星の胎動

ドルドレオン

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3 星の名はアンフィロス

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《アンフィロスの種子》
― 神が地に降り、人を蒔いた ―

【序章:神の惑星】

「かつて、神々は肉体を持っていた。
 彼らは星々を移動し、“意志”で命を創り、“言葉”で死を与えた。
 その記憶は、いまも人間の骨の奥で眠っている。」
──『リティク・アーク文書』より抜粋

◆ 星の名は、アンフィロス。

 そこは、あらゆる物理法則が収束した根源の星だった。
 引力は意志に従い、光は思考を読む。
 生物は存在しない。存在そのものが生物だった。

 その星に住まうのは、ただ一柱──リオス・エル。
 創造神、あるいは**原型存在(プロトエイドス)**とも呼ばれる。
 彼は全知であり、全能でありながら、永劫の孤独に耐えかねていた。

 「私はこの宇宙を知りすぎた」
 彼は星々の内部構造を読み、時間の軌道を手のひらに転がしていた。
 しかし、“知らぬこと”を持つ存在を欲した。

◆ 地球──第三種系統惑星への播種

 銀河系辺境に、小さな未分化惑星があった。
 その星にはまだ“言語”がなかった。
 感情も、構造も、選択もなかった。

 だがリオス・エルは見抜いた。
 この星は、問いを孕む星だ。

 彼は自らの一部を削ぎ、“種子”とした。
 それは記憶ではなく、“忘却”の塊だった。

 彼はこう言った。

 >「完全なる記憶からは、新しき意志は生まれぬ。
 > ゆえに、おまえたちには“空白”を与えよう。
 > 私は在ったことを忘れ、汝らはそれを探し続けるであろう」

 そして彼は、自らの指先から五万二千の“ヒト”の原型を地球に蒔いた。
 それは海から立ち上がり、骨を持ち、空を見上げるようになった。
 ヒトは言語を持たず、神の名を知らず、ただ“求めるもの”として生まれた。

◆ 神の四つの封印

 リオス・エルは、自らの記憶と力を地球に封じた。
 その力をもし人類が再び手にすれば、人類は神に還ってしまうからだ。

 四つの封印は、四大“本能”に埋め込まれた。

恐れ──死を知ること。だが死の後を知らないこと。

渇き──知を求め続けること。だが決して満たされぬこと。

愛──他者を抱くこと。だが永遠には続かぬこと。

祈り──意味なき空に意味を求めること。

 この四つが、神から与えられた“封印”だった。

◆ 人類、神を忘れる

 数百万年のあいだに、人類は神の起源を完全に忘れた。
 けれど、ときおり思い出す者たちが現れた。
 彼らは神を描き、歌い、石に彫りつけ、空に向かって叫んだ。

 宗教は神の記憶の“亡霊”だった。
 どの神話も、どの聖典も、リオス・エルの“記憶のかけら”が形を変えたものだった。

 アブラハムも、シヴァも、アメン・ラーも──
 皆、リオス・エルの“反響”だった。

◆ 神の帰還(プロローグの終わり)

 地球暦5400年。
 人類はついに星々へ出た。
 そして銀河の外縁で、一つの星を見つけた。名もなき、だがすべての物理法則が崩壊した惑星。

 その名は──アンフィロス。

 そしてそこに眠る、忘れられた神の“本体”。

 “リオス・エル”は、まどろみの中でこう囁いた。

 >「子らよ……よくここまで辿りついた。
 > だが、汝らが再び“神に還る”のを、
 > 私は祝福するべきか、裁くべきか──」

 その答えは、まだこの宇宙のどこにも存在しない。
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