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第0話 前章
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濁流がすべてを飲み込む。大木がめきめきと音を立てて倒れた。どぶみたいな色をした水流がそれを振り回す。
あっぷあっぷしている僕の真横を掠めて、ほかの木々をなぎ倒しながら水は次から次へと溢れていく。
きっと世界が終わる日はこんな風だったのかな、なんて現実逃避したがる頭がぼんやりと考える。
でもここに、方舟なんてない。
一段と高い波がどぷんと僕らに襲い掛かる。
そいつは僕の眼前でグワッと鎌首をもたげ、僕ではなく背後にいたミコトに襲い掛かった。
キャインと甲高い悲鳴がして、それにひるんだ瞬間濁流は僕の手からリードをかっさらっていった。必死に手を伸ばしても、みるみるうちにミコトは小さくなっていく。
「もうやめて!」
叫ぼうと口を開くと、端から水が侵入してきた。土臭くて、梅雨時のカエルみたいなにおいで、そしてどこかしょっぱい。
必死に水から顔を出そうとすると、空に残った太陽の最後の一筋が、水面で滲んだ。
もうやめて。もうやめてよ――ねえ、僕だけの神様。
あっぷあっぷしている僕の真横を掠めて、ほかの木々をなぎ倒しながら水は次から次へと溢れていく。
きっと世界が終わる日はこんな風だったのかな、なんて現実逃避したがる頭がぼんやりと考える。
でもここに、方舟なんてない。
一段と高い波がどぷんと僕らに襲い掛かる。
そいつは僕の眼前でグワッと鎌首をもたげ、僕ではなく背後にいたミコトに襲い掛かった。
キャインと甲高い悲鳴がして、それにひるんだ瞬間濁流は僕の手からリードをかっさらっていった。必死に手を伸ばしても、みるみるうちにミコトは小さくなっていく。
「もうやめて!」
叫ぼうと口を開くと、端から水が侵入してきた。土臭くて、梅雨時のカエルみたいなにおいで、そしてどこかしょっぱい。
必死に水から顔を出そうとすると、空に残った太陽の最後の一筋が、水面で滲んだ。
もうやめて。もうやめてよ――ねえ、僕だけの神様。
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