133 / 154
第1章
187話 勇者再び、そして
ベルライトとカノンが仲間ベルファストを自分らの手で消した事実を知らずユウキはアットナイド地方の統治と管理に追われていた。山賊によって分断されていた交易路の整備や原石の採掘など仕事は山ほどある。
新たに来たシャルティエらに命じて交易再開の連絡を取る。
「初めまして。新たに男爵家の臣の一人となったシャルティエと申しますです」
「これはこれは、ご丁寧にどうも」
シャルティエ・ビーグルはユウキに命じられ北部の湾岸都市にまで連絡を伝えに行かされていた。もちろん、重要物資である塩などの交易を再開させるためだ。
「我が主君は領地内を通過する商人らから通行税は一切取らないと申しておりますです。また、警備費用などの支払いも一切する必要が無いと申してますです」
「ほう?それではいったい何から金を取るのですか」
「ユウキ様は領地内を通る商人らの滞在費、具体的には水や食料、宿などの手配、馬車を引かせる馬牛などの飼い葉などは領地内で補給する分だけ取ると申しておりますです。具体的な金額はこちらです」
シャルティエはユウキから預かった書類を町の顔役らに提示する。その内容をしばし確認したのち、
「ふむぅ、内容は良く書かれておりますし正式な書記官の印も押されている。古来の進法を変えるというのは驚きですがあそこの重要性を認知しておれば当然でしょうな。数字を見る限りでは悪法ではないと判断いたします」
「では」
「よろしい。商人らに交易を再開することを伝えましょう」
そうして、アットナイド地方は再び商人らの通行が再開されることになった。
「これが報告です」
「どうも」
僕は返事が書かれた返書の内容を見ていた。
両替屋の独占や古来の進法を変えたことについては商業の重要拠点ということで納得されたようだ。今現在では出稼ぎ労働者四百人ほどが加わり原石を採掘している。
「ユウキ様」
「なんだい」
「この領地はどのように発展させるのですか?」
シャルティエが未来のことを聞いてきた。
「当面は原石の掘り出しのみだね。宿屋を始めとして建物も多く建てないとならないし商業道路も敷設しないとならないし、う~ん。とにかく、資金がないと何もならないよ」
「しかし、ユウキ様はジーグルト家からの援助を受けられる立場です。それを使えばよろしいのではありませんか」
「あっちはまだ貴金属精錬で忙しいからなるべくこちらには来ないようにしないと」
そうして、色々な仕事を処理している最中に。
「ユウキ様」
「なぁに?」
「勇者と名乗る連中がまた来ました」
「ふぅん、それで」
どれぐらいで来たかと。
数は十人弱、その中には前に来たベルライトとカノンもいるそうだ。ったく、あれだけ忠告したのに無意味なのか。もうこれ以上進めば取り返しのつかない状況だというのにあいつらは…。
もう口であれこれ言うだけ無意味だと判断した。
『我らは正統なる勇者であり高潔な一族の出である!わが名はジークムント。今すぐにこの領地を統括することを宣言する!』
気が狂ったか?それとも錯乱か?はたまたそれが正道だと勘違いしているのか?まともではないことを声高に叫ぶ連中、それを見た周囲は、
「呆れるねぇ、国から来た連中の横暴は」「現実を知らぬ愚か者はそちらだ」「詭弁を言う詐欺師だな」
眉を潜めて酷評する。
そして、断言した。「ユウキとは何もかもが違う」と。妄想でもありえないことをほざく子供以下の相手なのだと。ユウキはそれを見ながら周りを押さえる。しかし、相手の勇者はそんなユウキの気遣いなど何も感じていない。すべてが自分らの自由になると信じ切っていた。
「ジークムントさん、だっけ」
「様だ!ジークムント様と呼べ!」
これからお前の主になる相手に敬語を使えと。僕はその返事を無視して、
「ベルファストはどうしたの?」
先に追い払った元仲間のことを聞くことにした。
「あやつなら尻尾を巻いて逃げたぞ。いかんなぁ、勇者が背を見せて逃げるとは」
悪しき笑みを見て僕は疑問を浮かべた。
「追い出したの?」
「言ったであろう。”逃げた”と」
その言葉の念押しに僕は不安を確信に変える。
「(まさか、殺したのか?先に秘薬の効果に目覚めたけどまだあれは現状効果未知数の薬、もしも命の危機にさらされたときにどのような効果が出るのか…。これはちょっと悪手かも。こうなるならば先に確保しておくべきだった)」
僕はこの後に起こるであろう惨劇に頭を痛めた。
「そう、そういうことなんだね」
こうなった以上取り返しは出来ない。可能な限り先に始末しないと。
「(ユウキ、聞こえるか?)」
もう一人の僕が内側から言葉を伝える。
「(大体理由は分かっているけど)」
「(人間種とも幻想種とも違う存在が急速にこちらに近づいている。どうやら、ここに来ている勇者らを殺すためだ。心の中には悪意しかない)」
最悪の事態となってしまったようだ。
もはやベルファストは”この世のもの””ではなくなってしまった。
『どうした?何を悩んでいる!さっさとこの領地を明け渡せ!!』
『ユウキ様?何を考えているのですか、こいつらは敵です!今すぐに追い払わないと!』
問題の気配は一直線にこちらに向かっている。この状況では被害無しで治めることはできない。自分らが招いた災厄だ、思う存分戦ってもらうことにしよう。
「…考えて、あげられなくも無い、かな?」
「「!?」」
その言葉を聞いて勇者らは歓喜し味方は失望する。
「では、早速に!」
そこで、僕は停止させる。
「お前たちは勇者だよね?」
改めて、確認を取る。
「そうだ。それがどうかしたのか?」
「もうすぐこの領地に災いがやってくる」
それの討伐が出来たら譲ると。そのような条件を出す。
「ハハハハッ、何という気楽な仕事だ!その程度など我らにかかれば造作もないことだ!」
『言質取ったからね」
そうして、その災いを待つことにした。
「ユウキ様、これはいったいどういうことですか!あれだけ苦労して解放したこの土地をこのような条件で!」
「そうです。あのような愚か者の何が問題だというのですか!あのような輩など力づくで黙らせればいいことです!」
ミーティアとシャルティエが猛抗議してくる。確かに、普通であれば馬鹿馬鹿しいにもほどがあるのだが。
「ちょっとだけ待ってて。怖い思いをするかもしれないけど」
「「?」」
ここを目指してやってくる災い、それをどうにか排除しないと。
しばらくすると、
『な、なんだ?あれは?』
どす黒い気配を周囲に撒き散らしながら「元ベルファスト」だったものが現れた。
新たに来たシャルティエらに命じて交易再開の連絡を取る。
「初めまして。新たに男爵家の臣の一人となったシャルティエと申しますです」
「これはこれは、ご丁寧にどうも」
シャルティエ・ビーグルはユウキに命じられ北部の湾岸都市にまで連絡を伝えに行かされていた。もちろん、重要物資である塩などの交易を再開させるためだ。
「我が主君は領地内を通過する商人らから通行税は一切取らないと申しておりますです。また、警備費用などの支払いも一切する必要が無いと申してますです」
「ほう?それではいったい何から金を取るのですか」
「ユウキ様は領地内を通る商人らの滞在費、具体的には水や食料、宿などの手配、馬車を引かせる馬牛などの飼い葉などは領地内で補給する分だけ取ると申しておりますです。具体的な金額はこちらです」
シャルティエはユウキから預かった書類を町の顔役らに提示する。その内容をしばし確認したのち、
「ふむぅ、内容は良く書かれておりますし正式な書記官の印も押されている。古来の進法を変えるというのは驚きですがあそこの重要性を認知しておれば当然でしょうな。数字を見る限りでは悪法ではないと判断いたします」
「では」
「よろしい。商人らに交易を再開することを伝えましょう」
そうして、アットナイド地方は再び商人らの通行が再開されることになった。
「これが報告です」
「どうも」
僕は返事が書かれた返書の内容を見ていた。
両替屋の独占や古来の進法を変えたことについては商業の重要拠点ということで納得されたようだ。今現在では出稼ぎ労働者四百人ほどが加わり原石を採掘している。
「ユウキ様」
「なんだい」
「この領地はどのように発展させるのですか?」
シャルティエが未来のことを聞いてきた。
「当面は原石の掘り出しのみだね。宿屋を始めとして建物も多く建てないとならないし商業道路も敷設しないとならないし、う~ん。とにかく、資金がないと何もならないよ」
「しかし、ユウキ様はジーグルト家からの援助を受けられる立場です。それを使えばよろしいのではありませんか」
「あっちはまだ貴金属精錬で忙しいからなるべくこちらには来ないようにしないと」
そうして、色々な仕事を処理している最中に。
「ユウキ様」
「なぁに?」
「勇者と名乗る連中がまた来ました」
「ふぅん、それで」
どれぐらいで来たかと。
数は十人弱、その中には前に来たベルライトとカノンもいるそうだ。ったく、あれだけ忠告したのに無意味なのか。もうこれ以上進めば取り返しのつかない状況だというのにあいつらは…。
もう口であれこれ言うだけ無意味だと判断した。
『我らは正統なる勇者であり高潔な一族の出である!わが名はジークムント。今すぐにこの領地を統括することを宣言する!』
気が狂ったか?それとも錯乱か?はたまたそれが正道だと勘違いしているのか?まともではないことを声高に叫ぶ連中、それを見た周囲は、
「呆れるねぇ、国から来た連中の横暴は」「現実を知らぬ愚か者はそちらだ」「詭弁を言う詐欺師だな」
眉を潜めて酷評する。
そして、断言した。「ユウキとは何もかもが違う」と。妄想でもありえないことをほざく子供以下の相手なのだと。ユウキはそれを見ながら周りを押さえる。しかし、相手の勇者はそんなユウキの気遣いなど何も感じていない。すべてが自分らの自由になると信じ切っていた。
「ジークムントさん、だっけ」
「様だ!ジークムント様と呼べ!」
これからお前の主になる相手に敬語を使えと。僕はその返事を無視して、
「ベルファストはどうしたの?」
先に追い払った元仲間のことを聞くことにした。
「あやつなら尻尾を巻いて逃げたぞ。いかんなぁ、勇者が背を見せて逃げるとは」
悪しき笑みを見て僕は疑問を浮かべた。
「追い出したの?」
「言ったであろう。”逃げた”と」
その言葉の念押しに僕は不安を確信に変える。
「(まさか、殺したのか?先に秘薬の効果に目覚めたけどまだあれは現状効果未知数の薬、もしも命の危機にさらされたときにどのような効果が出るのか…。これはちょっと悪手かも。こうなるならば先に確保しておくべきだった)」
僕はこの後に起こるであろう惨劇に頭を痛めた。
「そう、そういうことなんだね」
こうなった以上取り返しは出来ない。可能な限り先に始末しないと。
「(ユウキ、聞こえるか?)」
もう一人の僕が内側から言葉を伝える。
「(大体理由は分かっているけど)」
「(人間種とも幻想種とも違う存在が急速にこちらに近づいている。どうやら、ここに来ている勇者らを殺すためだ。心の中には悪意しかない)」
最悪の事態となってしまったようだ。
もはやベルファストは”この世のもの””ではなくなってしまった。
『どうした?何を悩んでいる!さっさとこの領地を明け渡せ!!』
『ユウキ様?何を考えているのですか、こいつらは敵です!今すぐに追い払わないと!』
問題の気配は一直線にこちらに向かっている。この状況では被害無しで治めることはできない。自分らが招いた災厄だ、思う存分戦ってもらうことにしよう。
「…考えて、あげられなくも無い、かな?」
「「!?」」
その言葉を聞いて勇者らは歓喜し味方は失望する。
「では、早速に!」
そこで、僕は停止させる。
「お前たちは勇者だよね?」
改めて、確認を取る。
「そうだ。それがどうかしたのか?」
「もうすぐこの領地に災いがやってくる」
それの討伐が出来たら譲ると。そのような条件を出す。
「ハハハハッ、何という気楽な仕事だ!その程度など我らにかかれば造作もないことだ!」
『言質取ったからね」
そうして、その災いを待つことにした。
「ユウキ様、これはいったいどういうことですか!あれだけ苦労して解放したこの土地をこのような条件で!」
「そうです。あのような愚か者の何が問題だというのですか!あのような輩など力づくで黙らせればいいことです!」
ミーティアとシャルティエが猛抗議してくる。確かに、普通であれば馬鹿馬鹿しいにもほどがあるのだが。
「ちょっとだけ待ってて。怖い思いをするかもしれないけど」
「「?」」
ここを目指してやってくる災い、それをどうにか排除しないと。
しばらくすると、
『な、なんだ?あれは?』
どす黒い気配を周囲に撒き散らしながら「元ベルファスト」だったものが現れた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。