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短編 同じはずなのに違う存在に戸惑う
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決闘が終わりピュアブリングが勝者となる。その後仲間達は一目散に彼の傍に駆け寄る。
『ピュアブリング!あれはいったい何なの。あれは貴方じゃない。あんな残虐な行為を楽しむなんて心がないの!そもそももっと楽で簡単に戦いを終わらせてしまうことだって出来たはずでしょう!』
皆が皆あまりの変化に驚いていた。困惑、仰天、恐怖、色々な感情が混ぜられておりとても理解が追い付いてない。
「なによ、わたしに口答えする気?」
『えっ』
まず驚いたのはわたしという一人呼称の変化だった。別にそれだけなら対して問題ないように感じるがいつも穏やかで大人しい彼とはまるで中身が違うように感じてしまう。
「ふんっ。文句を言いたかったらあいてにいうことね。どうやっても勝てないのはわかりきっていたはずなのに降伏をみとめなかった代表がむのうなのよ」
次に驚いたのはその言葉遣いだった。真面目で冷静な彼とは明らかに違う、まるで我儘大好き娘のように傲慢尊大な振る舞いとそれを許容してしまうほどの雰囲気を纏っていたからだ。
「さっさとこてーじにもどるわよ。わたしきぶんが晴れないの。上をもてなすのは下のつとめよね?」
『……はい』
全員が沈黙するが逆らえば自分らだってどうなるのか分からない恐怖を覚え従順になることにした。
「さっさとお茶とくだものきってきなさい」
「ねぇ、ちょっと。どうしたの」
「わたしはピュアブリングよ。リーダーをもてなすのは当然のつとめでしょ」
「あの、あまりにも態度が変わりすぎでは。あなたはもっと」
「なによ。わたしが誰だと思っているのかしら」
「リーダー、これまで我らが至らぬところが多かったですが。どうか温情を」
「だったらおちゃとおいしい食べ物もってきなさい。それで我慢してあげるわ」
「なんだがようやく外見と中身が一致したような感じですねー」
「あら。ほめことばありがとう」
「だとしてもここまで別人のようになるのでしょうか」
「わたしは僕、僕はわたしよ。ただコインのおもてとうらがちがうだけ」
「きみぃ、豹変しすぎだよー」
「それについてはどうしようもないのよ」
仲間全員が疑問を浮かべつつこれまで丁寧に対応していた彼とは全く異なる魂が入り込んでいるのか、そう思わざるを得ないほどの変わりようだった。
わたしが言うようにお茶と果物を切って持っていくと満面の笑みを浮かべながらそれを楽しんでいる。
「うまうまよね」
ひとしきり楽しむと満足したのか柔和な笑みを浮かべる彼というわたし。
「あなたは、誰なの。彼の肉体に別の心があるような感じ」
「そうよ。わたしと僕はコインのおもてとうらの関係。ただ、見るほうこうによってちがうだけなのよ。男性的と女性的と些細な違いだけだけどいみはおおきくことなるわ」
「複数の心って、持てるものなの」
「だれだって耐え難いおもいはしてるものでしょう。べつの自分がいればかわってもらいたいと思わない訳はないわ。だれだってきずつきたくないからね」
ミーアとエメリアの質問にピュアブリングという存在が一己だという疑問は消し飛んだ。
「あなたは何者なのですか。どうも我らが知る彼とは同一人物でないことは確かなようですが」
「僕という肉体がピュアブリングというのならわたしもまたピュアブリングなのよ。赤のたにんからもらった名前だけどね」
「肉体という個に二人の人格がコインのようになっているという訳ですか」
「そうよ。もっとも、わたしの出番はあんまりないほうがつごうがいいの。ゆうとうせいだからね僕は」
バーゼルとシェリルは彼が何か深い闇を抱えている事情があることを察しそこを聞いておくことにした。
「どちらが本物なのですか」
「どっちもほんものよ。まぁ、わたしはこの通りだし僕もまたこの通りだけど」
「頭がおかしいんじゃないのー」
「ふふっ。人はね、条件さえ整えればかんたんにくるえるのよ。いっせんをこえるのに自己意識はじゃまだからね」
ラグリンネとエトナはその豹変ぶりに驚くばかりだ。
「あんしんしなさい。しばらくすればいつもの僕に戻るわよ。ま、その間はわたしのよくぼうはっさんに付き合ってもらうけどね」
これまで僕が甘やかしていた分だけ尽くすのは当然でしょ。わたしはそう言っていた。
「さっさとそとにくりだすわよ。服とか下着とかたりないし、なにより楽しみがたりないのよ」
仲間ら全員を引き連れて外に繰り出し服やら下着やらを買い込む、やっぱり女子用のフリフリヒラヒラ服ばっかり選ぶ。あと、本屋にも立ち寄って洗いざらいの本、特に歴史に関する本ばかりを選ぶ。
「なぜ買うのですか」
「わたしは隔離されたせかいしかしらないの。常識けつじょはだいもんだいだわ。あなた達だってらくさの激しすぎる僕にはなやんでるでしょ。それをわたしが補佐するためにまなぶのよ」
たしかに、ピュアブリングの価値感の高低差は激しすぎて手に負えないのは周知のとおりだ。それがわずかでもマシになるというのなら問題はない。
コテージに戻りすごい速さで本を読破していくわたしという存在。
「ふんっ。世の営みとやらはここまでゆがんでるのね。じつにこうつごうだわ」
「都合がいいとは?」
「ときとばあいと条件によっては略奪とじゅうりんと殲滅がゆるされるということよ。たいはんの部族氏族がじゃくたいかしてるのはこうつごう、もっとも未だに同盟関係があるみたいだけどね」
わたしが言うことがいかに恐ろしいことなのかを全員が理解した。
「やっぱりせかいはくるっているのが素晴らしいわ。こんとんとやらにはしっかりお礼をいわないとね。これでわたしというそんざいが必要であるのかがよくわかるというものよ」
先の決闘で見せた残虐性が当然のようにまかり通るこの世界がわたしにとっていかに都合よくできているのかを再確認している。あれについては降伏を受け入れなかった相手に全部の責任があるとしてピュアブリングについては何も罪がないことがすぐに伝えられていた。
『ピュアブリング!あれはいったい何なの。あれは貴方じゃない。あんな残虐な行為を楽しむなんて心がないの!そもそももっと楽で簡単に戦いを終わらせてしまうことだって出来たはずでしょう!』
皆が皆あまりの変化に驚いていた。困惑、仰天、恐怖、色々な感情が混ぜられておりとても理解が追い付いてない。
「なによ、わたしに口答えする気?」
『えっ』
まず驚いたのはわたしという一人呼称の変化だった。別にそれだけなら対して問題ないように感じるがいつも穏やかで大人しい彼とはまるで中身が違うように感じてしまう。
「ふんっ。文句を言いたかったらあいてにいうことね。どうやっても勝てないのはわかりきっていたはずなのに降伏をみとめなかった代表がむのうなのよ」
次に驚いたのはその言葉遣いだった。真面目で冷静な彼とは明らかに違う、まるで我儘大好き娘のように傲慢尊大な振る舞いとそれを許容してしまうほどの雰囲気を纏っていたからだ。
「さっさとこてーじにもどるわよ。わたしきぶんが晴れないの。上をもてなすのは下のつとめよね?」
『……はい』
全員が沈黙するが逆らえば自分らだってどうなるのか分からない恐怖を覚え従順になることにした。
「さっさとお茶とくだものきってきなさい」
「ねぇ、ちょっと。どうしたの」
「わたしはピュアブリングよ。リーダーをもてなすのは当然のつとめでしょ」
「あの、あまりにも態度が変わりすぎでは。あなたはもっと」
「なによ。わたしが誰だと思っているのかしら」
「リーダー、これまで我らが至らぬところが多かったですが。どうか温情を」
「だったらおちゃとおいしい食べ物もってきなさい。それで我慢してあげるわ」
「なんだがようやく外見と中身が一致したような感じですねー」
「あら。ほめことばありがとう」
「だとしてもここまで別人のようになるのでしょうか」
「わたしは僕、僕はわたしよ。ただコインのおもてとうらがちがうだけ」
「きみぃ、豹変しすぎだよー」
「それについてはどうしようもないのよ」
仲間全員が疑問を浮かべつつこれまで丁寧に対応していた彼とは全く異なる魂が入り込んでいるのか、そう思わざるを得ないほどの変わりようだった。
わたしが言うようにお茶と果物を切って持っていくと満面の笑みを浮かべながらそれを楽しんでいる。
「うまうまよね」
ひとしきり楽しむと満足したのか柔和な笑みを浮かべる彼というわたし。
「あなたは、誰なの。彼の肉体に別の心があるような感じ」
「そうよ。わたしと僕はコインのおもてとうらの関係。ただ、見るほうこうによってちがうだけなのよ。男性的と女性的と些細な違いだけだけどいみはおおきくことなるわ」
「複数の心って、持てるものなの」
「だれだって耐え難いおもいはしてるものでしょう。べつの自分がいればかわってもらいたいと思わない訳はないわ。だれだってきずつきたくないからね」
ミーアとエメリアの質問にピュアブリングという存在が一己だという疑問は消し飛んだ。
「あなたは何者なのですか。どうも我らが知る彼とは同一人物でないことは確かなようですが」
「僕という肉体がピュアブリングというのならわたしもまたピュアブリングなのよ。赤のたにんからもらった名前だけどね」
「肉体という個に二人の人格がコインのようになっているという訳ですか」
「そうよ。もっとも、わたしの出番はあんまりないほうがつごうがいいの。ゆうとうせいだからね僕は」
バーゼルとシェリルは彼が何か深い闇を抱えている事情があることを察しそこを聞いておくことにした。
「どちらが本物なのですか」
「どっちもほんものよ。まぁ、わたしはこの通りだし僕もまたこの通りだけど」
「頭がおかしいんじゃないのー」
「ふふっ。人はね、条件さえ整えればかんたんにくるえるのよ。いっせんをこえるのに自己意識はじゃまだからね」
ラグリンネとエトナはその豹変ぶりに驚くばかりだ。
「あんしんしなさい。しばらくすればいつもの僕に戻るわよ。ま、その間はわたしのよくぼうはっさんに付き合ってもらうけどね」
これまで僕が甘やかしていた分だけ尽くすのは当然でしょ。わたしはそう言っていた。
「さっさとそとにくりだすわよ。服とか下着とかたりないし、なにより楽しみがたりないのよ」
仲間ら全員を引き連れて外に繰り出し服やら下着やらを買い込む、やっぱり女子用のフリフリヒラヒラ服ばっかり選ぶ。あと、本屋にも立ち寄って洗いざらいの本、特に歴史に関する本ばかりを選ぶ。
「なぜ買うのですか」
「わたしは隔離されたせかいしかしらないの。常識けつじょはだいもんだいだわ。あなた達だってらくさの激しすぎる僕にはなやんでるでしょ。それをわたしが補佐するためにまなぶのよ」
たしかに、ピュアブリングの価値感の高低差は激しすぎて手に負えないのは周知のとおりだ。それがわずかでもマシになるというのなら問題はない。
コテージに戻りすごい速さで本を読破していくわたしという存在。
「ふんっ。世の営みとやらはここまでゆがんでるのね。じつにこうつごうだわ」
「都合がいいとは?」
「ときとばあいと条件によっては略奪とじゅうりんと殲滅がゆるされるということよ。たいはんの部族氏族がじゃくたいかしてるのはこうつごう、もっとも未だに同盟関係があるみたいだけどね」
わたしが言うことがいかに恐ろしいことなのかを全員が理解した。
「やっぱりせかいはくるっているのが素晴らしいわ。こんとんとやらにはしっかりお礼をいわないとね。これでわたしというそんざいが必要であるのかがよくわかるというものよ」
先の決闘で見せた残虐性が当然のようにまかり通るこの世界がわたしにとっていかに都合よくできているのかを再確認している。あれについては降伏を受け入れなかった相手に全部の責任があるとしてピュアブリングについては何も罪がないことがすぐに伝えられていた。
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