解体の勇者の成り上がり冒険譚

無謀突撃娘

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第1章

140話 援軍

「やっと落ち着いてきたね」

「そうでございますね」

今日は敵対勢力が来ず平和な時間を過ごせるようだ、撒いた種が芽吹きその対応に追われているのだろう。多少の事実とほんの少しの嘘を織り交ぜて噂話をばら撒くだけで機能不全に落ちいるとは。なんと脆い相手だろう、そう思う。

この程度など謀略と呼べるものではない、そんな程度のことにすら対応が難しくなるぐらい貴族の質が劣化しているのだ。

まぁ、むやみやたらに兵士を墓場送りにするよりは精神衛生上良いことは間違いない。

さて、そろそろ周囲の貴族達がどのように動くか、その答えが現れるころだ。

壁の上から外の様子を確認すると、

「オッ、来たね」

拠点の外から貴族家の旗を立てた集団と荷車がやってきた。それは間違いなくこちらに向かってくる。

「開門!開門!我らはライル子爵を筆頭とする貴族連合からの者だ。大至急責任者に会わせてほしい!」

この様子では援軍の申し入れだろう。早速責任者らを中に入れる。拠点の中で話を聞く。

「私はラークス子爵家の重臣の一人でピエトロと申します」

「初めまして。この拠点の責任者のアランです」

「この度は我がラークス家と複数の貴族家はジーグルト伯爵家に同盟を申しこみにまいりました」

外に来ている荷車に水や食料や矢など補給物資を積んできたと。

「それは、ありがたいことです」

「アラン殿ですね、率直に聞いてよろしいですか?」

今現在本当にここの軍勢の指揮を執っているのは誰であるか?と。そう尋ねてきた。なるほど、ここまでの行動はどう考えても伯爵だけで行われてはいないはず、だれかしら協力者がいて当然だ。

その正体を知りたいと。

アランは「チラッ」こちらを見る。

しゃ~ないな、正体をバラしても構わないか。

「初めまして、ユウキと申します。此度の作戦において軍師を任されている者です」

ザワザワ

僕のことを見た複数人が驚いていた。

軍師のイメージは大抵頭が良いインテリを思い浮かべることが多い、軽快な服装でいる軍師などほぼ見たことが無いのだろう。

信じられそうにないので、胸元のバッジを見せる。

『そ、それは!冒険者ギルドの小隊長第一位の!しかも、行動隊長とは!!』

そのバッジを見て驚愕の表情をする者多数。冒険者ギルドは実力主義の組織だ。そこで三百名を指揮統率できる権限を持つ小隊長一位である意味は下手な将軍よりも意味が大きい。しかも場合によれば独断専行も許される行動隊長の有資格者ともなれば相当な信頼を置かれているということ。

冒険者ギルドでは有能な人材をお抱えにしているがまだ十代で小隊長筆頭まで出世できる人材は数えるほどしかいない、実技学科教養など覚えねばならない事は数多い。

それをクリアしている僕に一目置くのは当然だった。

まぁ、いきなり貰ったから実感はないけど。こういう場面では重宝するな。

「これで文句はない?」

「ははっ。小隊長殿、無礼な発言をお許しください」

全員が頭を下げる。

今のご時世軍縮が進み兵士を持てる人数に制限がある、軍人になろうと目指すものは結構いるのだがいかんせん努力と苦労を知らない軟弱な世代ばかりが入ってくるので基礎能力が低い。

大抵は家のコネでは入れるがそこで出世できる人間は限られている。ならば冒険者ギルドはどうなのか?この世界では有事の際にはほぼ冒険者ギルドが出てくるためこちらの方が軍事力は強い。

モンスターを相手に経験を積み後に軍課程に進む者らもいる。それでも、かなりの倍率になるし容赦のない振るいに生き残れるのはほんのわずか。年功序列は一切考えず実力と忠誠心だけで選抜される制度なのだ。

この若さで小隊長一位というのは相当な出世の速さだと言える。

「さて、皆様はジーグルト家に味方する、そう考えてよろしいのですね」

『はっ』

「援軍である以上こちらの規律に従って貰います」

そうして、五十名ほどが味方に加わった。兵士が不足しているのでこれぐらいの数でもありがたい。

「まずは拠点の防衛と維持に力を注ぎます」

質問は?と。

「現在アグナック子爵を筆頭として不穏な動きを見せておりますが?」

なるほど、それぐらいの情報は得ているのか。ん~、彼らは流言飛語で兵がまともに動かせない状況にあるから冒険者ギルドの援軍を待ってから対応しても遅くはないが。手持ちの兵士が少ないことを考えるとちょっと難しいな。

この人数でも僕が先頭に立てば一掃することは不可能ではない、問題はその後だ。

いくつもの貴族家を潰すと相続やら財産やらで揉めるのは間違いない、連れてきている文官は人数が少ないので下手に攻撃するとその対応に追われて背後を取られる危険性がある。

そうなると、冒険者ギルドからの援軍を待ってから潰しに行く方が効率がいい。いいのだが、追い詰められた獣はどう動くか分からない不安もある。

彼らとて無償で援軍に来たわけではないからね。なにがしかの手柄を立てさせる必要がある。

さて、どうするか。そう考えていると、

「申し上げます」

「どうしたの」

「何者か分からぬ一団がやってきました」

「旗は?」

「立てておりません」

って、事は。山賊や野盗の類か。いくら兵士が足りないって言っても手を組む相手としては最悪だろう。これは好都合だ、彼らは手柄を立てたくてウズウズしている。手ごろな練習と考えても旨味があるな。

「援軍に来てすぐさまだけどお仕事を頼ませてもらうよ」

『ははっ、畏まりました』

装備の具合を見る限り最低限の訓練は受けているだろう、しかし、人殺しの経験はないはずだ。どれぐらい使い物になるのかここで確認させてもらおう。

『門を開けろ!さっさと開けろ!』

外に出ると薄汚れた身なりの人間がいた。ざっと七十名か。やれやれ、初任務が山賊討伐とは面白くないないかもしれないがこれはこれで功績である。

このような輩の排除も貴族の仕事の範疇になるのだが、こんな数が潜んでいたことを考えると敵の貴族家はどんだけ悪事を働いていたのかよくわかるな。

「しきりに騒いでおりますが?」

どういたしましょう、と。

「皆様方はすぐにでも戦えるように門の後ろで待機して下さい」

僕は門の上に上がる。

「正体不明の軍勢の方々、この拠点に何用で?」

「てめぇが指揮官か!さっさとこの拠点を寄越せ!!」

頭目らしき男が叫ぶ。こんな手合いに言葉は無用だ。

「”着弾する火種”」

魔法のバッグから武器を取り出す。一見すると赤い槍のようだが穂先が無い上に先端が異様に大きい。体力の消耗が激しい武器だがこの際仕方がない。穂先が無い理由はすぐにわかる。それを腰だめに構えると「シュ~」音を立てて先端が赤く輝きだす。

『な…なんだぁ?』

相手はこちらを呆然と眺めている。武器の穂先の輝きが十分なほどになりキイ~ンという音とともに敵の中心地に瞬時に赤い火種が飛ぶ。そして、着弾するとともに地獄が生まれる。

カツ!!ドゴ~~~~ン!!!

着弾地点を中心に一面が火の海になる。数千度という高熱が目前を覆いつくす。当然その中心地近くにいた彼らは『ギャァァァアァ~~!!?!』火の海の中でのたうち回ることになる。装備も道具も何もかもがドロドロに溶けてしまう。

『あちぃ!熱いぃよぉぉ!火が、赤い火、がぁぁあぁああ!!!』

赤い灼熱の海でのたうち回る人間、そして、当然のごとく絶命した。黒い遺体を残して。

『ひ、ヒィィ~~!!な、ななな、何だよこれは~!!?』

着弾地点から離れた山賊らが悲鳴を上げる。あれだけの数が一瞬で消滅したのだから。生き残りは十人にも満たない。火の手が収まり出すと同時に門から援軍が出てきて山賊らを殲滅した。

あまりにも一瞬の出来事に敵だけではなく味方からも声が上がらなかった。恐怖を覚えるか?それも当然だ。だけども今は味方だよ。今は…、ね。
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