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東京編
早く思い出してよ、りゅうじ先生
**大学附属港南台高校、職員室 ――。
「かがみ先生~っ。どうなんですぅ? その後、
商業科のロクデナシ共は」
「ロクデナシ、と、申しますと?」
「あの悪タレ、和泉達に決まってるでしょっ」
「あ、あぁ……ハナシだけはしましたけど、皆んな
普通にいい子達ばかりじゃないですか」
「普通?? 何処がですか?!」
「特に悪い事はしてませんし」
「してるじゃないですかっ! 喧嘩もサボりも
万引きもっ、イジメと強請(ゆす)りまで!」
(イジメに強請《ゆす》り?? いつの間にか
増やされてるよ……)
「いや、それ、もしうちの生徒がやってるのだ
としたら、犯人は別の奴ですよきっと」
「何を根拠にそんな事言ってるんですか。
証拠はあるんですか? 証拠は」
「あ、いや、それは、ないですけど……」
「あいつらが、一体どんな言い訳をしたんだか
分かりませんがね、それをそのまま鵜呑みにして
どうするんです?? 全く! いっそ退学にでも
なるような事をしてくれりゃあいいものを……
それもしない」
「あいつら悪知恵だけは良く働きますからねぇ……
各務先生? あなたに手を上げるなとは
言いましたけど、あなたが巻き込まれるのは一向に
構いませんから。
押さえるべきは、現場の証拠ですよ~」
ムカッ、
(あぁ。そーゆう事かい……!)
何となく読めたよ。
あんたらのセコい思惑がっ。
***** ***** *****
「―― あ、ダサみだぁ」
「ちーっす」
絢音は今日もいつものように久住柾也と
連れ立っての下校だ。
「いいなぁ。もう、帰り?」
「バカ言え、リーマンはお前らの考えてる以上に
忙しいんだぞ」
「あぁ ―― そっか……うちらの見張りね。
大変ですねぇ。帰りは家まで送ってくれる?」
成り行きで、並んで歩き出す ――
「……俺、お前達の事は、喧嘩はもちろん
授業サボるわいじめも万引きも、
悪い事なら殺人と輪姦し以外の何でもありの
ヤンキー集団だと聞いたんだが」
「何それ、いくら何でも酷い言われようだこと」
「うちら万引きとかイジメみたいな卑怯な事は
絶対しないよ。親、泣かせたくないし」
(何だよ、ますますもって普通の生徒じゃん!)
「偉いな」
絢音は「へへ、そーお?」と言いながら、
はにかむように微笑んだ。
その笑みがあまりにもキラキラしていて、
不覚にも竜二はドキリとしてしまう。
(こいつって、いい顔で笑うなぁ)
「でも、喧嘩はどうして止めない?」
「あぁ、アレ? アレは、しいて言うなら、数少ない
趣味だから」
「趣味、って……お前な、万が一それで大怪我
でも ――」
そう言っている所へ他校の不良くん登場!
「おいっ、いずみぃー、今日こそは白黒はっきり
決着つけさせてもらうぜ」
「和泉っ」
「ごめんセンセ、今は目ぇ瞑っといて?」
と、絢音はその不良くんの相手をしに行ってしまう。
「おいっ」
「センセ、止めるなよ。本人も言った通りアレは
あいつの趣味なんだ」
「しかし ――」
「あいつくらい強くなると勝手に不良共が挑んでくる、
良くも悪くも。だから和泉は売られた喧嘩と相手を
選んで買ってるだけだ。
決して和泉は理由もなく人に暴力を振るう奴じゃない。
それだけはセンセにも分かって欲しい」
”弱いよ、バーカ(ぶぁーか)顔洗って
出直しといで!”
絢音と不良くんとのタイマンは、いつもの如く
絢音の一撃でケリがついたようだ。
(おぉ! 一撃かよ。確かに、
悪魔かも知れん……)
「お待たせぇ。あ~ぁ、だめだ、今の全然楽しく
なかった」
「あのなぁ……」
「センセ、やっぱ私チクられる? 山ノ内に」
「……タイマンだったしな。部活って事にしといて
やる」
「部活?? アハハハ ―― やっぱセンセって
最高!」
「お前、笑い事じゃねぇだろが。ってか”やっぱ”
ってのは、何なんだよ? この間も言ってたろ」
「あ~ ―― 早く思い出してよ、センセ」
「えっ?」
「じゃ、また、明日ね~、りゅうじセンセ」
取り残された竜二は自問を繰り返す。
以前何処かで会った? ―― 何処で?
あんなにインパクトが強烈な娘、
そう簡単に忘れるハズはない、よな……。
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