上 下
14 / 54

帰宅

しおりを挟む
帰宅している時に気付いたのだが、服部 まみと話している間はどこかで何かが崩れる音が一切聞こえてこなかったのだ。
話し声に崩れる音が掻き消されていて一時的に聞こえていなかったのかとも考えていたのだが、それなら妹やあの憎むべき相手___岩谷とも話している間にも崩れる音が聞こえなくなっていたはずだ。

しかし、そんなことはなく あいつらと話している間にも崩れる音は絶えず聞こえていた。
服部 まみと話していた時だけ崩れる音が聞こえなくなっていたのだ。

何故だ?俺の中に疑問が生まれる。
ただ、情報が少なすぎて原因は推測できなかった。

そんなことに考えを飛ばしているといつのまにか家の前に到着していた。
扉を開けて「ただいま」と短く帰宅の合図を声に出す。

両親は仕事、妹は学校、なので誰からも返事はなく家には俺の声が響き渡るだけだった。
靴をぬいで家に入る。そのまま、リビングにまっすぐに行く。

手にぶら下げていたコンビニ袋を机に放りだす。
中から買ってきた食料を出す。

椅子に腰かけてそれらを開封して口に運ぶ。
数分すると、全てのものが俺の胃袋に収まった。

美味しいことは美味しいのだが、妹が作った飯の方が少しばかり美味しい気がした。
食べ終えると俺はゴミをゴミ箱の中に放り込む。

ふと、時計を見てみた。
時刻は11時半、お昼時だった。

どうやら、午前中の殆どをコンビニで過ごしていた様だ。
これも全部岩谷のせいだ。

俺はどんどん岩谷へのヘイトを溜めていく。

さっき、ぶん殴っておけばよかったかなあ
俺は愚かな考えを頭の中で展開していく。

展開している最中に気付く。
何故、あいつは平日の朝っぱらからコンビニの前にいたんだ。

サボった?噂ではあいつは成績を極度に気にしているらしい。
その噂が本当なら無断欠席なんて愚行を犯すはずがない。

なら……頭をいつもより速く回転させる。
「停学……?」無意識に声が口から発せられる。

しかし、あの出来事は俺が一方的に殴ったという話で済んでいたはずだ。
「……ありえないか」

俺はすぐにその考えを頭を振って否定する。

考えることに疲れた俺は床に大の字で寝転ぶ。
食事をしたせいか眠気が襲ってきた。

気付いた時には視界はどんどん暗くなっていき、意識は夢の中へとさらわれていった。
しおりを挟む

処理中です...