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第十五話 舞踏会の幕開け
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舞踏会の夜が近づくにつれ、王都の空気は一層張り詰めていった。
表向きは華やかな祝祭の準備で街全体が浮き立っている。だが裏では、誰もが薄々感じていた――今回の舞踏会には、ただならぬ緊張が漂っているのだ。
(これは……単なる社交の場じゃない。罠だ。セリーヌ様を狙った、隣国の仕掛けた陰謀……!)
その確信が胸を締め付ける。
「アリシア、こっちを見てちょうだい」
振り返ると、鏡の前に座ったセリーヌ様が私を見上げていた。
彼女は宮廷仕立て屋が用意した豪奢なドレスを羽織っている。
「ど、どう……かしら?」
その姿を見た瞬間、息が止まった。
深紅のシルクが流れるように広がり、金糸の刺繍が炎のように輝いている。宝石を散らした首飾りは、まるで夜空を切り取ったかのよう。
「はぁぁぁ……尊い……!」
思わずその場で崩れ落ちそうになる。
「ちょ、ちょっと! アリシア、大げさよ!」
「いえ! そんなことありません! この世に生まれてきてくださってありがとうございます、セリーヌ様!」
「な、何を言っているの……」
セリーヌ様は頬を染めて視線を逸らす。
その一挙一動すら、私には尊すぎて眩しかった。
(でも……この尊さが標的にされるなんて、許せない!)
準備の合間にも、私は密かに動いていた。
使用人たちに紛れて舞踏会会場となる王宮大広間を下見し、怪しい動線や影の溜まり場を洗い出す。
警備の騎士団にも口を挟み、不審な動きを見逃さないように根回しする。
「アリシア嬢、気配りが過ぎてますよ」
エドモンドが苦笑しながら耳打ちしてきた。
「当然です! 推しを狙う輩がいるのに、じっとしていられますか!」
「……その熱意、いっそ正式に警備任務をお任せしたいくらいです」
そして迎えた舞踏会当日。
王宮の大広間は、豪奢なシャンデリアと無数の燭台に照らされ、宝石箱のような光景を生み出していた。
各国の使節や貴族たちが着飾って集まり、煌びやかな音楽と談笑が渦を巻く。
その中央に、セリーヌ様が立っていた。
深紅のドレスを纏い、微笑む姿は、まるで舞台に降り立った女神。
「…………っ!」
私の胸が破裂しそうになる。尊すぎて涙が滲んだ。
(でも泣いている場合じゃない! 今日こそ、敵は必ず仕掛けてくる!)
その予感はすぐに現実となった。
「セリーヌ嬢、よろしければ一曲を」
そう言って歩み寄ったのは、隣国フェルザークの使節団の青年だった。
外面は礼儀正しいが、その瞳にはどこか冷たい光が宿っている。
(出た……! あれが仕掛けの一歩目!)
私はすぐさま駆け寄り、勢い余って彼の前に立ちはだかった。
「だめですっ!!」
場が一瞬、凍り付く。
「……え?」
「な、何を言っているの、アリシア?」
セリーヌ様が困惑した表情を浮かべる。
青年使節はわずかに口元を歪めた。
「理由を伺っても?」
「セリーヌ様はお美しすぎて、庶民が直視するだけで気絶してしまいます! ましてやダンスなんて! 王国の宝を
無遠慮に独占するなんて、許されるはずがありません!」
……完全に推し活暴走発言だった。
けれど、笑いが場を和ませる。
使節は一歩退き、「ではまた後ほど」と引き下がった。
セリーヌ様は呆れたように、けれどどこか安心したように私を見つめた。
「本当に……あなたって人は」
音楽が続く中、私は人混みの中に紛れる黒い影を見つけた。
給仕に扮した男が、懐から小瓶を取り出そうとしている。
(やっぱり! 毒……!)
私は迷わず突進した。
豪快にテーブルをひっくり返し、ワインの入った小瓶を奪い取る。
「きゃああっ!」
悲鳴とどよめきが大広間を駆け巡る。
騎士団がすぐさま男を取り押さえ、証拠の小瓶を押収した。
「……やってくれたな、アリシア嬢」
エドモンドがため息混じりに笑う。
「当然です! 推しの尊い命を守るためなら、テーブルの十や二十、いくらでも犠牲にします!」
「……被害は一卓で済みました。立派な働きです」
場は一時騒然としたが、すぐに収拾され、舞踏会は続行された。
セリーヌ様は私の腕を掴み、心配そうに覗き込む。
「アリシア……怪我はない?」
「ありません! 尊いセリーヌ様のおかげで、痛みすら幸福に変わりました!」
「もう……」
呆れながらも、その瞳は柔らかい。
私は胸の内で叫ぶ。
(守れた……! でもこれは序章にすぎない。隣国はまだ仕掛けを用意しているはず。次は……決定的な証拠を掴んでみせる!)
こうして、舞踏会の幕は開かれた。
華やかな音楽の裏で、静かに、確実に――陰謀の影が伸び始めていた。
表向きは華やかな祝祭の準備で街全体が浮き立っている。だが裏では、誰もが薄々感じていた――今回の舞踏会には、ただならぬ緊張が漂っているのだ。
(これは……単なる社交の場じゃない。罠だ。セリーヌ様を狙った、隣国の仕掛けた陰謀……!)
その確信が胸を締め付ける。
「アリシア、こっちを見てちょうだい」
振り返ると、鏡の前に座ったセリーヌ様が私を見上げていた。
彼女は宮廷仕立て屋が用意した豪奢なドレスを羽織っている。
「ど、どう……かしら?」
その姿を見た瞬間、息が止まった。
深紅のシルクが流れるように広がり、金糸の刺繍が炎のように輝いている。宝石を散らした首飾りは、まるで夜空を切り取ったかのよう。
「はぁぁぁ……尊い……!」
思わずその場で崩れ落ちそうになる。
「ちょ、ちょっと! アリシア、大げさよ!」
「いえ! そんなことありません! この世に生まれてきてくださってありがとうございます、セリーヌ様!」
「な、何を言っているの……」
セリーヌ様は頬を染めて視線を逸らす。
その一挙一動すら、私には尊すぎて眩しかった。
(でも……この尊さが標的にされるなんて、許せない!)
準備の合間にも、私は密かに動いていた。
使用人たちに紛れて舞踏会会場となる王宮大広間を下見し、怪しい動線や影の溜まり場を洗い出す。
警備の騎士団にも口を挟み、不審な動きを見逃さないように根回しする。
「アリシア嬢、気配りが過ぎてますよ」
エドモンドが苦笑しながら耳打ちしてきた。
「当然です! 推しを狙う輩がいるのに、じっとしていられますか!」
「……その熱意、いっそ正式に警備任務をお任せしたいくらいです」
そして迎えた舞踏会当日。
王宮の大広間は、豪奢なシャンデリアと無数の燭台に照らされ、宝石箱のような光景を生み出していた。
各国の使節や貴族たちが着飾って集まり、煌びやかな音楽と談笑が渦を巻く。
その中央に、セリーヌ様が立っていた。
深紅のドレスを纏い、微笑む姿は、まるで舞台に降り立った女神。
「…………っ!」
私の胸が破裂しそうになる。尊すぎて涙が滲んだ。
(でも泣いている場合じゃない! 今日こそ、敵は必ず仕掛けてくる!)
その予感はすぐに現実となった。
「セリーヌ嬢、よろしければ一曲を」
そう言って歩み寄ったのは、隣国フェルザークの使節団の青年だった。
外面は礼儀正しいが、その瞳にはどこか冷たい光が宿っている。
(出た……! あれが仕掛けの一歩目!)
私はすぐさま駆け寄り、勢い余って彼の前に立ちはだかった。
「だめですっ!!」
場が一瞬、凍り付く。
「……え?」
「な、何を言っているの、アリシア?」
セリーヌ様が困惑した表情を浮かべる。
青年使節はわずかに口元を歪めた。
「理由を伺っても?」
「セリーヌ様はお美しすぎて、庶民が直視するだけで気絶してしまいます! ましてやダンスなんて! 王国の宝を
無遠慮に独占するなんて、許されるはずがありません!」
……完全に推し活暴走発言だった。
けれど、笑いが場を和ませる。
使節は一歩退き、「ではまた後ほど」と引き下がった。
セリーヌ様は呆れたように、けれどどこか安心したように私を見つめた。
「本当に……あなたって人は」
音楽が続く中、私は人混みの中に紛れる黒い影を見つけた。
給仕に扮した男が、懐から小瓶を取り出そうとしている。
(やっぱり! 毒……!)
私は迷わず突進した。
豪快にテーブルをひっくり返し、ワインの入った小瓶を奪い取る。
「きゃああっ!」
悲鳴とどよめきが大広間を駆け巡る。
騎士団がすぐさま男を取り押さえ、証拠の小瓶を押収した。
「……やってくれたな、アリシア嬢」
エドモンドがため息混じりに笑う。
「当然です! 推しの尊い命を守るためなら、テーブルの十や二十、いくらでも犠牲にします!」
「……被害は一卓で済みました。立派な働きです」
場は一時騒然としたが、すぐに収拾され、舞踏会は続行された。
セリーヌ様は私の腕を掴み、心配そうに覗き込む。
「アリシア……怪我はない?」
「ありません! 尊いセリーヌ様のおかげで、痛みすら幸福に変わりました!」
「もう……」
呆れながらも、その瞳は柔らかい。
私は胸の内で叫ぶ。
(守れた……! でもこれは序章にすぎない。隣国はまだ仕掛けを用意しているはず。次は……決定的な証拠を掴んでみせる!)
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