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第1章
155話 商売の雛形 Ⅲ
3つ目の店に向かう。そこはやや中心地から離れた場所にあった。
「ユウキ!よく来てくれたな」
店に着くとこの前会った職業貴族家の当主がいた。たしか、ノックスさんだっけ。
「なぜここに?」
「それはこの店の所有権を有しているからさ。ま、それだけじゃないけど」
先に行った二店の噂を聞いて改善策をどのようにするのか直接見たくなったそうだ。とはいえ、やることは変わりはない。早速店の調査を始める。
一時間ほど調べたが店はスパゲティを売りにしている店だと判明する。ソースも典型的なミートソースだ。
「で、ユウキ。どのように改善するんだ」
「そうですねぇ」
店の状態から見るとあまりコストを掛けられない問題がある。その上で味を向上させないとならない。となるとアレしかないか。
「ちょっと材料を買ってきますので」
「お!もう改善案が出たのか。どんな結果が出るのか実に楽しみだ!」
ノックスさんはとても興味津々のようだ。
材料には特別な物は何もないし手軽で安価に手に入るが……。ま、これぐらいは仕方がないか。早速商店街に購入に向かう。
「オイオイオイ、ユウキ。この大量の野菜くずは一体何なんだ?」
ノックスさんは溢れんばかりの野菜くずを見て驚いていた。
「出来る限りコストをかけず味を向上させる材料です」
「? 意味分かんないぞ。こんな野菜くずを大量に使うことがどうして味を向上させることになるんだ?」
ノックスさんもある程度料理の知識と技術を有している、そのためこれらがどうして必要なのかが分からないのだろう。通常であれば値の張る材料を使うと考えるのが当然だが僕にはここよりも遥かに進んだ世界の知識と技術を有している。
それらを使えばこの結論にたどり着くのだ。
手に入れてきた様々な野菜くずは皮種ヘタ根元など通常では食用にならないモノばかり、まずはそれらを丁寧に洗う。量が量なので少し時間がかかる。それらを鍋に入れてお酒と水を入れて煮込む。
グツグツ
中身が焦げないように慎重に煮込む。
ノックスさんや店の従業員も最初は意味不明な行動をする僕を訝しんでいたがリサギルド支部長直々に推薦した人物が無意味な行動を取るはずがないと判断し見守ることにしたようだ。
十分ほどで火を止める。これ以上煮るとアクが出てしまうからだ。
それを小皿にすくい皆に配る。早速味見だ。
『お!これは!!』
皆一様に驚く。
僕が作ったのは「べジブロス」と呼ばれるダシの元だ。野菜くずには元から栄養素が凝縮しており上手くやれば通常のスープを遥かに上回るダシの元が作れる。手順もそんなに難しくないにも関わらず効果は凄い。あらゆる料理に使用できコストも安いというまさに万能なダシだ。
早速それを元にしてミートソースを作る。さらに味を向上させるさためにシェクル(トマトに似た植物の実』を徹底的にすりつぶしたものを加えて焦げ付かないように煮込みその間にスパゲティ用の麺を茹でる。
麺が茹で上がりミートソースも程よく出来たので完成だ。早速全員で試食する。
「これは美味いっ!」
『すごい美味しい!』
べジブロスを使ったスパゲティはとても美味しくて皆喜んでいる。
「(なぁ、ユウキ)」
ノックスさんが神妙な顔で小声で話しかけてくる。
「(これ、どのぐらいの料理に応用できるんだ?)」
べジブロスの美味さを確認したノックスさんはどれほどの料理にこれを使用可能かを聞きたいみたいだ。
「(基本的に元ダシを使う料理なら何でも使えますよ)」
スパゲティに限らず煮込み料理だろうがスープ料理だろうが、使う相手は選ばないのがべジブロスの強みだ。
「(それは凄いな。これがあれば料理の味は格段に向上するぞ!この技術は早速冒険者ギルド料理部門に報告しておく)」
「(そうしてください)」
極めて汎用性があり美味くコストも殆どかからないこれがあれば料理の味は格段に向上することを確認したノックスさんはこの技術を冒険者ギルドに持ち込むことを決めたようだ。
さて、味は決定したので客の呼び込みを開始する。
お客が味のことを知らなければ来てはくれないので一件目と同じく手書きのチラシを百枚ほど作成して家に配る。対象となるのは年頃の男女だ。彼らは美味い店を常に探しているので知ればすぐにでもやって来てくれるからだ。
数日後。
『こっちに二人前!』
「はい、注文受け取りました!」
少し前までガラガラだった店には押し詰めるように客が入っていた、外にも列が出来ている。店員らは大忙しで注文を受け取り料理人は調理する。
こうなったらあとは問題ないだろう。
「これで三件目の依頼は終了です」
「ユウキ。お疲れさまでした」
リサギルド支部長に報告する。
「この『べジブロス』というのですか?すごいものですねぇ、使い道のない野菜くずが酒と水で丁寧に煮込むだけで万能な調味料に変わるとは」
リサさんは僕が考案したべジブロスに興味津々なようだ。すでに冒険者ギルド調理部門にその技術が持ち込まれ様々な料理に活用されていると聞く。
「さて、これで依頼の方はひとまず完了です。が」
次の話に移る。
「十日後に初級官吏の資格試験が始まります。ユウキは一次試験を免除されるので二次試験からです」
一次試験は広く浅く問題文を出すそうだが二次試験は深く狭く問題が出されるそうだ。かなりの数が一次で落ち二次でも落とされる。
「通常であれば試験勉強をさせるために時間の猶予を取るのが大半なのですが」
色々な問題が出てきてその対応にユウキを駆り出したことを謝られる。僕としては楽しくやらせてもらったので別に気にすることではないが。
「安心してください」
僕は「必ず合格する」明言する。
どのような内容なのかは不明だが僕には『もう一人の自分』の経験と知識を有している。それを使えば問題ない。
「そうですか」
リサさんはほっ、と。一安心したようだ。
二次試験が終わると最終試験の面接となるそうだ。それを通過すれば初級官吏となれる。冒険者ギルドからも毎年多数の人間が受けるそうだが合格率は決して高くない。
試験開始までは仕事のことは忘れて自由にしてよいと。ある程度余裕があるのでみんなの所で楽しくしようかな。
「ユウキ!よく来てくれたな」
店に着くとこの前会った職業貴族家の当主がいた。たしか、ノックスさんだっけ。
「なぜここに?」
「それはこの店の所有権を有しているからさ。ま、それだけじゃないけど」
先に行った二店の噂を聞いて改善策をどのようにするのか直接見たくなったそうだ。とはいえ、やることは変わりはない。早速店の調査を始める。
一時間ほど調べたが店はスパゲティを売りにしている店だと判明する。ソースも典型的なミートソースだ。
「で、ユウキ。どのように改善するんだ」
「そうですねぇ」
店の状態から見るとあまりコストを掛けられない問題がある。その上で味を向上させないとならない。となるとアレしかないか。
「ちょっと材料を買ってきますので」
「お!もう改善案が出たのか。どんな結果が出るのか実に楽しみだ!」
ノックスさんはとても興味津々のようだ。
材料には特別な物は何もないし手軽で安価に手に入るが……。ま、これぐらいは仕方がないか。早速商店街に購入に向かう。
「オイオイオイ、ユウキ。この大量の野菜くずは一体何なんだ?」
ノックスさんは溢れんばかりの野菜くずを見て驚いていた。
「出来る限りコストをかけず味を向上させる材料です」
「? 意味分かんないぞ。こんな野菜くずを大量に使うことがどうして味を向上させることになるんだ?」
ノックスさんもある程度料理の知識と技術を有している、そのためこれらがどうして必要なのかが分からないのだろう。通常であれば値の張る材料を使うと考えるのが当然だが僕にはここよりも遥かに進んだ世界の知識と技術を有している。
それらを使えばこの結論にたどり着くのだ。
手に入れてきた様々な野菜くずは皮種ヘタ根元など通常では食用にならないモノばかり、まずはそれらを丁寧に洗う。量が量なので少し時間がかかる。それらを鍋に入れてお酒と水を入れて煮込む。
グツグツ
中身が焦げないように慎重に煮込む。
ノックスさんや店の従業員も最初は意味不明な行動をする僕を訝しんでいたがリサギルド支部長直々に推薦した人物が無意味な行動を取るはずがないと判断し見守ることにしたようだ。
十分ほどで火を止める。これ以上煮るとアクが出てしまうからだ。
それを小皿にすくい皆に配る。早速味見だ。
『お!これは!!』
皆一様に驚く。
僕が作ったのは「べジブロス」と呼ばれるダシの元だ。野菜くずには元から栄養素が凝縮しており上手くやれば通常のスープを遥かに上回るダシの元が作れる。手順もそんなに難しくないにも関わらず効果は凄い。あらゆる料理に使用できコストも安いというまさに万能なダシだ。
早速それを元にしてミートソースを作る。さらに味を向上させるさためにシェクル(トマトに似た植物の実』を徹底的にすりつぶしたものを加えて焦げ付かないように煮込みその間にスパゲティ用の麺を茹でる。
麺が茹で上がりミートソースも程よく出来たので完成だ。早速全員で試食する。
「これは美味いっ!」
『すごい美味しい!』
べジブロスを使ったスパゲティはとても美味しくて皆喜んでいる。
「(なぁ、ユウキ)」
ノックスさんが神妙な顔で小声で話しかけてくる。
「(これ、どのぐらいの料理に応用できるんだ?)」
べジブロスの美味さを確認したノックスさんはどれほどの料理にこれを使用可能かを聞きたいみたいだ。
「(基本的に元ダシを使う料理なら何でも使えますよ)」
スパゲティに限らず煮込み料理だろうがスープ料理だろうが、使う相手は選ばないのがべジブロスの強みだ。
「(それは凄いな。これがあれば料理の味は格段に向上するぞ!この技術は早速冒険者ギルド料理部門に報告しておく)」
「(そうしてください)」
極めて汎用性があり美味くコストも殆どかからないこれがあれば料理の味は格段に向上することを確認したノックスさんはこの技術を冒険者ギルドに持ち込むことを決めたようだ。
さて、味は決定したので客の呼び込みを開始する。
お客が味のことを知らなければ来てはくれないので一件目と同じく手書きのチラシを百枚ほど作成して家に配る。対象となるのは年頃の男女だ。彼らは美味い店を常に探しているので知ればすぐにでもやって来てくれるからだ。
数日後。
『こっちに二人前!』
「はい、注文受け取りました!」
少し前までガラガラだった店には押し詰めるように客が入っていた、外にも列が出来ている。店員らは大忙しで注文を受け取り料理人は調理する。
こうなったらあとは問題ないだろう。
「これで三件目の依頼は終了です」
「ユウキ。お疲れさまでした」
リサギルド支部長に報告する。
「この『べジブロス』というのですか?すごいものですねぇ、使い道のない野菜くずが酒と水で丁寧に煮込むだけで万能な調味料に変わるとは」
リサさんは僕が考案したべジブロスに興味津々なようだ。すでに冒険者ギルド調理部門にその技術が持ち込まれ様々な料理に活用されていると聞く。
「さて、これで依頼の方はひとまず完了です。が」
次の話に移る。
「十日後に初級官吏の資格試験が始まります。ユウキは一次試験を免除されるので二次試験からです」
一次試験は広く浅く問題文を出すそうだが二次試験は深く狭く問題が出されるそうだ。かなりの数が一次で落ち二次でも落とされる。
「通常であれば試験勉強をさせるために時間の猶予を取るのが大半なのですが」
色々な問題が出てきてその対応にユウキを駆り出したことを謝られる。僕としては楽しくやらせてもらったので別に気にすることではないが。
「安心してください」
僕は「必ず合格する」明言する。
どのような内容なのかは不明だが僕には『もう一人の自分』の経験と知識を有している。それを使えば問題ない。
「そうですか」
リサさんはほっ、と。一安心したようだ。
二次試験が終わると最終試験の面接となるそうだ。それを通過すれば初級官吏となれる。冒険者ギルドからも毎年多数の人間が受けるそうだが合格率は決して高くない。
試験開始までは仕事のことは忘れて自由にしてよいと。ある程度余裕があるのでみんなの所で楽しくしようかな。
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