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第3章 怖がらず動け、自分!
第44話 変革した未来へ(1)
しおりを挟む正式に留学の話を断ることにした俺は、両親と共に王宮に呼ばれた。
そして謁見当日の朝。
エントランスで父とオリヴァーと一緒にマリーさんを待っていた時、アルにエスコートされながらマリーさんが階段を降りて来た。
(うん、うん。イメージ通りだ。やっぱり似合う。アルの化粧も完璧だな)
俺は思い描いた通りの姿で現れたマリーさんを見て満足していた。
隣で何も言わずに動かない父を不審に思って見上げると、父は頬を真っ赤に染めて唖然としながらマリーさんを見ていた。
「お待たせいたしました」
マリーさんが到着した。
俺は父が先に褒めるだろうと褒めずにいたが、一向に動く様子がないので俺が先に褒めた。
「やはり似合っていますね」
俺の言葉にマリーさんとアルが頬を赤く染めながら言った。
「ありがとうございます、レオナルド様」
「兄さん、ありがとうございます。今回、母上の化粧は全て私がしましたので褒められると素直に嬉しいです」
どうやら今回はアルが全て化粧を担当したようだった。
さすがアルだ。
俺たちが褒めているにも関わらず父は何も言わない。
俺が業を煮やして父の腕に肘を当てた。
すると父が慌てて声を上げた。
「……マリーなのか!?」
(ええ~~!? 当たり前だろ、なんだその言葉!! ここは綺麗だな、とか美しいなって言うところだろ!! 父に褒め言葉を譲って似合うって言ったのに……)
俺の選んだドレスに靴にアクセサリー。そして、アルが手伝った化粧をして現れたマリーさんは正直に言って別人だった。
父はそれに動揺しているようで気の利いたことが全く言えない。
マリーさんはそんな父の様子を気にすることなく言った。
「はい。全てレオナルド様に選んで頂きましたの……まるで自分ではなく別人のようで……夢でも見ているようです。レオナルド様、本当にありがとうございます」
「いえ、では行きましょうか……父上!!」
俺が馬車に向かうと、父が慌ててマリーさんの手を取った。
そして俺は聞こえてしまった。
父が小さな小さな声で、マリーさんに『綺麗だ』と言ったのを!!
思わずアルを見ると、アルは視線を泳がせていた。そしてオリヴァーは微笑ましいと言う表情をしていた。
そして俺は……
(ここは気付かないフリだよな……)
俺は気付かないフリをした。
馬車の中でも二人はなんだか照れてそわそわしていて見ている俺の方が恥ずかしかった。でも、幸せそうな二人を見ると俺まで少し救われた気がした。
これが母の想いを汲んでくれた二人への感謝なのか、以前の生で何も知らずに二人にきつく当たってしまったことへの懺悔の気持ちなのか、よくわからないが……
俺はほっとしながら城に向かったのだった。
+++
王宮に着くと、父とマリーさんと一緒にとんでもなく豪華な部屋に通された。
ソファーに座って待っていると、父が緊張した様子で言った。
「レオナルド……ここは謁見の間の待合室だ。私は爵位を授かる時に一度入ったが……再びここに入ることになるとは思わなかった」
「ここが謁見の間の待合室……」
謁見の間ということはこれからお会いするの国王陛下と王妃殿下ということだ。
(爵位の授与か……)
俺が父の爵位を授かった時のことを想像しているとノックの音が聞こえて、中の衛兵が確認するとアレク殿下が入って来た。
「レオ! それにノルン伯爵夫妻。よく来てくれた。さぁ、父上と母上もそろそろいらっしゃる。一緒に行こう!!」
(そうか……これからお会いするのは、以前パーティーでお会いしたアレク殿下のお母様でもあられるのか……)
アレク殿下の口から『父上と母上』という言葉が飛び出して、少しだけ落ち着いた。もしかして俺を安心させるためにあえてそんな言い方をしてくれたのだろうか?
「殿下自ら我々を迎えに来て下さったのですか!? 至極光栄です」
父はかなり驚いていたが、アレク殿下は「気にするな、ノルン伯爵。息子殿は私の友人だ」と言って笑った。
(アレク殿下のご友人……)
俺はその言葉に感動してしまった。
「アレク殿下、ありがとうございます。それではご案内して頂けますか?」
「ああ。一緒に行こう」
こうして俺は恐れ多くも、文官ではなくアレク殿下のエスコートで、国王陛下の待つ謁見の間に向かったのだった。
謁見の間は、先ほどの部屋以上に豪華絢爛だった。
大きなシャンデリアに、希少な調度品。そして精巧な内装。
どれを取っても一流品だとわかるものばかりだった。
(凄いな……)
圧倒されながら立っていると、アレク殿下は玉座の一段横に立った。
その場所は、王族としての気品のあるアレク殿下にとてもよく似合っていた。
(うわ~~アレク殿……王子様だ……凄いな……かっこいい……)
男の俺でも見とれてしまう高貴な佇まいに魅かれて、じっと殿下を見つけていると、アレク殿下と目があって、片目をつぶられた。
その時だった。
バタンと扉が開いて、国王陛下と王妃殿下とノア様のお父上の宰相閣下……なぜかエリザベス様が入って来た。
(え? どうして、国王陛下たちと一緒にエリザベス様が入って来られるの??)
俺の頭の上には?が乱舞していた。
エリザベス様を見ると、エリザベス様と目が合ってエリザベス様が口角を上げた。
(今の何……怖い……怖すぎる……この選択、大丈夫だったのだろうか?)
陛下たちが玉座に着くと、すぐに俺たちは貴族の礼をした。
「面をあげよ」
父と俺はゆっくりと顔を上げて国王陛下を見た。
「我が国から特別留学生を出すという名誉に選ばれた、レオナルド・ノルン。この度そなたを特別留学生に選んで下さった方は、ケルパトス国の皇女エリザベス殿下である。返事を聞かせてくれ」
(え!? エリザベス様って、皇女様なのか!? そんな方が家のお茶会に?? そればかりか、俺はそんな方の隣に立っていたのか!? 俺……無礼なことしなかったか!?)
思わず白目をむきそうになるのを耐えて、深く礼をした。
「陛下のお言葉光栄にございます。このレオナルド・ノルン。今回の留学は辞退したいと思っております」
俺は恐れ多くて声が震えていたが、なんとかその場を凌いだ。
陛下はゆっくりと言った。
「そうか……実はそう言ってくれてほっとしている。アレクサンダーはそなたのことを気に入っているからな。今度とも共に学んでほしい」
「はい」
俺は陛下に深く礼をしたのだった。
そしてい俺は両親と共に謁見の間を出た。すると、エリザベス様が歩いて来た。
「レオナルド、残念だわ。でも、まだ10歳ですもの。提案するのが早すぎたわね」
「エリザベス様、この度は申し訳ございません」
「いいわ。私が大公の位に就くのは、18歳。つまり後8年後なの。その頃にはレオナルドも卒業しているでしょう? 婚約するのは卒業してからでも構わないし、また定期的に会いに来るわ」
「……………………え?」
そして、エリザベス様は俺の頬にキスをした。
「えええ!?」
そして片目を閉じて、「またね、レオナルド」と言って去っていた。
「え?」
思わず頬を押さえると、隣で父が慌てて声を上げた。
「レオナルド、もしかして、大公家に援助って……皇女様の伴侶としてだったのか!?」
「えええ!? いえ、そんなはずはありませんが!?」
「きゃ~~凄い、隣国のお姫様の寵愛を!! レオナルド様カッコイイですものね!! 凄い!! 凄い!!」
マリーさんは口に手を当てて大興奮だ。
俺はこの状況が全くわかっていなかったのだった。
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