グレート・プロデュース  〜密かに国をコントロールする最強のエージェントは、恋に落ちた王女を大帝王に即位させることができるのか?〜

青波良夜

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第七章

No.084

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 近代的な魔導兵器を装備した武装兵は、サンダーブロンド家の護衛兵とは明らかに違っている。外部から侵入してきたのだろう。

 最初に気配を探った時は、カミラしかいないと思ったが……。
 くそっ、魔導艦の方に気を取られすぎたな。

「カミラ……どういうこと……?」

 メリーナは困惑した様子でつぶやく。
 すると、カミラと呼ばれた侍女の顔に、意地の悪そうな笑みが浮かぶ。

「メリーナ様こそ、どういうつもりですか? 即位式の直前に、男を連れ込んで」
「別に連れ込んだわけじゃ……」
「いいんです。別にあなたの青臭い言い訳なんて聞きたくありません。ただ、無駄な抵抗はしないでくださいね」
「カミラ……」

 信頼していた人間に裏切られたことで、メリーナはショックを受けていた。とても抵抗なんてできそうにない。
 カミラはそれを察したのか、俺に視線を向けてくる。

「あなたも、妙な動きはしないでくださいね。そうでないと、大好きなお姫様が穴だらけになりますよ?」

 カミラがそう言うと、周りの武装兵たちが一斉に小銃を構える。

「お前は何者だ?」

 俺は目の前に立つ女に問いかけた。
 すると彼女は、わずかに眉間にシワを寄せる。

「発言は許可してませんよ、『ライ・ザ・キャッチー』さん」
「お前がどこまで情報を与えられてるのか知らないが、俺を甘く見ない方がいい」
「自意識過剰な人ですね。あなたのことなんて、名前と顔くらいしか聞いてないですよ。でも、GPAが下っ端まで偉そうだってことは、いま覚えました」

 それほど期待せずに揺さぶってみたが、思ったよりも情報を得られた。
 まず、この女は、GPAの工作員じゃない。
 それに、俺のことを聞かされていないとなると、どこの組織でも大した地位には就いていないはずだ。

「そういうお前こそ、下っ端じゃないのか?」

 俺はさらにカミラを挑発してみた。
 すると、彼女は急に目を吊り上げて叫んだ。

「黙れ! 今すぐ殺してやろうかっ!」

 カミラは自らも銃を抜き、俺の方に突きつけてくる。

「やめて、カミラ!」

 メリーナが悲痛な声で訴える。しかし、カミラが従うことはない。
 なぜなら、この女は本物のカミラじゃないからだ。

「魔法で外見は変えられても、中身の擬態能力は低いな」

 俺はカミラにそう言ってやった。
 すると彼女は、さらに激しい怒りを露わにする。

「テメェ! マジでぶっ殺してやるよ。GPAだからって、調子に乗るんじゃねぇぞ!」
「殺す気ならすでにやってる。お前が受けた命令は、メリーナと俺の拘束なんじゃないか?」
「このクソ野郎……」

 随分とガラが悪い奴だ。いくらバレたとはいえ、もう少し演技しといた方がよかったと思うんだけどな。

「本当にカミラじゃないのね……」

 メリーナも、すっかり理解したようだ。
 この女が偽物だということを。

「だったらなんだってんだよ? 今さらバレたところで、お前らに何ができる?」

 カミラもどきが余裕ぶった物言いをする。
 随分と感情的な奴だ。この手のタイプからは、情報を引き出しやすいんだが。

「本物のカミラはどこなの?」

 メリーナが問いかける。
 だが、さすがにそこまで教えてくれるほどの馬鹿じゃないらしい。

「大人しくついてきたら教えてやる」
「……約束よ」

 メリーナは偽カミラの言葉に釣られて歩き出そうとする。
 しかし俺はその腕を掴んで止める。

「ライ……お願い。カミラを助けたいの……」
「ここで大人しくついていって、カミラが帰ってくる保証はない」

 俺がそう言うと、耳の奥のイヤーピースから声が聞こえてくる。

『カミラさんたちの捜索はこっちで対応します』

 アイマナの声は俺以外には聞こえていない。
 だからこそ目の前の女も、勝ち誇った笑みを浮かべているのだ。

「保証がないからどうだってんだ? お前らに選択する権利なんかねぇよ」

 武装兵は依然として銃口を向けたままだ。
 さらに窓の外では、浮遊魔導艦ふゆうまどうかんの攻撃が断続的に続いていた。

 ドーンッ!

 宮殿が悲鳴を上げるように、激しく揺れる。
 このままでは、いつまで持つか……。

「そろそろだな。お前ら、ついてこい」

 偽カミラは、タイミングを計ったかのように言う。
 すると、浮遊魔導艦からの攻撃がピタリとやんだ。

 やはり連携してるのか。
 このままだと、連れていかれる先は浮遊魔導艦になりそうだな。

 さすがにそれはまずい……。

「ほら、行くぞ」

 偽カミラが号令をかけると、武装兵たちが俺とメリーナを取り囲む。
 そして、銃口に押し出されるように、俺たちは歩き出した。


 ◆◆◆


 宮殿内の廊下には、サンダーブロンド家の護衛兵も侍従の姿もなかった。
 広々とした空間を、俺とメリーナは並んで歩いていく。銃口を向ける武装兵たちに囲まれながら。

「ねぇ、ウチの者たちをどうしたの?」

 ふいにメリーナが尋ねた。
 すると、偽カミラは得意げな様子で答える。

「ウチの急襲部隊は優秀だからな。警戒もしてない奴らを制圧するなんざ、朝飯前だよ」
「みんなは生きてるの?」
「フン! 私らを十三継王家みたいな悪魔と一緒にするんじゃねぇよ」
「悪魔? なんでわたしたちが悪魔になるのかしら?」
「歴史を振り返ってみろ。お前ら十三継王家は、魔法を独占して人々を支配し、思うままに権力を振るってきた。そのせいで、どれだけの人が苦しめられたと思ってるんだ?」
「わたしたちは、そんなことはしてないわ!」
「黙れ! 私らは<真の歴史>を知ってるんだ!」

 偽カミラは吐き捨てるように言う。
 本人にその自覚はないだろうが、メリーナはいい仕事をしてくれた。
 今の会話で、こいつらの正体がおおむね推測できた。

 そこに、ちょうど耳の奥から声が聞こえてくる。

『センパイ、返事はできないと思うので、黙って聞いてください。その武装兵たちは、やはり<泥だらけの太陽>の構成員です。<真の歴史>という単語も、彼らが好んで使うワードなので、間違いありません』

 アイマナから裏も取れた。つまり、こいつらは浮遊魔導艦の仲間ってことだ。
 どうやら、初めから浮遊魔導艦を囮にして、この武装兵たちでメリーナを拘束するつもりだったみたいだな。

 しかし、それにしても疑問は残る。
 メリーナに狙いを絞っていること、そして俺も一緒に拘束しようとしている理由がわからない。

 いずれにしろ、この状況を抜け出すのが先か。
 せめて、本物のカミラの安否だけでもわかればいいんだが……。

 そう考えていたところに、また耳の奥から声が聞こえてくる。

『センパイ、ロゼットさんから連絡がありました! 拘束されていた、サンダーブロンド家の侍従たちを発見したそうです。カミラという名の女性も健在です。それと、王宮内の使用人は、護衛兵も含めて撤退の指示を出しました』

 さすがウチの連中だ。俺からの連絡がなくても、ちゃんと仕事をしてくれている。
 それなら後は、俺とメリーナが、この状況を脱するだけだ。

「おい、お前! なに止まってんだ?」

 急に立ち止まったせいで、偽カミラに怒鳴りつけられた。
 メリーナも不安そうな目で見つめてくる。

「ライ……どうしたの?」

 俺はメリーナの腕を掴んで引き寄せる。
 と、周りの武装兵が一斉に引き金に指をかけた。

「おいおい、そいつはやめといた方がいいんじゃないか?」

 偽カミラの顔にも緊張感が滲む。
 どうやら、いざという時は、攻撃することも許可されてるようだ。

「ライ……」
「メリーナ、俺を信じてくれ」

 俺はそれだけを彼女に告げる。
 と、メリーナは何も言わずに抱きついてきた。

「なんでこんな至近距離で、テメェらのメロドラマを見せらんないといけないんだよ?」

 偽カミラは、今にも攻撃命令を出しそうな雰囲気だ。
 しかし、俺は構わずに言う。

「全員、現場を離脱しろ」

 偽カミラが、頭の上に大きな『?』マークを浮かべる。
 が、すぐにその表情がハッとなる。
 思ったよりは察しがいいらしい。
 だが、遅い。

空間を越える穴ジャンプホール

 俺は魔法を発動させた。
 次の瞬間、目の前の景色が飛んだ。
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