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第1章
204話 戦士の目覚め
あれからずっと僕はアルムエルヴィンと追いかけっこを続けていた。
「ほら!動きを止めず全力で動く!」
「「は、はいぃぃ~~」」
二人はバテバテになりながら動き回るしかなかった。体は重くなり酸素を求めて呼吸は止まらず疲労という魔物は体を蝕むがどうあっても体は止まらない。酸欠となり顔には青い色が出ており汗は滝のように流れている。
現代スポーツ選手でも重苦にあえぐほどの運動を強制されればどうなるかなど簡単だ。
「「――――」」
二人は口から液体を地面に勢いよく吐き出した。それが終わると容赦なく体が地面に落とされる。
「「き、き、休息を…」」
一息欲しい、だけども、
「だめっ!」
僕は容赦なくそれを拒否した。
「「で、ですが…」」
そりゃこんな過酷な運動はどこの世界の軍隊でも行わないだろう、だけども二人を短期間で戦士に育てるにはこれで最低限なのだ。もっと年若ければ遊びを入れるところだが二人の年齢を考えるとこれでもまだ足りないぐらいなのだ。
ハッキリ言うけど異世界人は過酷な環境にいるので肉体のポテンシャルは現代日本人よりもずっと高い、だけども、それを引き出せる訓練方法が整備されていないのだ。
明確な効果を知った上での肉体改造、それを理解している指導者が歴史を遡っても存在しない。だけども。僕はそれを知っている。適切かつ明確な訓練を行えば目が覚めるほどに肉体は強化されるということを。
「二人が辛いのは分かっている。でも、キミたちには足りないものが多すぎる。武器を取って戦おうにも強くない、特別な教育を受けて知恵が回るわけでもない、数多くの立場がある人物とも繋がりがあるわけでもない。そんな自分が飛び上がるためには何かを甘んじて受けなければならない」
今がその時だと、強く言い聞かせる。
この二人だって今の自分では重用されないことは薄々自覚している。圧倒的な戦士である主君が「自分のようになりたいか?」そう言われれば誘いに乗るしかない。軍縮が世界中で進められている現在武に長じた者らが望まれているのだからそれを手に入れれば望み通りの手柄が手に入れられる。
「今二人の体は完全に異常な状態だ。全身の血が上から下まで行き交い休息を求めて呼吸は乱れ骨にだって多大な負荷がかかっている。今一時でも休みたいだろうがこれを続ければ”この状態が持続する”と体が反応しそれに合わせて体が作り変えられる。それが肉体を本当に強くするということ」
相当に辛いだろうが休みは与えない。それをした時点でもう終わりだ。
そうして、十日間みっちり二人を訓練した。
エーディンとミーティアは二人の過酷な訓練に対して好感を持たなかったが論より証拠だと言い聞かせて連れて来た者らと模擬戦を行わせることにした。
体を縛る枷を取り外された二人はというと、
「なぜエルヴィンに力負けするのだ!それだけではなく運動性が違いすぎる!」
「アルムがなぜこれほど強いのだ!」
模擬戦の参加者たちは全員二人が変貌したことに驚きを隠せなかった。
体格で上回ってるのにも関わらず二人は押し負けずそれどころか逆に押し返したほどだ。運動性も圧倒的でかなりの相手はついて行けなかったほど。最後の手段として体力勝負に持ち込もうとしたものもいたが結果は変わらなかった。
エーディンもミーティアも実弟のあまりの変貌ぶりに笑顔を浮かべるしかなかった。
「お疲れ様」
「「ユウキ様!」」
二人には満面の笑顔があった。
「肉体強化の効果は自覚できたんだね」
「はいっ。武器が枝葉を振るうように軽く感じ、いくら動いても疲れを感じませんでした」
「それに、呼吸を整えるのも短時間でできて楽でしたから余裕をもって相手の動きに対応できました」
よしよし、肉体の変化を良い意味で理解できたようだ。肉体のポテンシャルが上がれば何をするにしても有利に働く、戦闘に関する練度も飛躍的に上昇しメンタリティな面でも優位な対応が出来るようになる
「先に言っていたけど、肉体は鍛え続けなければ衰える。強くなって嬉しいだろうけど戦場に絶対はない、二人を上回る相手は世界中のどこにでも存在する。今手に入れた強さを元にさらに強くなれるようにしていくから付いてくること」
「「はいっ!!」」
装備による効果もあったがよくこの短期間で結果を出せたと一息つく。二人はこれからも上を目指して精進していき忠誠心も上がっていくことだろう。異世界人は秘めたポテンシャルは高いと思っていたけどこの様子ならもっと広い範囲で行えることだろう。
~アルム、エルヴィン視点~
本日来ていた者たちを相手に模擬戦が行われる。まだ統率されていない見習い兵を相手にしてだが二人には重大な出来事だった。その前日までビッシリと厳しい訓練が行われたからだ。
「ユウキ様、明日が模擬戦なのに前日までこんなに激しく行うのですか?」
「そうです。通常であれば休息をもうけるはずですが?」
自分達にはなぜこんなに激しい訓練を直前まで行うのかまるで考えられなかった、通常であれば休息を与えるはずなのに。
「普通の兵士であればここまで強くは行わないよ。一般の兵士は戦いに備えるための訓練を行うけど君たちは”戦いの中で生きる”ための訓練なのだから。
「「はぁ…」」
その言葉の違いが今の自分達にはよく分からない。どちらも同じだと思うのだけど。
「まぁ、本番になればわかるよ。それよりも」
本番の日、模擬戦が行うずっと前に集まっておくようにと。集まるのは当然だがそれよりもずっと前とはどう意味なのだろうか?ともかく、自分達にはユウキ様を信じるしかなかったので反論はしなかった。
『二人とも、お疲れさまでした』
宿営地、という簡素なテントが並んだ場所まで戻ると姉たちが待っていた。この領地はまだ解放されたばかりであり建設された建物が少ないのだ。最低限の生活が保障されている程度なのは致し方ない。
「「ただいま戻りました」」
自分たちは挨拶も簡素に食事の時間の間に言われ通り柔軟体操を行い体を労わる。姉たちは他の者らとは違う変な訓練を良く思ってはおらず何度か中止するようにと思われたが自分たちはそれを断った。
『君たち二人は何の財産も有していない。出世しようにも後から入ってくる名家出身の者らとでは出世の速度は明確、なら。どうすれば上に行けると思う?』
出世の速度の違い、その言葉に自分たちは考えた。
自分たちは姉がいるためにその身を預けられているだけ、その姉を支えるためにはなにがしかの手柄が必要だった。だけども戦はいつもあるわけではない。その中で上に行くには明確な答えが当然だった。その答えの一つが合同で行われる軍事演習や模擬戦だ。ここでは生まれに関係なく純粋に武力を持つ者が評価される。ある程度の隊を任せることになる者ら以外は皆これに参加する。
武に秀でている者を重用しない相手は冒険者ギルドでは存在しない。出世に明確に表れるからこその武力なのだから。
他と同じ方法では自分達ではあっという間に置いていかれてしまうだろう、ユウキ様も忙しい身分なので取れる時間は限られている。それを自分達のために使ってくれるのだ、それを無為にすることは大変失礼だ。
ともかく、本番の日は明日。そこで明確な答えが出るとのことなので自分たちはそれに従うことにした。
「「う~っ、う~っ」」
訓練を受けてからというもの体が異常なほどに熱く感じる、アルムとエルヴィンは同胞なので同じテントを割り当てられていた。寝床に入ってからもうなされなかなか寝付けない。水を飲んでも体のほてりは取れない。
ユウキ様曰く、
『体が連日の異常事態に対応するために発熱してる。熱病ではなく体の新陳代謝が活発になってるから起こる現象だよ。しばらくは持て余すだろうけど次第に気にならなくなるから』
とのことだ。
体の異常な暑さに耐えながらひたすら目をつむり時間が過ぎるのを待つ。
そして、模擬戦当日。食事を終えてからユウキ様の元に向かう。
「はい、よく来たね」
ユウキ様に疲れの色は無い、自分たちに付き合っているためそれなりに疲れがあるはずなのに。特化戦士とはここまで堅強なのかと。
「はい、ここで行うことは一つだけ」
ユウキ様は自分の動きを真似ること、それだけを言った。ともかく、それをひたすらに真似る。ゆっくりとした動きであり厳しく動かされた前日までとは違うが体の各所から痛みが伴う。
それをみっちり行い模擬戦の時間を迎える。
集まっているのは男女混合だが例外なく職業貴族家の家々の子供たちだった。新たに新設された職業貴族男爵家ということなので模擬戦で結果を出し護衛となったり傍近くに居たいと考えているのがよく見える。幼少のころから訓練を受けているのは当然だった。実力主義の冒険者ギルドでは「努力せぬもの見る価値無し」そんな言葉が当たり前、枠が多くない以上努力する姿勢を見せなければ何も与えられないのだ。
そんな中に交じり自分達は結果を出さなくてはならない。そうした重圧が圧し掛かるが、
『大丈夫だから』
簡単に設置された上座のユウキ様が微笑んでくれたような気がした。
二人に教えられたことはただ一つ「体の発する痛みに耐え激しく動くこと」それだけだった。一回戦の相手は自分より体格に勝る相手だった、それなのに攻撃的に出るのはとても辛いことだった。
序盤の時は体の痛みが先に来て億劫だったがその痛みは徐々に消えていき体が温まるにつれて徐々に優勢となり何とか勝利をもぎ取った。しかし、自分たちの模擬戦は一回戦だけではなかった。少しの休息の後に弐回戦が始まる。主君から負けることを恐れずに最後まで行け、そう命令された。
だが、二人は弐回戦から徐々に訓練がいかにすごかったのかを自覚し始める。
二回戦の相手を優勢のまま勝利、三回戦も同じだった。4回戦からは見違えるような動きをし始めて、なんと五回戦まで勝ち上がった。
『ウオオオ~!』
二人は序盤の苦戦など微塵も感じさせないほどに優勢の状態で勝ち上がり続けた。
『(なんだ、これ!体に羽根が付いたかのように軽い。打ち合っても力負けしないし何より相手の動きが目に見えてわかる。あ、横から薙ぎ払うんだな。なら、弾いた後に追撃だ。すごいすごい、体を圧倒的に強くすれば覚えた技術が大きく生きる。何より、疲れを知らずに動ける体というのはここまで戦い方を変えてしまうんだ!!)』
エルヴィンは自分の体がおもちゃの人形のように動かせることに夢中になった。勝利後アルムも同じようだった。二人はその後も勝ち上がり分けられた組み合わせで最後まで勝ち続けることになった。
「はいお疲れ様」
模擬戦を終えるとユウキ様と姉たちが待っていた。二人はとても笑顔だった。
「エルヴィン、よくぞここまで短期間で強くなりました」
「アルム、見事な戦いぶりでしたよ」
二人から惜しみない賞賛を受けて顔がほころぶ。これでもう自分らが受けた特訓がいかに重要なのかを理解できた。さぁ、ここからが出発点だ。もっともっと強くなって武功を立てるのだ。
「ほら!動きを止めず全力で動く!」
「「は、はいぃぃ~~」」
二人はバテバテになりながら動き回るしかなかった。体は重くなり酸素を求めて呼吸は止まらず疲労という魔物は体を蝕むがどうあっても体は止まらない。酸欠となり顔には青い色が出ており汗は滝のように流れている。
現代スポーツ選手でも重苦にあえぐほどの運動を強制されればどうなるかなど簡単だ。
「「――――」」
二人は口から液体を地面に勢いよく吐き出した。それが終わると容赦なく体が地面に落とされる。
「「き、き、休息を…」」
一息欲しい、だけども、
「だめっ!」
僕は容赦なくそれを拒否した。
「「で、ですが…」」
そりゃこんな過酷な運動はどこの世界の軍隊でも行わないだろう、だけども二人を短期間で戦士に育てるにはこれで最低限なのだ。もっと年若ければ遊びを入れるところだが二人の年齢を考えるとこれでもまだ足りないぐらいなのだ。
ハッキリ言うけど異世界人は過酷な環境にいるので肉体のポテンシャルは現代日本人よりもずっと高い、だけども、それを引き出せる訓練方法が整備されていないのだ。
明確な効果を知った上での肉体改造、それを理解している指導者が歴史を遡っても存在しない。だけども。僕はそれを知っている。適切かつ明確な訓練を行えば目が覚めるほどに肉体は強化されるということを。
「二人が辛いのは分かっている。でも、キミたちには足りないものが多すぎる。武器を取って戦おうにも強くない、特別な教育を受けて知恵が回るわけでもない、数多くの立場がある人物とも繋がりがあるわけでもない。そんな自分が飛び上がるためには何かを甘んじて受けなければならない」
今がその時だと、強く言い聞かせる。
この二人だって今の自分では重用されないことは薄々自覚している。圧倒的な戦士である主君が「自分のようになりたいか?」そう言われれば誘いに乗るしかない。軍縮が世界中で進められている現在武に長じた者らが望まれているのだからそれを手に入れれば望み通りの手柄が手に入れられる。
「今二人の体は完全に異常な状態だ。全身の血が上から下まで行き交い休息を求めて呼吸は乱れ骨にだって多大な負荷がかかっている。今一時でも休みたいだろうがこれを続ければ”この状態が持続する”と体が反応しそれに合わせて体が作り変えられる。それが肉体を本当に強くするということ」
相当に辛いだろうが休みは与えない。それをした時点でもう終わりだ。
そうして、十日間みっちり二人を訓練した。
エーディンとミーティアは二人の過酷な訓練に対して好感を持たなかったが論より証拠だと言い聞かせて連れて来た者らと模擬戦を行わせることにした。
体を縛る枷を取り外された二人はというと、
「なぜエルヴィンに力負けするのだ!それだけではなく運動性が違いすぎる!」
「アルムがなぜこれほど強いのだ!」
模擬戦の参加者たちは全員二人が変貌したことに驚きを隠せなかった。
体格で上回ってるのにも関わらず二人は押し負けずそれどころか逆に押し返したほどだ。運動性も圧倒的でかなりの相手はついて行けなかったほど。最後の手段として体力勝負に持ち込もうとしたものもいたが結果は変わらなかった。
エーディンもミーティアも実弟のあまりの変貌ぶりに笑顔を浮かべるしかなかった。
「お疲れ様」
「「ユウキ様!」」
二人には満面の笑顔があった。
「肉体強化の効果は自覚できたんだね」
「はいっ。武器が枝葉を振るうように軽く感じ、いくら動いても疲れを感じませんでした」
「それに、呼吸を整えるのも短時間でできて楽でしたから余裕をもって相手の動きに対応できました」
よしよし、肉体の変化を良い意味で理解できたようだ。肉体のポテンシャルが上がれば何をするにしても有利に働く、戦闘に関する練度も飛躍的に上昇しメンタリティな面でも優位な対応が出来るようになる
「先に言っていたけど、肉体は鍛え続けなければ衰える。強くなって嬉しいだろうけど戦場に絶対はない、二人を上回る相手は世界中のどこにでも存在する。今手に入れた強さを元にさらに強くなれるようにしていくから付いてくること」
「「はいっ!!」」
装備による効果もあったがよくこの短期間で結果を出せたと一息つく。二人はこれからも上を目指して精進していき忠誠心も上がっていくことだろう。異世界人は秘めたポテンシャルは高いと思っていたけどこの様子ならもっと広い範囲で行えることだろう。
~アルム、エルヴィン視点~
本日来ていた者たちを相手に模擬戦が行われる。まだ統率されていない見習い兵を相手にしてだが二人には重大な出来事だった。その前日までビッシリと厳しい訓練が行われたからだ。
「ユウキ様、明日が模擬戦なのに前日までこんなに激しく行うのですか?」
「そうです。通常であれば休息をもうけるはずですが?」
自分達にはなぜこんなに激しい訓練を直前まで行うのかまるで考えられなかった、通常であれば休息を与えるはずなのに。
「普通の兵士であればここまで強くは行わないよ。一般の兵士は戦いに備えるための訓練を行うけど君たちは”戦いの中で生きる”ための訓練なのだから。
「「はぁ…」」
その言葉の違いが今の自分達にはよく分からない。どちらも同じだと思うのだけど。
「まぁ、本番になればわかるよ。それよりも」
本番の日、模擬戦が行うずっと前に集まっておくようにと。集まるのは当然だがそれよりもずっと前とはどう意味なのだろうか?ともかく、自分達にはユウキ様を信じるしかなかったので反論はしなかった。
『二人とも、お疲れさまでした』
宿営地、という簡素なテントが並んだ場所まで戻ると姉たちが待っていた。この領地はまだ解放されたばかりであり建設された建物が少ないのだ。最低限の生活が保障されている程度なのは致し方ない。
「「ただいま戻りました」」
自分たちは挨拶も簡素に食事の時間の間に言われ通り柔軟体操を行い体を労わる。姉たちは他の者らとは違う変な訓練を良く思ってはおらず何度か中止するようにと思われたが自分たちはそれを断った。
『君たち二人は何の財産も有していない。出世しようにも後から入ってくる名家出身の者らとでは出世の速度は明確、なら。どうすれば上に行けると思う?』
出世の速度の違い、その言葉に自分たちは考えた。
自分たちは姉がいるためにその身を預けられているだけ、その姉を支えるためにはなにがしかの手柄が必要だった。だけども戦はいつもあるわけではない。その中で上に行くには明確な答えが当然だった。その答えの一つが合同で行われる軍事演習や模擬戦だ。ここでは生まれに関係なく純粋に武力を持つ者が評価される。ある程度の隊を任せることになる者ら以外は皆これに参加する。
武に秀でている者を重用しない相手は冒険者ギルドでは存在しない。出世に明確に表れるからこその武力なのだから。
他と同じ方法では自分達ではあっという間に置いていかれてしまうだろう、ユウキ様も忙しい身分なので取れる時間は限られている。それを自分達のために使ってくれるのだ、それを無為にすることは大変失礼だ。
ともかく、本番の日は明日。そこで明確な答えが出るとのことなので自分たちはそれに従うことにした。
「「う~っ、う~っ」」
訓練を受けてからというもの体が異常なほどに熱く感じる、アルムとエルヴィンは同胞なので同じテントを割り当てられていた。寝床に入ってからもうなされなかなか寝付けない。水を飲んでも体のほてりは取れない。
ユウキ様曰く、
『体が連日の異常事態に対応するために発熱してる。熱病ではなく体の新陳代謝が活発になってるから起こる現象だよ。しばらくは持て余すだろうけど次第に気にならなくなるから』
とのことだ。
体の異常な暑さに耐えながらひたすら目をつむり時間が過ぎるのを待つ。
そして、模擬戦当日。食事を終えてからユウキ様の元に向かう。
「はい、よく来たね」
ユウキ様に疲れの色は無い、自分たちに付き合っているためそれなりに疲れがあるはずなのに。特化戦士とはここまで堅強なのかと。
「はい、ここで行うことは一つだけ」
ユウキ様は自分の動きを真似ること、それだけを言った。ともかく、それをひたすらに真似る。ゆっくりとした動きであり厳しく動かされた前日までとは違うが体の各所から痛みが伴う。
それをみっちり行い模擬戦の時間を迎える。
集まっているのは男女混合だが例外なく職業貴族家の家々の子供たちだった。新たに新設された職業貴族男爵家ということなので模擬戦で結果を出し護衛となったり傍近くに居たいと考えているのがよく見える。幼少のころから訓練を受けているのは当然だった。実力主義の冒険者ギルドでは「努力せぬもの見る価値無し」そんな言葉が当たり前、枠が多くない以上努力する姿勢を見せなければ何も与えられないのだ。
そんな中に交じり自分達は結果を出さなくてはならない。そうした重圧が圧し掛かるが、
『大丈夫だから』
簡単に設置された上座のユウキ様が微笑んでくれたような気がした。
二人に教えられたことはただ一つ「体の発する痛みに耐え激しく動くこと」それだけだった。一回戦の相手は自分より体格に勝る相手だった、それなのに攻撃的に出るのはとても辛いことだった。
序盤の時は体の痛みが先に来て億劫だったがその痛みは徐々に消えていき体が温まるにつれて徐々に優勢となり何とか勝利をもぎ取った。しかし、自分たちの模擬戦は一回戦だけではなかった。少しの休息の後に弐回戦が始まる。主君から負けることを恐れずに最後まで行け、そう命令された。
だが、二人は弐回戦から徐々に訓練がいかにすごかったのかを自覚し始める。
二回戦の相手を優勢のまま勝利、三回戦も同じだった。4回戦からは見違えるような動きをし始めて、なんと五回戦まで勝ち上がった。
『ウオオオ~!』
二人は序盤の苦戦など微塵も感じさせないほどに優勢の状態で勝ち上がり続けた。
『(なんだ、これ!体に羽根が付いたかのように軽い。打ち合っても力負けしないし何より相手の動きが目に見えてわかる。あ、横から薙ぎ払うんだな。なら、弾いた後に追撃だ。すごいすごい、体を圧倒的に強くすれば覚えた技術が大きく生きる。何より、疲れを知らずに動ける体というのはここまで戦い方を変えてしまうんだ!!)』
エルヴィンは自分の体がおもちゃの人形のように動かせることに夢中になった。勝利後アルムも同じようだった。二人はその後も勝ち上がり分けられた組み合わせで最後まで勝ち続けることになった。
「はいお疲れ様」
模擬戦を終えるとユウキ様と姉たちが待っていた。二人はとても笑顔だった。
「エルヴィン、よくぞここまで短期間で強くなりました」
「アルム、見事な戦いぶりでしたよ」
二人から惜しみない賞賛を受けて顔がほころぶ。これでもう自分らが受けた特訓がいかに重要なのかを理解できた。さぁ、ここからが出発点だ。もっともっと強くなって武功を立てるのだ。
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