【12月末日公開終了】令嬢辞めたら親友認定

たぬきち25番

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最終章 アルフレッドルートを攻略

4 変化した距離

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 アルフレッド殿下とランベール殿下と別れて、私は小さく息を吐いた。

「はぁ……」

 ランベール殿下はいつもと変わらなかったが、アルフレッド殿下は明らかに変わった。

(もう、前のようにはなれないんだろうな……)

「ジェイド!!」

 教室の前で声をかけられて、すぐに肩に手を乗せられた。

「クラウス……おはよう」

 いつも通りに接してくれるクラウスの態度が嬉しくて、私が笑うとクラウスが私の肩に手を乗せたまま言った。

「元気ないな……まぁ、あんなことがあったんだ……元気ないのもわかる」

 そう言われて、私はクラウスもあの令嬢との一連の騒動を見ていたことを思い出した。

「あ、うん」

 そうだ。
 私には使命がある。
 犯人を見つける必要があるのだ。いつまでも落ち込んでいる場合ではない。
 すると、クラウスが私の耳元で小声で言った。

「ジェイド、俺も犯人探し手伝うから」

 私は思わず至近距離で、クラウスを見つめた。

「え? いいの?」

 クラウスは「もちろんだ」と言ってくれた。
 私は小声でクラウスに言った。

「ありがとう、助かる。実は今日の放課後から調査しようと思ってた。どうやら、会話を聞かれているみたいだから、慎重に調査する必要があるけど……」

 するとクラウスが「そうなのか……わかった」と言った。
 その後、授業が始まりそうになったので、昼休みに詳しい話をすることになった。







 授業が終わり、私とクラウスは小声で話をするのに都合がいいので、肩を抱かれて歩いていた。

「昼どうする?」

「ん~~今日は人のいない場所で作戦を立てながら食べない?」

「俺はいいけど……殿下たちはいいのか?」

「うん。別に食べるって言った。きっと先に召し上がっていると思う」

「そうか、ジェイドと昼って滅多にないから嬉しいな」

 アルフレッド殿下の態度が変わったことで、少し落ち込んでいたので、無邪気に喜んでくれるクラウスの明るい笑顔に、心が軽くなった。

「ところで、例の短剣本物だったのか?」

 クラウスが私の耳に口を近づけながら言った。その時だ。

「ジェイド!! 何をやっている!?」

 私は、後ろから手を引かれた。

「え?」

 振り向くと、アルフレッド殿下が怖い顔で私を睨み付けるように手を握っていた。
 クラウスは驚いて、頭を下げた。

「これは、アルフレッド殿下。もしかして通行の邪魔をしてしまいましたか? 申し訳ございませんでした」

 クラウスだけに頭を下げさせるわけにはいかなので、私も頭を下げた。

「アルフレッド殿下、通行の邪魔をして申し訳ございません」

 すると、アルフレッド殿下がさらに眉を寄せながら言った。

「ジェイド、ちょっと来い!!」

「え?」

 私はクラウスを見て「ごめん」と言うと、クラウスは「気にするな」と言ってくれた。

 そして私はアルフレッド殿下に手を引かれて、1号館から特別棟まで来て鍵を借りて、生徒会室に入った。
 生徒会に入った途端に、ドアを背にアルフレッド殿下がドンと両手でドアを塞ぎ、閉じ込められた。
 いわゆる壁ドンだが、かなり怖い。

「ジェイド、いや……ブランカ……何を考えている?」

「何とは?」

 アルフレッド殿下は怒りを滲ませながら言った。

「公衆の面前で、男性に肩を抱かれ、顔を近づけられて……危機感がまるでない!!」

 心の中に様々な色の絵具をこぼしたことにようにぐちゃぐちゃとした感情が渦まいた。

 不安?
 戸惑い?
 罪悪感?

 様々な感情が渦巻く中、私はようやく今の感情にぴったりの感情を拾い上げることが出来た。

――悲しみ。

 そう、私は悲しかった。
 これまで築いてきた人間関係が、一瞬で崩壊したような気分になった。
 
 確かに令嬢が、男性と人前で肩を組むのは問題だ。
 でも、ほんの数日前まで私はアルフレッド殿下と、先ほどと同じような距離感だった。
 それがただ女性というだけで……これまでの関係が全て……壊れてしまった。
 
 私はその時、悟った。

(そうか……犯人を見つけたら、さよならじゃなかった。もうすでにこれまでの関係には戻れない。精神的にはすでに、さよならをした状態だったんだ……)

 私は唇を噛むと絶対に泣かないと誓って頭を下げた。

「申し訳ございませんでした」

 そう言ってただひたすら頭を下げ続けた。
 すると、アルフレッド殿下が手を下げて、少し離れた。

「わかってくれればいい」

 私はどうしても顔を上げることができなかった。
 
「顔を上げてくれ、ジェイド……昼はまだだろう? 一緒に行くか?」

 私はこれ以上ここにいては泣いてしまいそうだったので、精一杯のいつもの表情で言った。

「申し訳ございません。先ほどの授業でわからないことがあったので、聞きに行く途中でした。アルフレッド殿下は先にお召し上がりください。ランベール殿下も待っていらっしゃいます」

「……え?」

 私はアルフレッド殿下に頭を下げた。

「鍵は返しておきます」

「あ、ああ……」

 私が生徒会室を出ると、アルフレッド殿下も生徒会室を出た。
 ガチャガチャと鍵をかけると、私は「それでは急ぎますので、お先に失礼します」と言って、早足でアルフレッド殿下の側を離れたのだった。

 アルフレッド殿下に「ジェイド」と呼ばれた気がしたが、私は振り向くことが出来なかった。

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