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第1章
166話 謎の女史からの依頼 Ⅰ
「あっちゃぁ~」
久しぶりに陶器製作所に戻ると散々たる状況になっていたのが理解できた。労働者が逃げ出したのだ。最低限の給金を出していたが意味の無い労働だとして反発して出ていったのだ。予想はしていたがこうもアッサリ逃げ出すとは根性が無いな。それでどうやって生活していく気だったのか。
彼らからすると農地開拓の方が魅力的だったのだろうな。残ったのはたった七人だけである。
「ユウキ、この状況でどのように対処するのですか?」
僕についてきたミーティアさんが当然の疑問を聞いてくる。いくら工房の主とはいえ下の労働者がいない場合なのにどうやって作品を生み出すか、そう聞いているのだ。
「ま、このぐらい予想はしてたからね」
「なるほど」
後から評判を聞いて戻って来ても入れないことにした。この程度で投げ出す精神ならば無用である。
とにかく、依頼書の内容を見る。
ええと、作品を複数点か。納品数は百個……だと!くわ~っ、あの女史さんは無理難題を言ってくるな。あの数点を作るのにどれだけ苦労したと思ってるんだ。
現場を知る人間からすると「拒否する」以外出てこない内容だがこれを通さないと初級官史本試験の合否が行方不明になってしまう。
期日もギリギリだから大急ぎで製作しないと。
まずは窯をチェックする、しばらく放置していたが問題はないようだ。これが無いとどうしようもないからな。小屋に行くと釉薬はそのまま残っていた。炭も十分すぎるほどに保管されている。
材料道具は揃っているのであれこれ考えても仕方がない、急ぎ作品を作る必要がある。
ろくろ台に粘土を置いて桶に入れた水に手を濡らしながら成型する。その様子をミーティアさんは慎重かつ厳正に後ろから見ていた。
「あの女史さんは何者なの?」
作業を進めつつもミーティアさんに依頼主のことをある程度聞いておくことにする。
「我が主のことですか?」
「そうそう」
何者であるか?ミーティアさんは「ふ~む」口に指を添えながら淡々と話し出す。
「冒険者ギルド古参の家の出で重鎮の一人ですね。我儘かつ尊大、独占欲が強く身勝手、その上誰に対しても命令口調と。問題になるような言動ばかりで」
大変に困る主だと。だが、それが許されているぐらいの大物であり、人物眼は冒険者ギルド随一であると同時に政治外交に長け各方面の顔は広い。実力主義の冒険者ギルド所属でありながらいくらかの特権が与えられており今回の初級官史試験に無理矢理介入したのは僕の正体を知りたかった一心だけだと。
「大変だねぇ」
「ええ、ですが。我が主の目に止まった者らは皆申し分のない結果を冒険者ギルドに叩きつけましたから」
人物の才能を見出す才は本物でありそれにより莫大な利権を手中に収めている、横暴ではあるが礼節をわきまえてるので彼女に物申す連中は皆無だそうだ。
「そんな人物に声を掛けられたことは光栄ですけど」
作品数があまりに多いことを指定する。
「現物を見たと思うけどあれがそう簡単に制作出来る物ではないことは念押しされているはず」
「分かっております。それでも、達成していただきたい」
「無理難題だと理解しておきながら、なんで?」
現実に実物を見れば不可能であることは容易に想像できるはず、どうしてこんな依頼を押し通そうとしているのか。
「冒険者ギルドは今人材不足なのです。主様が見込んだ人物は皆その働きを持って貢献しておりますが真ん中より下。下職を受けている職人らに満足な給金が支払われていない現実がございます」
どんな職場でも下の働きがあればこそ仕事が回る、そのため下で働く職人には最低賃金が設定されていた。
「最近世襲貴族共が冒険者ギルドの職人の引き抜きや知識技術の盗用を考え出しておりまして」
「要するに金積んで確保するってこと?」
「そうなりますね。ただ、要となる知識技術を有した人材はどうやっても引き抜けないようにしておりますから」
「奴らにとっては『金出すから売れ』ということか」
「ええ。まともに金を支払うなら、ですが」
引き抜いた職人らを薄給でこき使い要の技術が無いため完成品の出来も低い、典型的な例だ。
「我が主と世襲貴族らが『トウキ』の現物を確認しましたが互いの見解は完全に異なることになりました」
あの女史さんは「斬新かつ画期的な美術品である」そう評したが世襲貴族らは「ただ器に奇怪な色付けをした愚物」そう評したようだ。
だが、そんな評価を出しながら裏では製作者を探しているという。技術の独占はどこでもあるのだ。
「芸術家シシンの名前は芸術に関わる者の間で徐々に広まり出しております」
「ふぅん」
シシンという名は冒険者ギルドが僕の作品を見て付けた呼び名のようだ。本名がバレると不味いと言うことなのだろう。
「で、どうなのですか?」
ミーティアさんは期日までに作品が完成するのかどうか、念押しをしてくる。
「ま、ちょっと制作に荒は出るけど」
大丈夫だと伝えておく。
「改めて聞くけどさ」
作品数は多い方が良いのか?そう尋ねる。
「もちろんでございます」
彼女は断言する。
じゃ、陶器以外の作品も混ぜて量を増やそうか、そんな計算を立てた。
久しぶりに陶器製作所に戻ると散々たる状況になっていたのが理解できた。労働者が逃げ出したのだ。最低限の給金を出していたが意味の無い労働だとして反発して出ていったのだ。予想はしていたがこうもアッサリ逃げ出すとは根性が無いな。それでどうやって生活していく気だったのか。
彼らからすると農地開拓の方が魅力的だったのだろうな。残ったのはたった七人だけである。
「ユウキ、この状況でどのように対処するのですか?」
僕についてきたミーティアさんが当然の疑問を聞いてくる。いくら工房の主とはいえ下の労働者がいない場合なのにどうやって作品を生み出すか、そう聞いているのだ。
「ま、このぐらい予想はしてたからね」
「なるほど」
後から評判を聞いて戻って来ても入れないことにした。この程度で投げ出す精神ならば無用である。
とにかく、依頼書の内容を見る。
ええと、作品を複数点か。納品数は百個……だと!くわ~っ、あの女史さんは無理難題を言ってくるな。あの数点を作るのにどれだけ苦労したと思ってるんだ。
現場を知る人間からすると「拒否する」以外出てこない内容だがこれを通さないと初級官史本試験の合否が行方不明になってしまう。
期日もギリギリだから大急ぎで製作しないと。
まずは窯をチェックする、しばらく放置していたが問題はないようだ。これが無いとどうしようもないからな。小屋に行くと釉薬はそのまま残っていた。炭も十分すぎるほどに保管されている。
材料道具は揃っているのであれこれ考えても仕方がない、急ぎ作品を作る必要がある。
ろくろ台に粘土を置いて桶に入れた水に手を濡らしながら成型する。その様子をミーティアさんは慎重かつ厳正に後ろから見ていた。
「あの女史さんは何者なの?」
作業を進めつつもミーティアさんに依頼主のことをある程度聞いておくことにする。
「我が主のことですか?」
「そうそう」
何者であるか?ミーティアさんは「ふ~む」口に指を添えながら淡々と話し出す。
「冒険者ギルド古参の家の出で重鎮の一人ですね。我儘かつ尊大、独占欲が強く身勝手、その上誰に対しても命令口調と。問題になるような言動ばかりで」
大変に困る主だと。だが、それが許されているぐらいの大物であり、人物眼は冒険者ギルド随一であると同時に政治外交に長け各方面の顔は広い。実力主義の冒険者ギルド所属でありながらいくらかの特権が与えられており今回の初級官史試験に無理矢理介入したのは僕の正体を知りたかった一心だけだと。
「大変だねぇ」
「ええ、ですが。我が主の目に止まった者らは皆申し分のない結果を冒険者ギルドに叩きつけましたから」
人物の才能を見出す才は本物でありそれにより莫大な利権を手中に収めている、横暴ではあるが礼節をわきまえてるので彼女に物申す連中は皆無だそうだ。
「そんな人物に声を掛けられたことは光栄ですけど」
作品数があまりに多いことを指定する。
「現物を見たと思うけどあれがそう簡単に制作出来る物ではないことは念押しされているはず」
「分かっております。それでも、達成していただきたい」
「無理難題だと理解しておきながら、なんで?」
現実に実物を見れば不可能であることは容易に想像できるはず、どうしてこんな依頼を押し通そうとしているのか。
「冒険者ギルドは今人材不足なのです。主様が見込んだ人物は皆その働きを持って貢献しておりますが真ん中より下。下職を受けている職人らに満足な給金が支払われていない現実がございます」
どんな職場でも下の働きがあればこそ仕事が回る、そのため下で働く職人には最低賃金が設定されていた。
「最近世襲貴族共が冒険者ギルドの職人の引き抜きや知識技術の盗用を考え出しておりまして」
「要するに金積んで確保するってこと?」
「そうなりますね。ただ、要となる知識技術を有した人材はどうやっても引き抜けないようにしておりますから」
「奴らにとっては『金出すから売れ』ということか」
「ええ。まともに金を支払うなら、ですが」
引き抜いた職人らを薄給でこき使い要の技術が無いため完成品の出来も低い、典型的な例だ。
「我が主と世襲貴族らが『トウキ』の現物を確認しましたが互いの見解は完全に異なることになりました」
あの女史さんは「斬新かつ画期的な美術品である」そう評したが世襲貴族らは「ただ器に奇怪な色付けをした愚物」そう評したようだ。
だが、そんな評価を出しながら裏では製作者を探しているという。技術の独占はどこでもあるのだ。
「芸術家シシンの名前は芸術に関わる者の間で徐々に広まり出しております」
「ふぅん」
シシンという名は冒険者ギルドが僕の作品を見て付けた呼び名のようだ。本名がバレると不味いと言うことなのだろう。
「で、どうなのですか?」
ミーティアさんは期日までに作品が完成するのかどうか、念押しをしてくる。
「ま、ちょっと制作に荒は出るけど」
大丈夫だと伝えておく。
「改めて聞くけどさ」
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「もちろんでございます」
彼女は断言する。
じゃ、陶器以外の作品も混ぜて量を増やそうか、そんな計算を立てた。
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