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友情ははかなく脆い

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目が覚めると朝だった。
服は寝間着だったので無意識に風呂に入って眠りについたのだろう

時刻は7時頃だった。
下に降りてリビングに入る。

そこには妹はいなかった。
部活の朝練習に行ったのだろう。

リビングの机には、目玉焼きとウインナーが皿に盛りつけてあった。
朝ごはん 食べといてください、と書置きがあった。

夕食をまともに食べなかったのに朝食も食べなかったら流石に不味いだろう。
義務感のようなものを感じながらフォークを料理に突き刺して口へと運ぶ。

食べ終えると皿を洗っておく。
制服に着替えて家の扉を開ける。

一晩たった今でも何かが崩れる音は消えない。
今日は学校への登校の足取りが一段と重い。

重々しいため息を何度もつきながら学校に足を向ける。
下駄箱で靴を履き替えていると憐みの視線を何人からも感じた。

既に学校中に俺の愚行は広がっているようだ。
何度か笑い声も聞こえてきた。

無性に自分が小さい存在に思えてならなかった。
教室に入ると昨日と同じように笑い声と憐みの目や同情の視線に出迎えられた。

出来るだけ気にしないようにと思いながら自分の席に授業の用意をして着席する。
今まで話しかけてくれていた友人も昨日の一軒から全く話しかけてこない。

恐らく厄介ごとに首を突っ込むことを毛嫌いしているのだろう。
友情がこんなにもはかなく脆いものだとは知りもしなかった。

いや、俺はその考えを心中で否定する。
そんな簡単に壊れる友情ならどうせいつか壊れてしまっていたのかもしれない。

遅いか早いか、ただそれだけの違いなのかもしれない。
自分から話しかける勇気もない。

そんな中、陽気な声の持ち主が僕に話しかけてきた。
声の持ち主は岩谷明音だった。

「ねえ、今どんな気持ち楽しい?教えてよ」
人のことを何も考えていない能天気な笑顔を浮かべている。

頭の中が沸騰したように熱くなる。
恋心で感じていた熱ではなく怒りによる熱だ。

怒りで暴力に奔りたい衝動に駆られるがグッとこらえる。
俺が無言を貫き通していると・・・・・・

先程の能天気な声から一変不機嫌そうな声が耳に聞こえてくる。
「答えろっつってんだろ!」

声と同時に横腹に衝撃と痛みが走る。
岩谷が俺の横腹に蹴りをいれたのだ。

俺は椅子から転げおちる。
床で痛みに悶えていると「キャハハハ」という人を馬鹿にしたような笑いが教室中に響き渡った。
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