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お手伝いは障子の張替え

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 長屋。
 同じような子たち。

 そこから察するに、子一郎のような親のない……みなしごのような子は、それなりにいるようで。
 特別珍しいものではないようで。
 でもそれは問題ではないか?
 そんなものが珍しくないなんて、私のいた世界とはやはりまるで違うのだと思い知らされる。
 私が考えつつも手を動かしていたおかげで、繕い物はもう終わってしまった。子一郎は見えないだろうが、うしろを見ようとする仕草をする。
「ありがと!」
 明るく言われて、私もにこっとしてしまう。
「いいえ。私に手伝えることがあったら言ってね」
「うん! じゃ、おれは自主稽古でもするかなぁ」
 子一郎も私に笑い返してくれて、それから子一郎はあとからやってきたほかの子供たちと稽古をはじめたようであった。

 私はお流を手伝って、夕食の支度をする。
 この世界の食生活は基本的に質素だ。米と野菜が中心。そういうところも昔の日本のようなのであった。
 炊いたご飯、煮物、味噌汁。
 そんなものだったが、道場の皆、宗太郎やお流をはじめとした、門弟だというひとたちは美味しそうに食べてくれて。

 でも。

 辰之助は戻ってこなかった。
 てっきり夕食までに戻ってくると思ったのに。
 私は気にしてしまいつつも、そういうこともあるだろうと、食べ終えて、後片付けをして、居させてもらっている長屋へ帰ることにしたのだけど。
 どうも事態は穏やかではなかったのである。
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