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第1章
173話 いよいよ本題
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「いやぁ、さすがシシンやわ。えろう助かっだで」
スフィアは食事会が終わった後僕を個室に呼び出した、とても上機嫌のようだ。
「出された料理を最初見たときは得体がしれんかったけど最高の美味やな。あんなもんはうちでも見たことも聞いたことも食したこともなかったで」
「お褒め頂きありがとうございます」
「二品目までは何とか理解できたんやけど三品目のあれがどうやっても理解できへんわ」
どんな仕掛けを施したかと聞かれる。あれは単純に包丁の技量によるものだと説明した。
「包丁の技量だけであんなものが可能なんか?」
「非常に難しいのですが」
あれは包丁技術を極めており、なおかつ新鮮な魚が手に入らないと不可能だ。
「他の料理人も相当な腕前やったんやけどシシンの料理のインパクトが強すぎて陰に隠れてしもうたわ」
ご自慢の料理人が追いやられたことが少し不満なのだろう。
「ま、それはそれでええ経験や。そんで」
ここからがユウキに依頼する本題だと。前置きされる。
「ここより北の方、アットナイド地方知っとるかや」
「地図上では確認してますね」
たしか、情報では複数の山々が連なる場所で交通の要所でありながら防衛上非常に重要な場所だ。塩の製造が盛んでそれにより古来から塩製造で栄えている地方だ。
「その場所はうちのご先祖様から引き継いでる課題があるんや」
「課題?」
「悪い意味での課題や」
「?」
何か話が嫌な方向に向かい始めた。
「アットナイド地方からここに向かう商街道の途中には山々があるんやけどそこに山賊が住み着いてるんよ」
「なぜ山賊が?」
「あの辺りはうちらと世襲貴族らが管理してたんやけど昔に不意を突かれて山賊らに占領されたんや。奴らは通行料と称して金を巻き上げ勢力を強くしていったんや」
「でも、通常であれば冒険者ギルドなり貴族なりが討伐に向かうはずですが」
「通常ならそうやけどあそこは堅固な作りで正面からでは落とすのがほぼ無理なんや。うちらが対策を講じている最中に馬鹿な世襲貴族共が欲を出したんよ」
世襲貴族共は彼らに秘密裏に接触をしたが山賊どもが言うことを聞くはずがない。そのため表向き懐柔ということで物資を援助した。ところが状況が改善されないことをいいことに山賊と裏で繋がり分け前を貰うようになったそうだ。
それが何世代も続き次第に山賊の戦力が増強されてしまい手の打ちようがなくなったと、スフィアさんは説明した。
「そんな馬鹿なことを平然とするのですか?」
「するんや。もうあそこ一帯は山賊の根城になってしまい通行料払わんと殺されてしまう無法地帯になってしもうた。うちらの不手際なんやけど冒険者ギルドに戦力を貸してもらう話も出たんやけど被害が甚大になりすぎるから棚上げになってしもうたんや」
モンスターなどの討伐や商人らの護衛に忙しい冒険者ギルドには人手を割ける余裕がないわけだ。そりゃ棚上げにもなるか。
「あそこの山賊らを討伐せんと無駄に金が減っていくんや。ここまで聞いたんなら話分かるやろ?」
「う~ん」
大義名分もあるし引き受けるのは構わないのだが。
「情報は先渡してくれますよね」
「もちろんや。人手も可能な限り貸すし報酬は時価や」
スフィアさんは本当に困っているようなので引き受けることにした。ちょうどガオムやエルヴィンらの実戦が必要だったし。
「戦力はどれほど貸してもらえますか」
「百五十人がギリギリというところやな」
「相手の山賊は」
「最低でも千人はおるなぁ」
戦力差六倍以上かか、こりゃかなり僕が暴れる必要があるな。
「その依頼お引き受けします」
「ほんまか!さすがユウキや!」
「ただし」
いくつかの約束を守ってもらう必要がある。
「敵の山賊どもは一掃しますが身柄はどうなさいますか?」
「皆殺しでかまわへん、と。言いたいところやけど色々調べんといかんことがあるから可能な限り捕虜にとってきてや」
「山賊どもを追い出した後の防備はどうなさいますか?」
「もちろん、うちらと繋がりのある職業貴族らに命じて兵を出してもらい二度と取られんようにするわ」
「では最後に聞きますが。山賊どもの中に貴族家の家臣らなどが居た場合は?」
「あそこは山賊どもの根城で表向き周辺の貴族家は討伐命令を出されてるんや。その山賊どもの中になぜ貴族家の家臣がいるんやということや。知らずに殺しても問題ないし生かしておいても面倒や。何か言うても無視してかまへん」
「質問は終わりです」
冒険者ギルドに指名依頼を出してそれを引き受けるという手順を守ればいいだけだ。それでおしまい。敵には不幸だが因果応報だ、どのぐらい抵抗するのか分からないが負ける気はない。
「それでは準備があるので仲間らの元に戻ります」
「よろしくお願いするわ。ご武運を」
『エッ?伯爵夫人からの指名依頼!?』
仲間らを集めて事情を説明する。みんな驚いているようだ。
「暫く留守にしていた上にこんな依頼を引き受けてきて申し訳ないけど」
「あ、いえ。それは気になさることではないのですが。伯爵夫人様からの指名依頼とはとんでもないですね」
リナらは感心してるのか呆れているのか、微妙な表情をしていた。
「ガオム、急ぎで悪いけど皆の装備や道具を整えておいて」
「はっ!」
「他のみんなはこのまま仕事を続けておいて」
『分かりました』
「リフィーア、エリーゼ達にも戦力として参加してもらいたい。人殺しは嫌だろうけど」
「いいえっ。ユウキはこれから上に向かうのです。私達は貴方を信じ最後までついていく所存です」
「そうですね。ユウキのおかげで格段に良い暮らしが出来るんだから将来妻となるには行動で示す必要があります」
『うんっ』
皆も賛同してくれている。
そうと決まれば準備を整えないと、回復用の傷薬やポーションを始め装備道具を大量に用意しておく必要がある。
山賊討伐の日までの時間、大急ぎで準備を整える僕と皆だった。
スフィアは食事会が終わった後僕を個室に呼び出した、とても上機嫌のようだ。
「出された料理を最初見たときは得体がしれんかったけど最高の美味やな。あんなもんはうちでも見たことも聞いたことも食したこともなかったで」
「お褒め頂きありがとうございます」
「二品目までは何とか理解できたんやけど三品目のあれがどうやっても理解できへんわ」
どんな仕掛けを施したかと聞かれる。あれは単純に包丁の技量によるものだと説明した。
「包丁の技量だけであんなものが可能なんか?」
「非常に難しいのですが」
あれは包丁技術を極めており、なおかつ新鮮な魚が手に入らないと不可能だ。
「他の料理人も相当な腕前やったんやけどシシンの料理のインパクトが強すぎて陰に隠れてしもうたわ」
ご自慢の料理人が追いやられたことが少し不満なのだろう。
「ま、それはそれでええ経験や。そんで」
ここからがユウキに依頼する本題だと。前置きされる。
「ここより北の方、アットナイド地方知っとるかや」
「地図上では確認してますね」
たしか、情報では複数の山々が連なる場所で交通の要所でありながら防衛上非常に重要な場所だ。塩の製造が盛んでそれにより古来から塩製造で栄えている地方だ。
「その場所はうちのご先祖様から引き継いでる課題があるんや」
「課題?」
「悪い意味での課題や」
「?」
何か話が嫌な方向に向かい始めた。
「アットナイド地方からここに向かう商街道の途中には山々があるんやけどそこに山賊が住み着いてるんよ」
「なぜ山賊が?」
「あの辺りはうちらと世襲貴族らが管理してたんやけど昔に不意を突かれて山賊らに占領されたんや。奴らは通行料と称して金を巻き上げ勢力を強くしていったんや」
「でも、通常であれば冒険者ギルドなり貴族なりが討伐に向かうはずですが」
「通常ならそうやけどあそこは堅固な作りで正面からでは落とすのがほぼ無理なんや。うちらが対策を講じている最中に馬鹿な世襲貴族共が欲を出したんよ」
世襲貴族共は彼らに秘密裏に接触をしたが山賊どもが言うことを聞くはずがない。そのため表向き懐柔ということで物資を援助した。ところが状況が改善されないことをいいことに山賊と裏で繋がり分け前を貰うようになったそうだ。
それが何世代も続き次第に山賊の戦力が増強されてしまい手の打ちようがなくなったと、スフィアさんは説明した。
「そんな馬鹿なことを平然とするのですか?」
「するんや。もうあそこ一帯は山賊の根城になってしまい通行料払わんと殺されてしまう無法地帯になってしもうた。うちらの不手際なんやけど冒険者ギルドに戦力を貸してもらう話も出たんやけど被害が甚大になりすぎるから棚上げになってしもうたんや」
モンスターなどの討伐や商人らの護衛に忙しい冒険者ギルドには人手を割ける余裕がないわけだ。そりゃ棚上げにもなるか。
「あそこの山賊らを討伐せんと無駄に金が減っていくんや。ここまで聞いたんなら話分かるやろ?」
「う~ん」
大義名分もあるし引き受けるのは構わないのだが。
「情報は先渡してくれますよね」
「もちろんや。人手も可能な限り貸すし報酬は時価や」
スフィアさんは本当に困っているようなので引き受けることにした。ちょうどガオムやエルヴィンらの実戦が必要だったし。
「戦力はどれほど貸してもらえますか」
「百五十人がギリギリというところやな」
「相手の山賊は」
「最低でも千人はおるなぁ」
戦力差六倍以上かか、こりゃかなり僕が暴れる必要があるな。
「その依頼お引き受けします」
「ほんまか!さすがユウキや!」
「ただし」
いくつかの約束を守ってもらう必要がある。
「敵の山賊どもは一掃しますが身柄はどうなさいますか?」
「皆殺しでかまわへん、と。言いたいところやけど色々調べんといかんことがあるから可能な限り捕虜にとってきてや」
「山賊どもを追い出した後の防備はどうなさいますか?」
「もちろん、うちらと繋がりのある職業貴族らに命じて兵を出してもらい二度と取られんようにするわ」
「では最後に聞きますが。山賊どもの中に貴族家の家臣らなどが居た場合は?」
「あそこは山賊どもの根城で表向き周辺の貴族家は討伐命令を出されてるんや。その山賊どもの中になぜ貴族家の家臣がいるんやということや。知らずに殺しても問題ないし生かしておいても面倒や。何か言うても無視してかまへん」
「質問は終わりです」
冒険者ギルドに指名依頼を出してそれを引き受けるという手順を守ればいいだけだ。それでおしまい。敵には不幸だが因果応報だ、どのぐらい抵抗するのか分からないが負ける気はない。
「それでは準備があるので仲間らの元に戻ります」
「よろしくお願いするわ。ご武運を」
『エッ?伯爵夫人からの指名依頼!?』
仲間らを集めて事情を説明する。みんな驚いているようだ。
「暫く留守にしていた上にこんな依頼を引き受けてきて申し訳ないけど」
「あ、いえ。それは気になさることではないのですが。伯爵夫人様からの指名依頼とはとんでもないですね」
リナらは感心してるのか呆れているのか、微妙な表情をしていた。
「ガオム、急ぎで悪いけど皆の装備や道具を整えておいて」
「はっ!」
「他のみんなはこのまま仕事を続けておいて」
『分かりました』
「リフィーア、エリーゼ達にも戦力として参加してもらいたい。人殺しは嫌だろうけど」
「いいえっ。ユウキはこれから上に向かうのです。私達は貴方を信じ最後までついていく所存です」
「そうですね。ユウキのおかげで格段に良い暮らしが出来るんだから将来妻となるには行動で示す必要があります」
『うんっ』
皆も賛同してくれている。
そうと決まれば準備を整えないと、回復用の傷薬やポーションを始め装備道具を大量に用意しておく必要がある。
山賊討伐の日までの時間、大急ぎで準備を整える僕と皆だった。
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