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第1章
190話 なぜユウキが同情的なのか?
僕はあの人ともモンスターとも違う怪物を確認した後深く考えさせられることになる。
「(あの人ともモンスターとも違う生態系、そしてその強さ。あれはまだ未成熟だったのでどうにかなったが完成されれば…。この上なく災厄となる。長く旅をしてきたけど製造元は特定できなかった。もっと人手を割くべきか?でも、そうなればこちらも甚大な被害を計s何しなければならないし。一刻も早く潰しに行きたいが今の立場では…)」
背負うべき責任の重さに考えが纏まらない。
助けてくれた恩人、手助けしてくれる人、罪を罪と思わぬ愚か者。助けられる相手には限界がある、どれから手を付けるべきか。
(ユウキ。こうなってはあれやこれや考えるのはよそう。考えている以上にこの問題は残酷なんだ。脅威が現れたのならば排除すればいい。それが国のため民のためなんだ)
「(それはそうだけど…)」
実体のない”兄弟”が語り掛けてくる。兄弟は他人には見えない、僕だけが見て感じて聞くことが出来る。
(あの怪物はもはや欲望の塊だ。幸い今回はどうにかなったが次はどうなるか)
「(分かってる、でも。彼らもまた犠牲者なんだよね)」
勇者という聞こえのいい言葉に踊らされて欲望を肥大化させただけの存在、彼らに現実を見せれば退くとも思えたがジークムントの反応では見て見ぬふりをするだけだろう。次は自分の番だと思いながらも彼らはいまだに愚かな夢を見ている。
どうしようかと、悩んでいると。
「ユウキ様」
ミーティアとシャルティエが一緒にやってきた。
「あ、遺体の処理は終わったの」
「はい、ですが」
確認を取る問題があると。
「確認?」
「とぼけないでくださいね。あの化け物の正体、あれは」
先に来て問題行動を起こしていたベルファストではないか?直球で聞いてきた。
「どうしてそう思うの?」
「どうしてなのでしょうね。そうとしか思えないからでしょうか」
「……」
「沈黙は肯定と受け止めますよ」
「で、それをどう使う気なの」
脅すのか?とも思ったが、出てきたのは意外な言葉だった。
「なぜ彼らに対して酷く同情的なのですか。顔見知り、という以上に敵意を持ちながらもいたく手を差し伸べようとしております。人の情としては普通なのかもしれませんが彼らは非人道的です」
どのような理由をもって敵意を持ちながらも穏便に済まそうとしてるのか。その理由を明確に説明してほしいと。
「―――簡単に言えば、復讐だよ。別の意味では懺悔だけどね」
「復讐?懺悔?」
「彼らの主は僕のかけがえのない兄弟を騙し討ちして無残に殺した。それだけじゃなく同胞たちまで酷い目に合わせている。だから」
「だから復讐、なのですね。懺悔とは」
「そのままの意味、だよ。別に彼らがどうなろうと自業自得だけど僕の依頼主はこの世ならざる方々でね。彼らのような輩が二度と現れないように『殲滅しろ』お怒りになった。人ならざる領域に無断で足を踏み入れだ代償を支払わせろと。
この世ならざる方々?よく意味が分からないけど嘘を言うユウキでないことは確認済みだ。
「兄弟の敵討ちをするために媚び諂って機会を待ってたけどそれよりも先にあんな化け物が生まれた」
復讐に走り追いかけるのはたやすい、でも、時間がかかりすぎる。
「冒険者ギルトとか大貴族とかに恩を売ったのはあくまで情報収集と牽制のため、迷惑をかける気はなかったんだよ」
「なるほど」
あんなのが出てきてしまった以上早めに手を打たないと。僕が悩んでいると。
「そちらの方は私達にお任せできませんか?」
「ん?まぁ、そうだよね。あんなのを見て放置するのは危険だよね」
ミーティアらには何か考えがあるようなので聞いてみることにした。
「はぁ?本気、なの」
「あれは人では害獣の類であると考えて今後二度と会わないようにして下さい」
「私達がお守りいたします!」
二人は胸を叩いて「安心しろ」と。ヤレヤレだな。
「あいにくなんだけど。ことは複雑なんだよ」
二人は首を傾げる。
「あいつらは、その、国の支援と援助を受けている。それを排除しようとすると背後が間違いなく騒ぎ出す」
「国が背後にいるからなんだというのですか?今や国などの存在が冒険者ギルドに勝てるなどとは思えません!」
そりゃあ今や民衆の方が力を持ち世襲貴族よりも職業貴族の方がはばを利かせている今の時代ならば王権を恐れる心配はないかもしれないが。それはごく一部の人間だけだ、今の僕の力ではまだ張り合えるほどではない。
そのことをちゃんと説明する。
「では、戦える力が手に入れば排除するのですね」
「まぁ…ね」
あの勇者らの蛮行を止められるのならば手段を考慮している時間は無いだろう。彼女らの押しも強いので首を縦に振るしかなかった。
~その一方、ジークムントとベルライトらは~
「クソっ!クソクソクソ!実り豊かな土地が簡単に手に入るかと思えばこの体たらく、どうしてくれようか!!」
ジークムントは生き残りに悪態を吐く。つい先ほどまで傍に居た人間が半数になってしまったのだ、その原因が自分では無いことを自己弁護するかのように酒を浴びていた。その生き残りもユウキの懸命な治療により助かった者らもいたのだ。
その原因が自分らではないことを無理矢理否定する行動にベルライトもカノンも「もはやこれまで」溜息をついた。
「ベルライト!カノン!貴様らがユウキとの縁を切ったからこうなったのだぞ!!」
「「…」」
二人にはもう答える気力すらなかった。
ユウキが戦ったあの化け物、あれが自分らが殺したはずのベルファストだと理解したからだ。あんな末路になるのは避けたい。しかし「勇者」という名前と立場によってがんじがらめになっている今の状況ではどうしようもなかった。
『自分らに何かあればこの世ならざる化け物になってしまう』
その恐怖が二人の思考を埋め尽くしていた。
ジークムントは「自分らは違う!」そう言い張るが事態はもはや坂に転がる石のごとく加速していく。
「(あの人ともモンスターとも違う生態系、そしてその強さ。あれはまだ未成熟だったのでどうにかなったが完成されれば…。この上なく災厄となる。長く旅をしてきたけど製造元は特定できなかった。もっと人手を割くべきか?でも、そうなればこちらも甚大な被害を計s何しなければならないし。一刻も早く潰しに行きたいが今の立場では…)」
背負うべき責任の重さに考えが纏まらない。
助けてくれた恩人、手助けしてくれる人、罪を罪と思わぬ愚か者。助けられる相手には限界がある、どれから手を付けるべきか。
(ユウキ。こうなってはあれやこれや考えるのはよそう。考えている以上にこの問題は残酷なんだ。脅威が現れたのならば排除すればいい。それが国のため民のためなんだ)
「(それはそうだけど…)」
実体のない”兄弟”が語り掛けてくる。兄弟は他人には見えない、僕だけが見て感じて聞くことが出来る。
(あの怪物はもはや欲望の塊だ。幸い今回はどうにかなったが次はどうなるか)
「(分かってる、でも。彼らもまた犠牲者なんだよね)」
勇者という聞こえのいい言葉に踊らされて欲望を肥大化させただけの存在、彼らに現実を見せれば退くとも思えたがジークムントの反応では見て見ぬふりをするだけだろう。次は自分の番だと思いながらも彼らはいまだに愚かな夢を見ている。
どうしようかと、悩んでいると。
「ユウキ様」
ミーティアとシャルティエが一緒にやってきた。
「あ、遺体の処理は終わったの」
「はい、ですが」
確認を取る問題があると。
「確認?」
「とぼけないでくださいね。あの化け物の正体、あれは」
先に来て問題行動を起こしていたベルファストではないか?直球で聞いてきた。
「どうしてそう思うの?」
「どうしてなのでしょうね。そうとしか思えないからでしょうか」
「……」
「沈黙は肯定と受け止めますよ」
「で、それをどう使う気なの」
脅すのか?とも思ったが、出てきたのは意外な言葉だった。
「なぜ彼らに対して酷く同情的なのですか。顔見知り、という以上に敵意を持ちながらもいたく手を差し伸べようとしております。人の情としては普通なのかもしれませんが彼らは非人道的です」
どのような理由をもって敵意を持ちながらも穏便に済まそうとしてるのか。その理由を明確に説明してほしいと。
「―――簡単に言えば、復讐だよ。別の意味では懺悔だけどね」
「復讐?懺悔?」
「彼らの主は僕のかけがえのない兄弟を騙し討ちして無残に殺した。それだけじゃなく同胞たちまで酷い目に合わせている。だから」
「だから復讐、なのですね。懺悔とは」
「そのままの意味、だよ。別に彼らがどうなろうと自業自得だけど僕の依頼主はこの世ならざる方々でね。彼らのような輩が二度と現れないように『殲滅しろ』お怒りになった。人ならざる領域に無断で足を踏み入れだ代償を支払わせろと。
この世ならざる方々?よく意味が分からないけど嘘を言うユウキでないことは確認済みだ。
「兄弟の敵討ちをするために媚び諂って機会を待ってたけどそれよりも先にあんな化け物が生まれた」
復讐に走り追いかけるのはたやすい、でも、時間がかかりすぎる。
「冒険者ギルトとか大貴族とかに恩を売ったのはあくまで情報収集と牽制のため、迷惑をかける気はなかったんだよ」
「なるほど」
あんなのが出てきてしまった以上早めに手を打たないと。僕が悩んでいると。
「そちらの方は私達にお任せできませんか?」
「ん?まぁ、そうだよね。あんなのを見て放置するのは危険だよね」
ミーティアらには何か考えがあるようなので聞いてみることにした。
「はぁ?本気、なの」
「あれは人では害獣の類であると考えて今後二度と会わないようにして下さい」
「私達がお守りいたします!」
二人は胸を叩いて「安心しろ」と。ヤレヤレだな。
「あいにくなんだけど。ことは複雑なんだよ」
二人は首を傾げる。
「あいつらは、その、国の支援と援助を受けている。それを排除しようとすると背後が間違いなく騒ぎ出す」
「国が背後にいるからなんだというのですか?今や国などの存在が冒険者ギルドに勝てるなどとは思えません!」
そりゃあ今や民衆の方が力を持ち世襲貴族よりも職業貴族の方がはばを利かせている今の時代ならば王権を恐れる心配はないかもしれないが。それはごく一部の人間だけだ、今の僕の力ではまだ張り合えるほどではない。
そのことをちゃんと説明する。
「では、戦える力が手に入れば排除するのですね」
「まぁ…ね」
あの勇者らの蛮行を止められるのならば手段を考慮している時間は無いだろう。彼女らの押しも強いので首を縦に振るしかなかった。
~その一方、ジークムントとベルライトらは~
「クソっ!クソクソクソ!実り豊かな土地が簡単に手に入るかと思えばこの体たらく、どうしてくれようか!!」
ジークムントは生き残りに悪態を吐く。つい先ほどまで傍に居た人間が半数になってしまったのだ、その原因が自分では無いことを自己弁護するかのように酒を浴びていた。その生き残りもユウキの懸命な治療により助かった者らもいたのだ。
その原因が自分らではないことを無理矢理否定する行動にベルライトもカノンも「もはやこれまで」溜息をついた。
「ベルライト!カノン!貴様らがユウキとの縁を切ったからこうなったのだぞ!!」
「「…」」
二人にはもう答える気力すらなかった。
ユウキが戦ったあの化け物、あれが自分らが殺したはずのベルファストだと理解したからだ。あんな末路になるのは避けたい。しかし「勇者」という名前と立場によってがんじがらめになっている今の状況ではどうしようもなかった。
『自分らに何かあればこの世ならざる化け物になってしまう』
その恐怖が二人の思考を埋め尽くしていた。
ジークムントは「自分らは違う!」そう言い張るが事態はもはや坂に転がる石のごとく加速していく。
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