あなた色に染められて ~ 冷徹公爵と恋の駆け引き

NADIA 川上

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神様お願い、2人を返して!

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本当はセシルも父(とう)様や母(かあ)様と一緒に
行きたかった。

でも ――


「ホラ、もう泣かないの。可愛いお顔が台無しよ。
私のセシル。いい子で待っていてね。
おみやげたーくさん買ってくるわ」

「父様達の留守中、何か困った事があったら
ラウルに言いなさい。いいね?
じゃ、イブまでには帰ってくるからな」


そう言って、出かけていった父様と母様は、
約束の(クリスマス)イブを過ぎても
帰っては来なかった。

だから、私は1年のうちでクリスマスが一番大嫌い。


私に知らされたのは、
父様と母様の2人が出先で不慮の事故に遭い
亡くなった、という事と。
2人の遺体は損傷が酷く、
幼い私には見せられないので、
チャド叔父さん(父の次弟)の了解を得、
荼毘に付し私は葬儀に出席だけすればいい、
という事の2点だけ。

何とも、呆気ないものだった。

それだけに私は 
”2人が ―― 父と母が死んだ ” なんて
どうしても受け入れる事が出来ず。

お葬式の場でも、涙ひとつ流さなかった。
だから ――


”やっぱり、なさぬ仲だから” とか、

”今まで育ててもらった恩義とかは、感じないのかしら”

とか、心ない陰口をかなり言われた。



形だけの葬式を終えて、数少ない参列者の人達と別れ、

さて ―― これからどうしようか? と、
葬式会場に借りていた集会所のベンチに腰掛けた。

今日は特にきついお手伝いをした訳でもないのに、
体も心もくたくただった。

2人の死因に若干不審な点があると、
そして、2人はかなり重度の麻薬常習者だった、
なんてアリもしない事を言われ。
私も公安警察からあれやこれや
痛くもない腹を探られ。

せっかく見つけていたオイシいバイトも休んで、
ほぼ1週間警察へ通い詰め事情聴取をされた。

そのたった1週間で私は完璧な警察嫌いになった。

何が一番嫌だったかって ―― 
うちら平民を平然と見下してくる刑事の、
横柄な態度がむっちゃムカついた。

それで私が、終いの2日間位は調べにあまり協力的
じゃなくなったので、奴らは 
”そんな風じゃ親戚の方も何らかの処罰を受けるぞ”
と、子供騙しの脅迫を言ってきたので、
すっかり頭にきてしまい。
以後の事情聴取は完全黙秘を通してやった。

きょうびのお子様を舐めんなよ、小父さん。


だけど ―― ホントこれから、どうしよう?

同じ疑問が繰り返し頭の中を過ぎったけど、
今は何も考えずただ、眠りたかった。

やらなきゃいけない事、
片付けなきゃいけない問題は山ほどあるのに、
体が自分の思うように動いてくれない。

しばらくしてポツリ・ポツリと、
雨が降り出した ――。

それでも私はそこから動く事は出来なくて、
くだんの雨が地面のあちこちに水たまりを作り始め、
水を吸った服が少し重くなったなぁと感じ始めた頃、
急に私の頭上へ降り注いでいた雨だけが
何かで遮断され止まった。


「―― まったく。皆どうかしてる。
子供が1人雨にびしょ濡れだってのに、
声もかけないなんて」


苦微笑を浮かべ、
私の隣で傘を差し掛け立っていたのは、
父様と母様がしていたという借金の債権を
全て取りまとめた金融屋のファビオ。

お葬式の時、確かこの人、叔父さん達とは凄く
おっかない顔で話していたけど、この人の
今の表情はとても穏やかで優しそう……。


「―― で、お前はまだ、ここにいる気なのか?」

「あ、えっと……」


何か答えなきゃと口を開きかけた時、
急にグラっと視界が揺らぎ、次いで意識が遠のき、
目の前が真っ暗になった。
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