7年目の本気

NADIA 川上

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第2章 東京編

もうひとつの再会 そのⅡ

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 冬木はベラの部屋へ向かいながら、
 彼女に話す言葉を考えていた。

 縁談の事実があった事黙ってたのを謝りたい。
 
 自分がきちんとベラに打ち明ければ良かったんだ。
 でも、言ったら嫌われると思って言えなかった。

 最後にデートした時の輝くようなベラの笑顔が 
 今も脳裏に焼き付いていて離れてくれない。
 
 一番傷ついているのはベラ……


 エレベーターに乗り、
 カードキーの番号と同じ部屋の前に立った。

 このドアの向こうにベラがいる……鼓動が速い。

 冬木は深呼吸をして、
 カードキーをドアに差し込んだ。



 ベラは壁の時計を見て、ため息をついた。
 
 やっぱり右も左も分からない外国で。
 方向音痴の和巴を1人放って来たのはマズかった。
 
 なかなか戻って来ない和巴の事が心配になり、
 探しにいこうと立ち上がった時、
 部屋のドアが開いた。


「カズハさっきは ――」


 ドアを見たベラは言葉を切り、
 入って来た人物を見ていた。


「どうして……」

「きちんと話がしたくて」


 冬木はベラに微笑んだ。

 ベラは、冬木の顔を見ながら微動だにしない。
 いや、動けなかったのだ。

 動けないまま、冬木を見つめていた。

 冬木はドアの前に立ったまま動かない。


「とりあえず、座ったら」


 ベラが促すと、冬木は中に入り椅子に座った。
 ベラは立ったまま冬木を見ている。


「べ ―― ベラも、座って」


 下を向いて小さく言葉を発する。


「元気だった?」


 向かい側へ座りながら冬木に声をかけた。
 
 
「うん……」

「……カズハと会ったの?」

「このホテルのロビーで……少し話した」

「そう」


 沈黙が続く。
 何を話して良いか分からない。
 5年ぶりに会えたのに ―― 嬉しいのに!
 
 今すぐにでも抱きしめたい……
 冬木はその気持ちを殺すのに必死だった。

 
「ベラに、謝りたくて」

「何を?」

「僕のせいで、あんな事件に……。僕さえちゃんと
 してれば、キミも京子も傷つける事はなかった……」

「あれは事件なんかじゃなくて、不運な偶然が重なって
 起きた事故だよ」


 冬木は手を握り締める。


「本当にごめん……京子との結婚が避けられないなら、
 キミへの自分の気持ちはずっと隠してれば良かった。
 そしたら、ずっと友達のままで……」

「いられた、とか言う?」

「僕のせいで、あんな事件に……。僕さえ、我慢して
 いればあんな事には……」

「そんなこと言うためにわざわざ来たの?」


 冬木は手を握り締める。


「本当にごめん……
 キミへの自分の気持ちはずっと隠していれば
 良かった。そしたら、ずっと友達のままで……」

「いられた、とか言う?」

「でも……ベラを汚い身体で抱いてしまった。
 それであいつに抱かれている時でさえ、快感を……」

「もう止めてっ!」


 強い口調で遮ったベラの声に、
 冬木の身体が大きく痙攣した。


「もう良いから……そんな、聞きたくない……」

「ご、め……」


 冬木の目から涙が溢れ出す。


「僕がキミの人生を狂わせたんだ。
 幼なじみじゃなければ ―― 出会わなければ
 良かった……」


 冬木の言葉に心臓が締め付けられる。

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