21 / 50
共通 ルート
21 手に入れたのは彼氏じゃなくて優秀な手下(×)兄
しおりを挟む私たちは、来賓の方々の休憩室として用意しあった部屋に向かった。
部屋に着いた途端に、私は、ルジェク王子に向かって言った。
「ルジェク王子殿下、先に言っておきますが、私は、リオン王子殿下に口説かれてなどおりませんわよ? 先程の行為は、ルジェク王子殿下の評判を下げる行為ですので、今後は、決してなさいませんように」
元々、リオン王子は、私に、平手打ちをされようとして、我が領と繋がりと持とうとしていたのだ。
私を口説いていたわけではない。
推しの評価を私のせいで下げるわけにはいかない。
少し厳しく言うと、ルジェク王子は、肩を落として「それについては、反省している」と言った後に、私の両肩に両手を置いて、慌てたように言った。
「だが……フォルトナこそ、何を言っているんだ?! あんなに近付いて、甘い視線を向けられていて、口説かれていない?! しっかりするんだ、フォルトナ。あれは、口説かれていたんだ!!」
おかしな誤解を……そう思っていると、すぐ近くにいたリオン王子も大きく頷いた。
「そうだな……私も口説いていたつもりだった。だからこそ、フォルトナに、素直に全てを打ち明けたのだ……」
「……は?」
私は、思わずリオン王子を見た。
この人は一体何を言っているのだろうか?
むしろ、この王子様は、私ではなく兄を口説いていたように記憶しているが?!
私が予想外の答えにポカンとしていると、リオン王子は続けて話をした。
「ルジェク王子殿下と、フォルトナ嬢が『婚約破棄』をしたという噂を聞いていたし、実際に話をしてフォルトナ嬢は、私が想像する以上に聡明で美しい女性だったので、婚約破棄の予定があるのなら、私の元に……」
「婚約破棄の予定など断じて、ない!!」
ルジェク王子が、リオン王子の言葉を遮り、大きな声を上げた。
カオスな状況になって頭を抱えていると、兄が息を吐きながら言った。
「フォルトナのような、美しい女性を一人にした責任は全て私にあります。ルジェク王子殿下とフォルトナは婚約破棄をするという噂もあり、リオン王子殿下がその噂を知っているのなら、フォルトナを口説かれても仕方ない話です。私の妹は、大変美しいですから……フォルトナの兄である私が責任を取る必要がありますね。フォルトナの兄であるこの私が!!」
結局、兄が喜んで、責任を取ることになった。
こうして、無事にリオン王子は、兄を国に呼ぶことが出来たし、ルジェク王子の評判を落とすことはなかった。
そう、無事に解決したのだが……。
現在、私は兄に腰を抱かれて、兄の隣に座りながら、セルーン公爵家の客間で、ルジェク王子と対峙していた。
「私と、フォルトナの婚約を、白紙に戻す?!」
ルジェク王子が、兄を見ながら大声を出した。
一方、兄は、落ち着き払って言った。
「はい。美しい妹は、リオン王子殿下からも求婚されて、さらには、あの様子を見ていた他国の王族や、高位貴族の方々からも妹へ結婚の打診が多くきております」
そうなのだ。
実はあの後、私と兄の機転を多くの他国の貴族が絶賛して、私に多くの婚約の申し込みが殺到してしまったのだ。
兄は、ルジェク王子を見つめながら言った。
「殿下。文化交流祭での殿下の行動は、決して褒められた行動ではございません。陛下も今回、私と妹の機転に感謝されて、私たちに判断を委ねるとおっしゃって下さいました」
「父上が……」
兄に言葉にルジェク王子が肩を落とした。
推しのしょんぼりとした顔には心が痛むが、私も幸せな結婚がしたい。
出来れば、本当に自分と合う人と結婚したい。
兄は、「フォルトナの幸せのためならどんなことでもしよう!!」と言って、求婚を受けた人々と面談をする日々を送っている。そして、兄のお眼鏡にかなった人にだけ私は会っているので、正直、素敵な男性ばかりだ。
非常に優秀な兄は、私がよりよい男性に嫁げるように、私の結婚プロデューサーまで引き受けてくれるらしい。
兄はルジェク王子を見ながら、笑顔で言い放った。
「全ての決定権は、フォルトナとフォルトナの兄であるこの私にございますので、どうぞ、あしからず」
私と兄は、ルジェク王子の馬車を見送った。
「兄上、ありがとうございました」
私が兄を見上げて微笑むと、兄が私のおでこにキスをした。
「可愛いフォルトナのためなら、私はなんでもしよう!!
幸せになってくれ、フォルトナ!!」
私は兄を見上げて、心からの笑顔を見せながら笑った。
「はい、コルネリウス兄上♡」
「うっ……名前……もう一度呼んでくれ」
もうしばらくは、手下(×)ではなく、兄と一緒に理想の結婚相手を探すことにした。
そう遠くない未来に、私は大切な人の隣に立っているのかもしれない。
――――――――――
この後は、エンディングが分岐いたします。
お好きなキャラクターのエンディングにお進みください。
m(_ _)m
※ルート選択※
○コルネリウス ルート
○ルジェク ルート
659
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】悪役令嬢はご病弱!溺愛されても断罪後は引き篭もりますわよ?
鏑木 うりこ
恋愛
アリシアは6歳でどハマりした乙女ゲームの悪役令嬢になったことに気がついた。
楽しみながらゆるっと断罪、ゆるっと領地で引き篭もりを目標に邁進するも一家揃って病弱設定だった。
皆、寝込んでるから入学式も来れなかったんだー納得!
ゲームの裏設定に一々納得しながら進んで行くも攻略対象者が仲間になりたそうにこちらを見ている……。
聖女はあちらでしてよ!皆様!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる