを挟む
冬の寒い日。
駅のホームにあるベンチに置かれた、忘れ物と思わしきスマートフォン。
面倒な事には関わりたく無い、駅員が見つけてくれるだろう。
そんな風に思いながらスマートフォンを眺めていたら着信。

『会社携帯』

分かりやすい表示だね。
面倒だとは思いながらも、スマートフォンを手に取り電話に出てあげた。

「もしもし、」
『あ、もしもし!あの、この携帯の持ち主なんですけど!』
「はい、」
『携帯、何処にありました?!』
「あの…大手町駅のホームのベンチに」
『あ、あー…そうですか…』
「あの、携帯、どうしたら…」
『ご迷惑でなければ、取りに行かせて頂きます!』
「あの…私、これから仕事なので、小岩に行かなければならないんですが、」
『…職場に取りに行っては迷惑、ですか?』
「いえ、構いませんよ。でしたら、住所をお教えしますので、そこに取りに来てください」
『分かりました!では後ほど!』

失礼します!と元気に切られた通話。
落とされたスマートフォンを鞄に入れ、電車に乗り、職場へ向かう。

「おはようございまーす」
「あ、ミッキーおはよー!」
「ミッキーじゃなくて、美雪みゆきだってば」
「いいじゃん、ミッキーで!」
「よくないよ咲希さき、夢の国に訴えられるわ」
「私達だって、夢の国で働いてるようなもんでしょーよ?」

職場は、キャバクラ。
咲希は可愛くて元気な売れっ子ちゃん。
私は咲希と同い年だけど、落ち着いててつまんないらしい。

とりあえず、ドレスに着替えて、ヘアメイクを軽くして貰って、開店の時間を待った。
しおりを挟む

処理中です...