グレート・プロデュース  〜密かに国をコントロールする最強のエージェントは、恋に落ちた王女を大帝王に即位させることができるのか?〜

青波良夜

文字の大きさ
52 / 136
第四章

No.052

しおりを挟む
 ソウデンの魔法により、俺たちはあっという間に目的地の上空にたどり着いた。
 下には、緑に覆われた小高い山が見える。その北東方向に、巨大な都市群がある。
 
 山の中では、巨大な球形の怪物と、プリたちの戦いが繰り広げられていた。
 かなり苦戦しているようだが、プリのおかげでどうにかギリギリ足止めできているといった感じだ。

「降りますか、団長」

 ウミボウズの上空でいったん静止し、ソウデンが聞いてくる。

「いや、ちょっと待て」

 俺はそう答えた。
 すると、俺にしがみついていたメリーナが、泣きそうな声をあげる。

「どうして!? 早く降りよう。わたし、高いところ苦手なの……」
「でも地上より、ここからの方が太古の魔獣を仕留めやすい」
「本当に? じゃあ、お願いよ。早く終わらせて……」
「仕留めるのは俺じゃない。メリーナがやるんだ」
「えっ……ええぇっ!?」

 メリーナは俺にしがみつく手に、さらに力を込める。
 そして大げさに首を振って否定するのだった。

「ムリムリムリ! 絶対にムリよ! わたし、普通サイズの魔獣すらほとんど倒したことないのよ? しかも、こんな高所から? ムリに決まってるわ!」

 この意見には、ソウデンもうなずいていた。

「僕も団長がやるべきだと思います。というか、僕は団長の活躍が見たいです。でなければ、僕に命令してください。どのような厳しい条件を課せられても、必ず命令を遂行してみせますから」
「それじゃ意味がないんだよ」

 俺はそう答え、続けて無線の向こうに話しかける。

「アイマナ、この無線をロゼットたちに繋ぐことはできるか?」
『もちろん可能ですよ。はい、どうぞ』

 無線が繋がったらしい。
 俺は下にいる三人に語りかける。

「プリ、ロゼット、ジーノ、状況はどうだ?」

 すると下にいる三人が、辺りを見回しながら口々に反応する。

『ライちゃん!? ライちゃんの声がするわね!』
『ライライ、遅いわよ! 早く助けにきて』
『ボス……オレ、もう死にそうっす……』

 声を聞く限り、三人ともかなり疲弊しているようだ。
 これはさっさと決着を着けてやらないと……。

「これからウミボウズを仕留める。三人は俺の指示に従ってくれ」

 そう伝えると、プリがいち早く反応する。

『ライちゃん、どこにいるわね!』
「上だよ。上空にいる」

 俺の言葉に反応し、三人が空を見上げる。
 と、プリがさっそく俺たちを見つけたようだ。
 と思った次の瞬間――。

「ライちゃぁぁぁん!」

 プリが思い切りジャンプし、俺たちのすぐ横まで飛び上がってくる。
 そして、俺にしがみついてきた。

「あぶなっ! やめろ、プリ!」
「なんでわね! プリがんばったわね!」
「そんな話はしてない! バランスが崩れて危ないって言ってんだ!」

 魔法自体はソウデンが操ってるから、そう簡単に落下することはない。
 だが、プリが乗っかってきたせいで、俺の身体は激しく揺さぶられていた。

「きゃあああぁぁぁぁぁぁ――落ちるううぅぅぅぅぅ――」

 メリーナが叫びながら、俺にしがみついてくる。
 恐いのはわかるが、俺にしがみつくのは逆効果だ。

「メリーナも離れろ! それぞれ単独で浮遊してる状態なんだから、離れた方が安定するんだぞ」
「イヤイヤイヤイヤ! 恐い恐い恐い恐い!」

 メリーナからは、何がなんでも離さないといった意志を感じる。
 こりゃダメだ。説得は諦めよう。

「プリ、俺の頭じゃなくて、背中の方にこい」
「わかったわね」

 プリをおぶった状態になり、ようやく姿勢が安定する。
 それで俺は一息つけたが――。

『ちょっと、プリ! なにやってんのよ! あんたが抜けたら、こっちがもたないでしょ!』

 無線を通して、ロゼットの怒鳴り声が聞こえてくる。
 しかし、そんな理屈がプリに通じるはずがなかった。

「プリ疲れたわねぇ……。ライちゃんと帰るのよぉ~」

 そう言うと、プリは俺の背中で動かなくなってしまった。
 まるで遊び疲れた子供のようだ。

 まあ実際プリのおかげで、今まで耐えられていたのだろう。
 それだけ頑張ってくれたという証明でもある。
 少しくらいは休ませてやりたいものだ。

 ただしその分、残された下の二人が地獄を見ることになるが。

『ライライ、早くなんとかしてよ! って、ジーノ! なにサボってんだテメー。もっと死ぬ気で食い止めろ!』
『ヒィー勘弁してくれー。オレ、大した魔法使えないんだから』
『はあ? ふざけんなよ! だったらその身体で止めやがれ!』
『そんなことしたら一瞬で死ぬわ! ロゼットこそ、もっと魔法で止められねぇのかよ!』

 ロゼットとジーノの言い合いが無線を通して聞こえてくる。かなりの修羅場っぽいが、まあ元気そうだし、もう少し耐えられるだろう。
 と思った次の瞬間――。

 ゴオオオオォォォォォッ!

 空気を震わせる轟音と共に、目の前に炎の柱が立ち昇った。
 地上から、俺たちのいる上空まで届く、巨大な火炎の柱だ。

 どうやら、ロゼットがキレてしまったらしい。
 無線を通して、ジーノとロゼットの壮絶なやり取りが聞こえてくる。

『うおぉいぃ! 燃えてる! 周りの木、めっちゃ燃えてるよ!』
『テメーがやれって言ったんだろ、ジーノ! お前のせいだからな!』
『ヤベーぞ、この女! 山火事をオレのせいにしようとしてる! ボスー! 早く助けてくれー!』

 どうやら状況は悪化してしまったようだ。
 しかし残念ながら、この場にいるほぼ全員が、この事態を真剣に受け止めていない。

「団長、見てください。ウミボウズが炎に巻かれて行き場を失ってますよ。でも、炎の勢いも尋常じゃないですね。周りの木に、どんどん燃え移ってますよ。これじゃ僕らも、いよいよ下には降りられませんね」

 ソウデンはまるで他人事のように実況していた。
 一方、メリーナは俺にしがみついたまま、ずっと震えている。

「大丈夫大丈夫……絶対に落ちないから……ライがいれば大丈夫。ライはわたしの恋する人だから……大丈夫大丈夫……」

 メリーナは意味不明な呪文を繰り返していた。どうやら、それで自分を落ち着かせようとしているらしい。
 そして、俺の背中では――。

「ぷみゅ~、すーすー……プリ、次はアジをもらうのよ~……ぷみゅ~」

 プリがめちゃくちゃ寝言をつぶやいていた。

 俺の口からは、深いため息が出てしまう。
 そこへ、アイマナからの報告がくる。

『センパイ、どうやら限界のようです。ニュールミナス市に、山火事の通報が届き始めました。すぐに消防隊も派遣されますよ』
「悪いが、俺は諦める気はない」
『諦めないって、先輩が太古の魔獣を仕留める以外に何があるんですか?』

 俺の目的はただ一つ。この任務――メリーナを、グランダメリス大帝王に即位させるという任務を、達成することだけだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...