解体の勇者の成り上がり冒険譚

無謀突撃娘

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第1章

124話 ライク家の発展のために

私の名前はシェリー・ライクと申します。

実家は都市ユーラベルクより離れた場所にある穀倉地帯を預かっている豪農、とでも言いましょうか。ただそれは昔のこと、今は他の発展した農家に追い越されてしまいそこそこの農家という評価です。とはいえ、長年安定して麦を生産し収穫してきたので冒険者ギルドからの信頼はそこそこあるでしょう。

私は本家の次女なのですが、ほんの少し前までは本家と分家の激しい対立がありました。

食用麦の生産一本だけでは収入が増えない、家が発展しない、そんな分家が米生産に切り替えろと。背後には欲深い世襲貴族の影があり分家は都合のいい駒として動かされていました。

その問題を何とか打開すべく冒険者ギルドで噂の人物に縋りつきました。

名前を「ユウキ」というそうです。

ここら一帯では聞きなれない呼び方で非常に珍しい黒髪黒瞳の青年でした、年齢はそれほど離れていないと思います。

彼が出てくるという交流会に何とか入り込んで、

「お願いします!わが家を助けて下さい!!」

恥も外聞もなく土下座しました。

私もそこそこ教育を受けているのでこのような席で土下座するなど恥以外何物ではないと理解していましたが家が火急の事態のため大急ぎで協力を求める必要があったのです。

リサギルド支部長と彼に連れていかれ別室で話をします。

「ライク家ではお家騒動が起こっていると聞いてましたが、そのような状況なのですね」

リサ殿は親身になって話を聞いてくれました。

分家を煽り占領を企む複数の世襲貴族共。彼らは冒険者ギルドとの取り決めを無視して兵を集めているとも聞いていました。それに対抗するのは何とかこちらも冒険者を用意するしかなかったのです。

「ユウキ、手助けしてあげてもらえませんか」

「ん~、でも。今取り掛かっている仕事はどうするの?」

ユウキ様は悩んでいます。

何でも、リサギルド支部長直々に預かっている大事な仕事があるそうです。そちらの方を優先したいとユウキ様は考えていましたが何とか承諾してもらうことが出来ました。

彼と付き添いの者らを連れて領地に帰ります。

当主代理であり姉のシュニーに引き合わせて土地の再調査と今後の見込みを聞くと、

「米生産に切り替えても労働時間の延長に土質の定着に数年かかる、あとは生産高もかなり少なくなるね」

残酷な回答を聞きました。

水量が足りず土質も米に適してない上数年はかかると。その上労働時間が長くなり生産高は大幅に減少するだろうという見込み。

私はその根拠を聞きました。

「麦にしろ米にしろ生産するための基礎技術がある、麦畑を米畑にするには短粒種ではなく長粒種にしなくてはならないんだけど」

何でも、米の種類そのものが違うそうだ。私にはよくわからない言葉を使われるが、私たちの考えるような水田で育成するような方法は取れないそうだ。

これまでどうり麦の生産だけに力を注げと。でも、それでお金に困窮しているのだから。

「要は麦の生産だけでも発展するようにしろと言うことだよね」

わかったわかった、と。気楽そうな返事をするユウキ。本当にこの人物で大丈夫なのか不安が増えます。

それからユウキは稼働してなかった粉ひき所兼水車の場所を聞いてきます。麦を挽いて粉にする商売は農家ならだれもが考えますが長時間動かすと歯車噛み合わないという大問題がありました。

ユウキは数日間中に引きこもると、

「これで問題は解決したから」

そうして粉挽き所を稼働させました。

その効果は目覚ましいもので一つにつき一日百キロ以上も挽け一日中稼働しても壊れないという素晴らしいものでした。いったいどこをどのように改造したのかは私達農民には分かりませんでしたが。

この結果、麦を挽いて麦粉にして売るという商売が確立したのです。数倍以上の値段で売れる麦粉を安定かつ大量に製造できる水車小屋を手に入れたことによりライク家の問題は解決しました。

姉であり当主代理のシュニ―お姉様は大喜びして下の妹アリーナをユウキ様の嫁に出すことをすぐさま決断します。

私はその麦粉を売りに行くと同時に思いを寄せていいた幼馴染のジルに思いを伝えました。最初こそつれない態度を見せて怒りと涙が溢れましたが彼は私の思いを受け止めてくれました。

冒険者を連れて帰ると同時に起こった分家の反乱はすでにユウキ様によって消されていました。最後まで分家は反抗したので殺さざるをえなかったことは悲しいことですが。殺さなければこちらが殺される状況まで進んでいたので止むをえません。

ここまで状況が悪化したら「生かしておく」などという甘い判断はできないのですから。彼らは不穏分子であり内乱の種を撒くのは確実。それをおこなったユウキ様に対して思うところがないわけではありませんが。

そして、いよいよ貴族軍の侵攻が始まります。

予想を遥かに超える人数に味方は恐怖を覚えますが、

「必ず生き残れるから」

ユウキ様は味方を鼓舞します。

彼は先陣を切って敵軍に突撃し指揮官らを含めて特化戦士の武力をまざまざと見せつけました。

たった一人で敵の半数以上を殺し軍勢を敗北させるという大戦果をもたらしました。まるで物語の中の人のようです。

その後遺体処理に忙しい中リサギルド支部長に呼ばれて裁判となります。中身は殺した世襲貴族らに関することでしたが特別な計らいにより私たちに関する罪は無いことになりました。

そして、

「今日挽く麦の量はこれだけです」

「はい、わかりました」

経営に忙しい日々が続いてます。

連れてきた冒険者らは貴族軍の遺体処理や捕虜となった兵士の管理をしています。その間も時間は進むので領地の運営を止められるほど資金は豊かではありませんから。

ユウキ様によって改造された水車は今日も元気に音を立てながら稼働しています。

麦を麦粉にして売るというだけですがこれでも大幅に資金力は上がりました。ユウキ様はその後リサ殿に呼ばれてジーグルト伯爵家に行ったと聞かされました。ジーグルト伯爵家といえばこの辺り一帯では有力な鉱山地帯を有する大貴族様。その当主自らやってきて連れて行ったそうです。

「お姉様、ユウキ様は、ここに、戻られないのでしょうか?」

妹のアリーナが寂しそうな顔をしていました。アリーナはその後勇気を出して部屋から出る日が徐々に増えてきています。しかし。待ち人は一向にやってきませんでした。

「我慢です。そう言いたいのですが待つだけでは駄目だと思いますね」

「そうですね。あれほどの方になると待っているだけの女など意味がないかもしれないですから」

「そ、そんなぁ!」

アリーナはとても寂しそうに答えます。短い時間でしたがとても楽しい時間を過ごしたアリーナは帰ってこないユウキに思いを寄せていました。

「そろそろ、リサ殿から連絡があるとおもいますけど」

「う、うん」

そう考えていると。

「失礼します」

連れてきた冒険者が屋敷に来ました。

「お疲れさまです。戦後処理の方はどうでしょうか」

「そちらの方は何とかしております」

ユウキが殺した貴族軍の遺体処理は冒険者らに一任していた。今日来たのはなにかあったのだろうか。手紙を渡される。

その中身を読むと。

「アリーナ、大変なことになりました。急いで外出の支度を整えなさい」

「えっ?」

手紙の中身を見てシュニ―お姉様は言い出しました。

何でも、ユウキ様がジーグルト家で比類なき功績を獲得したので戻ってこられない事が書かれているそうです。ユウキの仲間の女達も集められて一緒にそこに行くようにと。

ジーグルト伯爵家で不動の地位を築いたユウキ様に直接家臣になってほしいとも書かれています。

「とにかく、急ぎなさい」

「で、でも」

アリーナは渋ります。

「彼の傍にいたいのでしょう?これは試練です」

今行かなければ嫁入りの約束など簡単に無かったことにされてしまうだろう。さすがに豪農と伯爵では相手が悪すぎて同じ立場に立つことなど到底不可能なのだから。

渋るアリーナを何とか言い含めてユウキの仲間の女らとともにジーグルト伯爵家に向かいます。ユウキの仲間らは元農民ばかりであり「これなら、勝てる」そう思っていましたが。

伯爵家に行くと、そんな思いは簡単に壊れました。

「初めまして、私はエーディンと申します」

とてもすごい体をした美女が現れたのです。

体も中身も全く違う女を見てしまい、アリーナの何かが燃え盛ります。

「ま、負けないんだから」

いつも気弱で臆病なアリーナは小声でひそかに決意したようです。

その後ジーグルト家の本屋敷の泊まることになりました。

「広いですね」

「う、うん」

さすが伯爵様と。そう思うほどに屋敷の中は整理されていました、豪農の私達とは生活水準が違うと実感できます。その後私達は先代当主のベルン様に秘かに呼ばれます。

「いきなり呼びつけて悪いとは思うが」

何でも、ユウキ様の嫁にふさわしい教育をここで受けてほしいそうだ。

ユウキ様は今後重要な立場として振舞わなくてはならない、ならば。その妻にもそれ相応の教育を受けさせる必要がある。外向きにはエーディンという女性がやってくれるそうだが狙われ付け込まれる危険性がある。なので、雇っている者らから勉強させてもらえるそうだ。

その間衣食住はすべて保証するという条件まで出されます、それだけユウキ様に力を評価し買っているのだと瞬時に理解できました。

その申し出を受けます。

その後ユウキ様と何とか会う時間が取れました。

「忙しい時期なのにごめんね」

「いえ、ユウキ様のお立場に比べれば」

彼は毎日とても忙しい時間を過ごしていました。もう立場は伯爵家の重臣と言っても過言ではないほどに。

「今日話すのはライク家の今後のことなんだけど」

やはりユウキ様はライク家のことが気がかりだったのでしょう。あの後やるべきことをやり忘れたと、苦笑しました。

「やはり現時点では急場しのぎにしかならないと思うからね」

麦粉をもっと生産するためにはアレと同じものが必要だがギルドの職人らに見せてもどこをどう改造したのか理解できないと言われた。

麦粉は高値で売れるがやはりそれだけではライク家はまた同じ問題に直面してしまう。

それを解決するには粉挽き小屋の増加や麦の生産高の向上など、いくつかの問題を解決しなければならない。

ユウキ様はその問題点の解決策を紙に書いていた。

「まずは、とにかく麦粉を作って普及させることだね」

「はい」

「同時にそれを使った商売を直接ライク家が仕切ること」

「なるほど」

「最後に農地面積と水車の増加、だね」

これを順番に解決すればライク家の問題はすべて解消できるそうだ。

一つ目はありったけの麦を麦粉にすればいい、それで需要が高ければ外から買えばいいだけだ。どうせ農民程度ではあの水車の中身など解明できないのだから。

二つ目は麦粉を利用した料理の開発、主にパンなどだろう。以前来た時に「スイトン」などの料理を振舞ってもらいその料理方法を見たのでそれをギルドの支援で店を出して直営店にして付加価値を高める。

3つ目は今の農地面積では生産高が足りなすぎるという問題、ハッキリ言えばもうライク家には開拓できる土地がほとんどないのだ。そうなれば外部の土地を購入するしかないがそれ相応のお値段となる。

「すまないけど、借金をして」

冒険者ギルドにお金を貸してもらえと。

借金はよほど困っている者がやるのが普通だが将来性の見込みがあると分かれば経営が軌道に乗っていても借金をする価値があるそうだ。営業利益が上がっている状態ならば審査はさして難しくない。

具体的な計画はリサギルド支部長とよく相談して進めろと。

「僕の名前を使えば簡単に出してくれるからね」

気楽そうな返事、だが。それが頼もしく感じるのはなぜだろうか。

計画書はユウキ様が作成したそうなので後は冒険者ギルドの審査を通せればいいそうだ。私はアリーナを置いてユーラベルクに戻ることにした。
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