2 / 6
家族
しおりを挟むちょうどひと回り年上の姉が何回目かの ――
(3回目までは覚えていたが、その後は
馬鹿らしくなってカウントするのも止めた)
再婚をした数日後から、
俺の受難の日々は始まった
千早姉ちゃんの今度の旦那・
一ノ瀬 皓さんは
区役所の生活福祉調整課に勤務する公務員さん。
姉ちゃんったら、
今度こそは”添い遂げよう”って
気持ちの表れなのか?
手堅い男捕まえたなぁ……と、思ってたら、
案の定 ”お役所勤務なら夜間の超過勤務も
休日出勤もお得意さんへの接待もかんけーない
でしょ” だって。
2人は入籍した翌日、我が家に引っ越してきたん
だけど……
一ノ瀬さんには亡くなった前妻さんとの間に
13才(中1)の連れ子がいる。
そいつの名前は翔太。
ガキの癖して、肩のちょい上まで伸ばしてる
柔らかな栗毛色の髪はサラサラで、
小動物を彷彿とさせる大きくてクリクリした瞳が
なんとも印象的だった。
けど、こいつのこんな”虫も殺さない”って
見てくれに騙されちゃあいかん!
これまで俺は、国試に受かって研修に突入しても
当分の間は実家暮らしをしようって計画だったが、
この”小悪魔・翔太”も我が家に同居する事になり
考えが180度変わった。
「―― なぁ、りん~、いい加減起きろよぉ」
「るっせぇなっ。今日は日曜日! 夕飯まで
絶対声かけるんじゃねぇぞ」
「引っ越し荷物のお片づけ手伝ってよ」
無視。
「ねぇってば、ねぇってば、ねぇってばっ!!」
「だーーーーっ! もう、うるせぇーな。あっち
行ってろ」
俺は軽く手を払ったつもりだったが、
翔太は大げさに尻もちをついた挙句
大声で泣き出した。
「あ~ん、りんたろ兄ちゃんが頭殴ったぁぁっ!
痛いよぉ ――」
”どどどどどどどど ――”
その泣き声が聞こえるや否や、
地響きをたてて我が家のターミネーター、
長女・千早(37)登場
「りーんたろーぅ!!
ったくもう、あんたって子はいい年をして
いたいけな子供いびるんじゃないわよ」
「お、俺はいびってなんか……」
「さっさと起きて、翔太くんの片付け手伝って
あげなさい」
「え~~~~っ!!」
その次の瞬間姉ちゃんが繰り出した渾身の
ヘッドロックが俺の頭に見事にキマった。
「うぎゃ~ ――
ギブ・ギブ……こんなの卑怯だよ」
チラリと見れば、姉ちゃんの後ろに隠れた翔太は
俺に向かって”あっかんべー”をしてた。
もちろん、姉ちゃんにはバレないように。
こ、この糞ガキ……いつか必ず一矢報いてやる
からな、覚えとけよぉ……。
***** ***** *****
俺ん家、周囲の家よかかなり年季が入った建物
だが、昭和初期に当時の最新技術を駆使して
建てられ。
あの**大震災や大空襲の猛火をもかいくぐって
来たという超レアなプレミア物件 ――。
姉ちゃん夫婦は離れに ――
母屋の1階は今まで通り家長の次兄、
そして2階に俺の部屋や物置……と
「ところでさ、何で翔太も2階なワケ?」
姉ちゃんが使ってた隣の部屋が翔太の部屋に
なった。
「ヘンっ。新婚夫婦の邪魔するほど野暮じゃねぇん
だよ」
「野暮って……ガキの癖にいちいちムカつく奴だな」
俺はブツクサ言いながら、
重い物から先に運ぼうと1人掛けのカウチソファー
を持ち上げた。
「自分は25にもなって兄弟の脛かじってる癖に、
えらそーなこと言ってんじゃねぇよ」
よりによってそのソファーの上に飛び乗り
やがって ――
「重っ ―― 下りろバカ」
「体使うしか脳がないんだから、
今のうち使っておけ」
ったくもう……重ね重ね不躾で可愛くないガキだ。
俺がソファーをわざと傾けると、
翔太は驚いて俺にしがみついた。
「あっぶねえだろ。脳たりんの筋肉ばか」
「うわぁ……いかにもガキっぽい幼稚な表現だ。
あはははは ――」
高らかに笑いとばした俺を、
翔太は赤い顔で睨み付ける。
「う、うるさい ―― 僕は可愛いからいいんだ」
へっ。自分で自分の事 ”可愛い”なんて
よく言えるなぁ。
そうゆう図々しいとこは感心するわ。
*** *** ***
「りんー……りんたろーぅ……起きろよ」
真夜中に翔太が俺を起こしにきた。
「んン……まだ、3時じゃねぇかぁ……」
「ねぇってば、起きてよぉ」
俺は重い瞼を無理矢理こじ開けるよう
持ち上げた。
けど、そんな風に俺を無理矢理起こしやがった
翔太は、顔を真っ赤にしたまま俯き何にも
喋らない。
「こんな時間に人を叩き起こして一体どうゆう
了見だ」
た~っぷり数十秒は黙り込んでいただろうか?
痺れを切らした俺が『勘弁してよぉ』って言うと、
翔太は蚊の鳴くようなか細い声で『トイレ』と
言った。
でも俺は、寝ぼけていたのと、翔太の声が
あまりにも小さ過ぎたのとで、つい『え?』
って聞き返した。すると ――
「……ト、トイレ……一緒に行ってくれ」
「……はぁっ??」
ただでも赤い顔をさらに赤らめ儚い抗議。
「こ、こんな恥ずかしい事、2度も言わせるなよ」
「……なんだよ。1人で行けねぇんか」
「だ、だからこんな恥ずかしい事……」
「あぁ ―― うちのトイレは外にあるし、
離れからも母屋からも一番遠い庭の端っこ
だもんなぁ。中坊のガキが真夜中に
1人で行くのが怖いってのも
分からなくはないが……なぁ、翔太」
「……何だよ」
「人へモノを頼む前に、
そうゆう生意気な自分の態度改めろよ」
「……誰がお前なんかに」
「はぁっ?!」
「ト、トイレ、くらい、1人で行ってやらぁ」
って、出て行ったがその足は明らかに
ブルブル震えていたし……1分も経たないうち
また翔太はこの部屋に来た。
「……頼む、一緒にトイレへ行ってくれ」
「―― くれ?」
「……くだ、さい」
「……分かった。しゃーない、行ってやるよ」
フッ ―― なんだかんだ言っても根はしっかり
お子様なんだな……。
0
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる