欠番の塔

ドルドレオン

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1. 数字がひとつ消えた日

その朝、アーロン・ヴァーレイは数字の抜けた政府報告書を手にしていた。

分厚い白黒印刷の報告書は、ワシントンDCの国家物流審査局から送られてきたもので、無味乾燥なページにトラックの登録数や道路修繕計画、インフラ予算の割り当てが延々と並んでいた。
ただ、ひとつだけおかしなことがあった。

「17」という数字が一度も出てこない。

報告書のどこを見ても、16の次は18になっている。
17番目の橋梁は存在せず、17ドルの補助金は記載されておらず、17ページはスキップされていた。
アーロンははじめ、ただの印刷ミスだと思った。だが、どのデータセットでも同じように“17”が欠落していた。

彼はこれを上司のダナに見せた。

「きみは昨日、何か変なものを食べたか?」

「ローストビーフのサンドイッチだけです」

「それが原因だな。あれは“データの気づき”に敏感になるらしい」

アーロンは苦笑しつつ、報告書の末尾に書かれた承認番号を読み上げた。

Logistical Clearance Code: 16-18-19-20-…

「17が飛ばされてる」と、アーロンは言った。

ダナは書類をしばらく眺めたあと、口の中で「セブンティーン……」とゆっくり唱えた。まるで、その言葉自体がすでに不安定になっているかのように。

「これは……見なかったことにしたほうがいい」

「それは、17が“見えない”ものになっていると、認めることになりませんか?」

「アーロン、きみは欠番という概念を知ってるか? 映画、議事録、マンションの階数……存在していたはずなのに、“なかったことにされた”数字。だが、それらの多くは意図されたものだった。でも、これは違う。“17”は、誰かが意図して消したんじゃない。“世界のほうが先に忘れた”んだ」

アーロンはその言葉に引っかかった。

「じゃあ、僕はなんでそれに気づけたんでしょう」

「たぶん、17番目の何かだったんだよ、きみが」

2. 欠番の塔

その日の夜、アーロンは奇妙な電話を受けた。
ディスプレイには発信元不明、音声も電子的に加工されていた。

「アーロン・ヴァーレイ。
きみは“第17観測点”に登録されていた最後の個人だ。
君の存在が確定された瞬間、17という数字が確定してしまう。
それは危険だ。
我々は、それを調整するためにきみを削除する必要がある」

「誰だ?」

「われわれは“17”のない世界の保守者。K・S・Sと呼ばれている。
正式には、“Key Sequence Suppressors”。
すべての連続性から、不都合な要素を抜き取る者たち」

「不都合?」

「存在してはいけない接続点。
数列における“意図されていない中間”。
簡単に言えば——きみのような存在だ」

電話は切れた。
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