解体の勇者の成り上がり冒険譚

無謀突撃娘

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第1章

183話 有頂天な馬鹿勇者 Ⅰ

『はっはっは!どうだ、この大金は、これでこそ勇者である!もう二度と金不足に悩まなくていいぞ!!』

ジークムントら金が入った大きな革袋を見て高笑いを上げる。彼らはユウキに家族を殺された貴族の妻や陪臣らから「罪状に見合う金を渡せ」そう脅して金を巻き上げ続けた。

余りに無体で苛烈な取り立てに屈し涙を流しながら金を差し出した者もいれば耐えられず教会に逃げ込んだ者らもいたほどだ。

彼らの依頼主は悪どく金を貸していた世襲貴族らだった、金を貸してた者らが皆死んだので手段を択ばず回収しろと命じたのだ。普通に考えれば一家の主が死んでいる状態であるのだから借金の催促などあまりやるものではないはずだが勇者らは嬉々としてその依頼を受けた。

そして、問答無用で借金を取り立てたのだ。

「せっかくこれだけの大金だ。我ら勇者らが上手く使わねばな」

ジークムントらはご機嫌のようだがそれに対して不満の顔色を秘かに浮かべている者らもいた。ベルファストらである。

彼らは同じ勇者として自分らにも同等の金が入ってくると考えてたいのだがジークムントは「実力も無いくせに甘えるな」などと断言されさしたる金を得られなかったのだ。

『(クソっ!我らとて勇者なのだ、それなのにこの待遇の差。許せん!)』

ベルファストもベルライトもカノンも怒りを感じていた。同じ仲間であったはずのファラとメルはいつの間にかどこかに消えてしまい行方知れずになってしまったのだ。

そのため、ジークムントらと合流したのだが奴らは自分ら主導で物事を進めていた、人数で劣っていたベルファストらには口を挟む権利が無いのだ。その分だけ分け前も少なくなる。

「クソっ!クソクソクソ、ジークムントらめ。先んじて勇者になった我らを見下しおって!」

ベルファストは怒りの声を撒き散らしながら食堂で食事をとる。麦飯に野菜スープ、安い酒だが以前よりはマシになっていたが、それが逆に怒りを膨れ上がらせる。ユウキといた頃にはもっといい食事を毎日食っていたので味が合わないのだ。

「こんな食事で英気が養えるか!」

「とはいうがな。これが今の限界だ」

「そうねぇ」

三人共に不満があるが所持金は無限ではない。ありつけるだけマシであろう。

「ええいっ!ファラとメルはいつの間にか逃げ出してしまいジークムントらの派閥に主導権を握られ活躍の場がないではないか!」

怒りと不満をぶちまけるベルファスト。ユウキと別れてからというもの上手くいかない事ばかりが続く。幸運をもたらすサイコロを手放したが故のことだった。

「何か奴らを見返す美味い話は無いのか?このままでは勇者とはいえんぞ」

「そのことなのだがな……」

ベルライトから話を聞くと、

「なにぃ?ユウキが職業貴族として男爵位だと?その上重要な土地を任されているというのか!」

「噂で聞いた限りだが、そこに巣食っていた大山賊団を討伐してしまったらしい」

ベルファストは思わず笑みがこぼれた。

こんな好条件の話を逃すわけにはならない。

「(そうだ、ユウキと一緒にいたのならばその成果は我らの物だったはず。ここは急ぎ話を付けることにしよう)」

俺は笑いが堪えられなかった。

ユウキが手に入れたものを全て俺のものにして貴族となる、それも大貴族に!そんな野望が頭の中を埋め尽くす。だが、彼はまだユウキが手に入れたものがいかに危険であるかを知らなかった。

交易の要衝にして大規模な宝石鉱山を有するようになったアットナイド地方を狙う世襲貴族らは今後無数に出てくるだろう、それに対して守りに割かれている人数はいまだ少ない。その気になれば制圧行為に走る輩は無数にいる。それに対抗するには機先を制し外交で抑え込める文官らである。

単純に力で抑え込んだだけでは山賊らと変わりがない、いつまた現れるかもしれない敵勢力に対応する決断力や判断力も必要なのだ。

何でもかんでも自分らの力ならやれると信じているベルファストと他者の力を借り上手く使い争いを避けるユウキとの最大の違いである。

ベルファストはいまだにユウキを見下していた、その考えこそが間違いだと気づかないままに。

早速三人はユウキがいるアットナイド地方に向かった。

「ほほぅ、開発はまだされてないがいい土地ではないか」

草原を進みながら土地の状態を確認する三人。ここを手に入れて開発できればまず間違いなく強い影響力を持てるだろう、そう確信する。しばらく道なりに進むと木で作られた掘っ立て小屋が見えてきた。

『ユウキ!ユウキはいるか!出てこい!!』

三人は揃って声高に叫ぶ。

それを聞いて周りの人間らが慌てて近づいてくる。もちろん、武器を装備していた。

「お前たちは誰だ?」

武装した兵士らが警戒の表情をして質問してくる。

「我らはユウキより上位な者だ。我が家臣が大きな功を上げたとのことで確認に来たのだ」

「我が家臣が」という言葉に怪訝な顔をする周囲、何をそんなに睨みつけているのだ?

「皆何の騒ぎですか?」

建物から一人の女が現れた。長髪でスタイルのいい女だ。

「お前は?」

「私は職業貴族アブラムガイス伯爵家の臣の一人でスフィア夫人に仕えているミーティア・ランパードと言います」

何という好都合な相手だ、まさか伯爵家まで来ているとは、ますますこの土地が欲しくなった。

「ユウキはここにいるのか」

「いますが。あなたたちは何者なのですか?」

「我はベルファスト・マルクス・フォン・レパイアス!恐れ多くも子爵家の男子であるぞ」

他の二人も名乗りを上げる。

「……で、その世襲貴族の子弟子女が何用でここに?」

ミーティアという女はこちらを確認するかのような視線を向けてくる。失礼な奴だ。

「ユウキと話がしたい。通せ。我らは勇者である。大至急話すべきことがある」

「……なるほど」

しばし待てと。そうして女は建物の中に入っていく。茶ぐらい出せ、そう言いたかった。





私は建物の中に入るとすぐさま来た相手の名前を伝える

「えっ?ベルファストらがここに来た?」

「はい、噂通り失礼な奴らですね」

「ま、ここに来た理由の大体は予想できるけど」

「この土地を明け渡せ、ですか?」

それ以外理由は無いでしょうと。ユウキ様は気楽に答えた。

「世の理不尽不条理ここに極まれり、か。欲張って抱えきれない荷物背負っても死ぬだけなのに」

「どういたしましょうか」

私は即刻追い出すべきだと進言する。まだここの防備は薄く無用な連中に関わっている暇はない。ましてや悪い噂しか聞かない勇者などに関わるだけ無駄だと。

「来ているのは三人だけ、なんだよね」

「はい」

「ちょうどいいや。言いたいことは多分にあるから」

中に通せと。私は嫌な予感がしたがそれは外で待っている勇者ではなくユウキ様の方から感じる。まるでユウキ様が何倍に膨れ上がり建物を内側から溢れ出しそうなほどに。

威圧感というものであろうか、とにかく私は勇者らを中に通すことにした。
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