【12月末日公開終了】令嬢辞めたら親友認定

たぬきち25番

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第2章 主人公不在でゲームの舞台へ

6 不穏な空気

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「ジェイドさん。届けて下さってありがとうございました」

「いえ、ではお願い致します」

 私は最後に生徒会の顧問のライア先生に書類を渡して廊下に出た。クラウスとランベール殿下のおかげで早く書類を配り終わることが出来た。

(よかった下校までには戻れる)

 私は仕事が終わったことにほっして生徒会室までの廊下を歩くと、ランベール殿下が壁に背を預けて待っていてくれた。本当に絵の中から抜け出したように美しい立ち姿だった。
 
 ――ジェイド、好きだ。

 ふと先ほどのランベール殿下の言葉を思い出して顔が赤くなる気がした。
 私が動揺していると、ランベール殿下が私に気付いて、片手をあげて笑顔を見せてくれた。
 
「ジェイド、こちらは終わったぞ。生徒会室に戻ろう」

 私は心の中で『そう、ランベール殿下にはさっきの言葉に深い意味はない』そう言い聞かせて平静を装いながら答えた。

「はい」

「じゃあ、一緒に戻るか」

 私は頷くことで返事をしてランベール殿下と並んで歩いた。
 沈黙でさえ……心地いい。

 私が隣に立つことに嬉しさを覚えながら、ランベール殿下と並んで歩いている時だった。
 
「本当にアルフレッド殿下と二人でお話できるのですか?」
「ああ。任せておけよ。俺はリンハール伯爵家と仲がいいんだ。ジェイドとは友人だ」

 私は廊下の角から聞こえてきた言葉に足を止めた。
 そしてランベール殿下と二人で壁に隠れた。
 ランベール殿下は私を見て小声で「知り合いか?」と聞いた。

「いえ、顔も名前も知りません」

「だろうな……」

 ランベール殿下は私を見て小声で言った。

「ジェイドはここにいろ。絶対に出て来るな」

 そう言い残すと、ランベール殿下は男女の前に姿を見せた。

「今、ジェイドの友人だと言ったな? 私もジェイドの友人だがお前の話など聞いたことがない。おい、そこの者名前は?」

 男子生徒は青い顔をして「ランベール殿下……」と呟いて数歩後ろに下がった。
 一方ご令嬢は「ランベール殿下……こんなところでお会いできるなんて光栄です」と目からハートが飛んでいる。しかも空気も読まずに、ランベール殿下に次々に話かけている。

(あの令嬢の心臓鋼だな!!)

 ランベール殿下の顔は見えないがきっと『邪魔するな』と書いてある気がする。積極な令嬢のおかげで男子生徒は「俺、用があったので失礼します」と走って逃げだした。

「待て!!」

 ランベール殿下は追おうとしているが令嬢も必死だ。
 ランベール殿下だってかなり人気があるのだ。そんな殿下と二人っきりになれたのだ。
 向こうだって仲良くなれる絶好のチャンスなのだ。

(ランベール殿下、本当に申し訳ございません)

 私は動くなとは言われたがどうしても気になって、隠れながら逃げた男の後を追うことにしたのだった。



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