解体の勇者の成り上がり冒険譚

無謀突撃娘

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第1章

142話 火の池地獄

ジーグルト伯爵軍とその援軍はユウキの見て絶句していた。ただの戦士ではなく尋常ならざる強さを持つ特化戦士。かつて古に存在しただ一人で大軍すら制圧せしめるほどの実力者。

その話の中に必ずというほどに存在している強力な武具の存在。装備者の体力を奪い精神すら蝕む強力な魔術付与の武具。

ユウキ様は魔法のバッグから赤い武器を取り出すと腰だめに構える。その先端に赤い光が灯りそれが発射されると前方が火の池地獄と化した。

絶叫をあげながら燃え盛るよく分からない敵はそうして黒くなり大地に転がる。

「火力が強すぎるな」

ユウキ様は舌打ちする。こんな地獄を生み出しておきながら不満を言うのだ。

「もっと攻撃範囲絞れるようにしろよ…」

ブツブツと。よく分からない言葉を呟く。

ジーグルト家の家臣の兵士だけではなく援軍としてきた貴族の兵士らも恐怖に震えあがった。

この世界にはマナ(魔力とも精霊力とも)呼ぼされる力が溢れている、火が強ければ火山になり風が強ければ烈風となり水が強ければ湖になり土が強ければ豊かな大地となる。その上に神々がいて世界を秩序していると信じられていた。

それらとともに幻想の種族も存在している。

知恵ある竜しかり高さ数メートルの巨人しかり翅の付いた少年少女の妖精しかり―――

それらが創造した武具もまた伝説の中に存在していた。装備者に栄光と破滅を約束した。

それらを原点として様々な鍛冶師職人らが全身全霊をもって装備を作成する時代が来た。それは一言では語り尽くせない程の品々を。だが、そうした武具のほぼすべてが例外なく装備する者らを選んでしまったのだ。

この世の生物には二つの力が宿っているとされる。生命力(オーラ)魔力(オド)そう呼ばれる。前者が強ければ戦士となり後者が強ければ魔術師となるのが常識。だが、ここで問題が起きる。生命力と魔力は反発しあう性質を有しているためどちらか一方が強く出るとその方向にしか進めなくなるのだ。

稀に両者を高く有した生物も現れることがあるがそれは全体のほんのわずかだけ。だからこそ分業制が成り立っている。戦士が前に出て魔術師が後方で援護する。

これは古の常識的な戦闘方法だ。

鍛冶師職人らはこの前者に着目し武装を制作した。生命力は回復が難し魔力よりも維持するのが難しい反面力を発現させると想像すら及ばないほどの力を発揮した。

そうして、尋常ならざる戦士だけのための装備―――。特化戦士と呼ばれる者たちだけの装備の開発が今も続けられている。時に一軍すらも蹂躙可能な装備はまさしく脅威そのものだった。

そして、ここにその装備を縦横無尽に使いこなす者が現れた!

「ふむぅ」

山賊崩れの連中を恩を売った大貴族から譲られた装備を使い一掃したが、つまらないものだった。

「(使用すると恐ろしく生命力を奪われるから何度も使えるものではないと聞かされたけど)」

使用してみると肉体にさしたる変化が無かった。疲れや疲労の類も無くこれなら後数発は気楽に可能だろう。ただ、攻撃範囲が広くて敵味方が入り乱れる乱戦では使用は不可能だ。

その武器を魔法のバッグに仕舞う。

「ユウキ様!ご無事でございますか!?」

ジーグルト家の兵士が慌てて駆け寄ってきた。

「無事ですか?って……」

何か、えらく心配されてるなぁ。

「あれだけの武具は常人には耐えられませんから」

いくらユウキ様でもなにがしかの代償があるのでは?そう心配されていたようだ。

「あぁ?そういうことね」

はいはい、と。あっけらかんに返事をする。

馬鹿勇者共と旅をしている最中に御伽噺のような装備の類を目にすることになったが、

『こんな武器使えるか!!』

勇者らはことごとくそれらの装備を使えなかったのだ。

この世界において生命が有する二つの力の内、魔力よりも生命力が圧倒的に必要であったのだ。武装も圧倒的に戦士寄りの装備が多くあった。

『火を灯す魔剣』『宙を駆ける靴』『障壁を生み出す盾』その他諸々。

馬鹿勇者らは『まともじゃない方法』で能力を強化していた。それにもかかわらず、だ。つまるところ、まともでありながらまともじゃない存在しか装備不可能ということ。

馬鹿勇者らがお金を渡してくれたら買えたのだが、僕に対して非常に金払いが悪かったから仕方がない。その後各地を転々として貴族らと付き合うことになる。大半が黒い欲望を持った馬鹿ばかりだが付き合うに値する大貴族らもいた。

それらから信頼を得て装備を秘かに譲ってもらったのだ。大貴族らも所有していても装備できる人間がいなかったので渡りに船だったのだが。

「(押し付けられたもんなぁ……)」

自分らの直系から嫁や家臣をもらって欲しいと。断れる状況ではなかった。

馬鹿勇者らと別れたのち居場所を確保したら招くと約束したがもう冒険者ギルドの耳に入っているようだ。手が速いなぁ。

なるべく早く来させたいのだが今はジーグルト家の敵を排除するのに全力を挙げないとならない。

黒く焦げた死体がいくつも出てきてしまった。多分炭化してるだろうな。

「死体を片付けろ」

『は、ははっ!』

ジーグルトの家臣と援軍が無残となった死体の片づけ作業を行う。もはや人ではなく何か得体のしれないモノとなってしまった存在。

『ウプッ…』

肉が焦げ焼けた匂いと元血液らしき液体が流れる死体、それらを片付けるのに嫌悪感を覚えない者はいないだろう。だが、これも仕事だ。

そうして、人質への尋問が始まる。

「お前らはどこから来たのだ?」

『……』

彼らはひたすら無言を貫いた。何か言えば身元がバレてしまう。かといって沈黙し続けるのは不可能だ。目前で抹殺された味方のようになりたいのか?

「なんとか言え」

「………」

いくら問い詰めても口を割ろうとしない。

「ユウキ様、どうしましょうか?」

このままではラチがあかないと。

「仕方がない」

もう一回、火の池地獄を拝んでもらうことにする。

「そいつらを全員縄で縛って拠点から離れた場所にまとめておけ。面倒だが焼き殺す」

『ははっ!』

しゃべる気が無いのならそれでいい、いても無駄に兵糧を消費するだけなのだから。今度こそ生き残れないようにしてから始末を付ける。

『ヒ、ヒイッ!!あ、あんな地獄に行くのは嫌だ!?』

目前で味方がどうなったのかを知っているから恐怖に怯える。あんな地獄に落とされるぐらいなら捕虜として素直に喋った方がマシだろうな。

「じゃあ、改めて質問するね」

お前らの背後に誰がいるのか?

恐怖に怯えながら捕虜らは洗いざらい白状した。
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