解体の勇者の成り上がり冒険譚

無謀突撃娘

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第1章

171話 芸術家シシンのお披露目

冒険者ギルドの職業貴族アブラムガイス伯爵夫人のスフィアが主催する芸術品展が屋敷の庭で行われた。どれもお抱えの職人らに準備させた品々ばかりであるが。その中でもひときわ大きなスペースを取っていたのは。

「ほう、これはまた不思議な」「この器はどうなっているのだ」「綺麗」

作品展示場には自分の作品であることを主張するように工房の主や職人本人が出ていることが多い。シシンである僕も出ている。

だが、

「(こ~んなヒラヒラな服を着て面前に出るのは…、しかも化粧を施して性別を偽るだなんて)」

そこにいたのはどう見ても女性だった。

顔立ちが元から中性的でかつ体のラインが胸以外完全に女性サイズということもありスフィアさんとそのメイド達によって服を着替えさせられて化粧を施されたのだ。

多勢に無勢であり諦めて服を着替えて化粧をしたのだがその出来があまり良くなく少しケバい感じが出てしまった。なので僕自身の手で化粧をしたのだ。

『えらく上手やな。こっちの方も経験あるん?』

「ええ」

『ほんならより女性的に見えるようにお願いするわ。男より女の方が評判の広がり方が速いからなぁ』

「仕方なくですからね」

そうして、出ることになった。

化粧術もプロに教えられたことがあるので道具も揃っている。のどぼとけもほとんど出てないし声色もちょっと変えればいいだけだ。だけなのだがメイド達から「美しすぎます!」声を揃えられて少し男のプライドが傷ついた。

外見を整えた後に外に出て作品が展示されるのを眺めた後、椅子に座っている。

ここで、シシンの大まかなプロフィールが表示されるようになる。

シシンは極東の出身でとある芸術家の一族に生まれた、その芸術を広めるべく西に旅立ったがその旅の最中の露店販売でスフィア伯爵夫人の目に止まる。彼女に連れてこられた場所で新たな芸術『トウキ』の発明をする。その伝承の最中に両親が流行り病にかかり両親が没する。その伝承を受けた時まだシシンは幼く成人するまで養父母であるアルシャルク家の保護の元で育つ。

そのシシンが成人後、スフィア伯爵夫人がその才能を認め養女とした。こんな設定だ。

アルシャルク家は実際に存在する家でありその家人も本物だ。生まれながらに黒い髪と瞳が奇異に見えるために人目につかないように育てられ小さい時からお抱えの工房を出入りして才能を磨いたという内容。どこかにありそうな設定だった。

アルシャルク家は代々そうした方面への支援斡旋を行う一族だそうで設定上問題はなかったが。

「これ、どうにかなりませんか?」

女の姿となった僕は違和感を覚えた。

服はヒラヒラでまるでダンサーのようだ。色は地味目だが目立つところは目立つ。

「我慢してや。アルシャルク家の家族は表に出てこん人やから誰かを匿っていたとしても不思議ではないし」

「それはいいのですが」

性別を偽るのはどうかと思うのだが。

「あんさんも知っとるやろ。世襲貴族共の子息子女がとんでもなく世間知らずで無能なのは」

「ええ」

あの馬鹿勇者と同類かそれ以上ともいえる、その手の付き合いは断ってきたが中には物好きもいた。そういうお誘いも少なからずあるのだ。

「うちらは無視してるんやけど子供は都合よく生まれてくれへん」

男が多く生まれたり女しかいなかったり、一人っ子の場合もあるそうだ。

「アルシャルク家は地味ながらもよう働いてくれる良い人なんやけどなぁ」

子供が女の子一人しか生まれなかったのでお家の相続で揉め事が起きているそうだ。女の子しかいないので当然婿を入れなければならないのだが良くない連中ばかりが来ると。

ろくでなしの世襲貴族共が騒いで「婿に入れろ」ゴリ押ししているわけだ

「うちは最初ユウキを婿に入れようとも考えたんやけど」

その本人が外で修行をしているので会わせるタイミングを調整しているわけだ。

「その女の子を嫁にしろと?」

「それが最良やな。一応メーヴィル流ちゅう錬金術師の流派で修行してるんよ」

年は十四歳で錬金術師だそうだ。錬金術師か、そういえばそうした方面の人材はいないので顔つなぎしておくのも悪くはないか。

「帰ってくるのにもうしばらくかかるやろうから盾になってほしいんよ」

「はぁ…」

ま~た女の子が増えるのか、仲間と揉めないといいけど。

とはいえ、今は今でやるべき仕事がある。

「不思議な光沢ですねぇ、これをどうやって?」

僕はあくまでも椅子に座り通訳を通して話を受け付けるようにしていた。声色も変えられるが分かる人には分かってしまうのでなるべく声を出さないようにする。生まれつき喉を少し病んでいるとして対応してくれる人間を通して受け答えをする。

「この器も不思議だがこの絵もすごいな。まだまだ荒っぽい感じがするが吸い込まれそうだ」

陶器だけでなく水彩画の方にも注目が行く。

「うむ、尖った部分は無いがその分だけ繊細なタッチをしておる」

招かれた人たちの多くが作品を褒めていると。

「ふんっ!こんなのはゴテゴテに塗っただけであり絵の方も綺麗なだけだ!芸術というのは独特だからこそ味が出るというものだ!」

わずかながら反発する人もいる。

「(それなら、お前に同じことが出来るのか?)」

僕は心の中で苦笑する。

こいつらの言う個性とは自分勝手な価値観の中だけで構想されたものだろう。なら、最初にその先入観を打ち壊す必要がある。

僕は通訳に指示を出す。

『な、なんだぁ!?』

用意されたのは熱湯だ。それをこのトウキにぶちまけると伝える。通常の作品ではこんな熱湯をかけられたが最後元の形を留めないが。

バシャァ~

熱湯がトウキの器に容赦なくかけられるが、

『すごい!こんな熱湯をかけられても原形を留めているし色も滲んでないぞ!!』

周囲からどよめきの声が上がる。

陶器は製作の関係で釉薬が熱と化学反応しガラス状となる。そのため、ある程度までなら熱水に耐えられるのだ。さすがに衝撃には弱いが。

驚きの表情を浮かべる人大多数、その一部に顔を顰める人達もいた。

もし、一部の人間が言うようにゴテゴテに塗っただけならば非難しようがあるが、それが出来ないとなればどうしようもないわけだ

こんなモノなら贋作など簡単に作れる、そう考えている連中だった。こんな連中もいるんだよねぇ。

デモンストレーションとして行っておいてよかった。そうしないと色を付けただけの贋作を生み出されたかもしれない。
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