消えない思い

樹木緑

文字の大きさ
20 / 201

第20話 久しぶりの学校

しおりを挟む
ガラガラと教室のドアを開けると、青木君が束さず、
「要~、お前学校始まったばかりでラッキー、あ、いや、散々だったな。」といつもだったら遅刻ギリギリの青木君が、早くも学校に登校していた。
僕は「おはようございます。今日は早いんですね。」と青木君に挨拶すると、
「あ~朝練が始まってるんだよ。まだ1時間目も始まってないのに腹減って、腹減って。」とカバンの中からパンを取り出してかぶりついている。
「先生が来られたら怒られますよ。」と助言してあげると、
「大丈夫、大丈夫。もう見つかってるし、先週はずっとこうだったが、先公も、もう怒る事、諦めたみたいだな」と言ってガハハと笑っていた。
スポーツクラブに参加している人の間では良くあるようなので、先生達も大目にみているようだ。
パンをかじりながら、「何?インフルだったのか?」と聞いてきたので、
「いえ、体調を崩してしまって、中々調整できなかったんです。」と答えた。
「まあ、春先は気候もポンポン変わるしな、要なんて貧弱そうだし…もう調子は良いのか?」と青木君が聞いてきたので、
「はい、すっかり。僕は貧弱ではありませんが、ありがとうございます。」とお礼を言った。
「な、俺とお前、同級だし、それに少なくとも俺はダチだと思ってるからさ、そんなかしこまった言葉使わなくっても良いぞ。クラスの女子なんて俺の事サルだの、ノッポだの呼び放題だぞ?」と笑って言ってくれた。
青木君はバレーボールをやっていると言うだけあって、身長は結構高い。
ルックスも、真面目にしていると悪くない。
「そうだね。じゃ遠慮なく! でも、青木君は僕を友達だと思ってくれてるんだね。凄く嬉しい。ありがとう。」
「なんだ、お前は思ってくれてないの? お前はボッチなのか?」
「ボッチと言う訳では無いけど、あんまり人との交流とかなかったから…どう接して良いかよくわからなくて…」
そう言いながら席に付き、教科書などを机にしまい込んでいると、
「俺には遠慮するなって! 何でもポンポン言っていいんだぞ。しかしお前、一週間病気で休みだったのに、なんか色っぽくなったな?」と大木君が耳打ちしてきた。
「えっ?何か違いますか?」とドギマギして聞くと、
「なんか、更に可愛くなったような…?」と言う大木君に僕は
「可愛いなんて、男に言う誉め言葉じゃないよ!」と言うと、彼は笑って、
「だって、お前にぴったりな表現って、他にないぞ?」とからかった様に答えた。
「いやーほんと、髪とか、艶が一層出たような…それに頬もなんかピンク………いや、別に女の子みたいと言ってるわけじゃないぞ。ただ、男にしては奇麗だなと…なんでお前、男なんだろうな?女の子だったら、俺、速攻でお前にアタックしてるな!」そう言って笑っていた。
僕は「本当にもう!」と少し照れたように言って教科書を机にしまい込み、カバンを机の横に掛けた。

僕はあれから一週間も学校を休んでしまった。
幸い薬は効いてくれたが、副作用が少しきつかったから。
病院の先生は直に慣れてくるとは言ってくれだが、少し不安は残る。
でもこの一週間の間、矢野先輩は毎日お見舞いに来てくれた。
そして僕は嫌でも先輩の気持を再確認するしかなかった。
そして、先輩に対する自分の気持ちも…

「そう言えばさ、お前が休んでいる間にクラス委員が決まってさ、俺、体育委員。おまえは…」
「僕、何か委員になった?」
青木君はうつ向いて、「おまえは学級委員長だ。すまん、助けてやれなかった。」そういって僕の肩に手をポンと置いた。
丁度そこを通た女子がその会話を聞いて、「は~?なに言ってんのサル!あんたが赤城君を推薦したんでしょ!」と青木君を睨んでいる。
僕は「えっ?えっ?どういう事?」と言ってオロオロとしてると、
「こいつ、早くクラブに行きたいもんだから、誰もなりての無かった委員長、あなたに押し付けちゃったのよ。」と言って教えてくれた。
そこで青木君は、「てへっ♥バレちゃった。」と全然悪気もなくそう言った。
僕は余りものその毒気のなさに、「ハハハもう良いよ。休んじゃってた僕も悪いんだし」と言って、その状況を受け入れることにした。
「でも俺、最初の委員会お前の為に行ってあげたんだそ。お前休んでたからな。次は何時だったかな?」という青木君に、奥野さんが束さず、
「あなた、参加したけど、どうせ寝てたんでしょ?」と言った。
そして青木君は「あっ、バレた?」と舌を出して笑っている。
僕は「ハハハ青木君らしくって、目に浮かぶよ」と笑うと、
「あなたって、良い人ね。初日の自己紹介忘れちゃったろうからもう一度、自己紹介ね。私、奥野瞳。一年間よろしくね。」そう言って握手してくれた。
「あ、ありがとう。僕は…」と言いかけると、
「赤城要!」と僕の名前を憶えていてくれた。
「あ、僕の名前、覚えてくれてたんですね。ありがとう、これから一年間宜しく。」と言うと、
奥野さんは、「そりゃ、覚えるわよ。ま、あなたって、良くも、悪くも目立つしね。」と返した。
僕は訳が分からず、「え?どういう意味ですか?」と聞くと、
「あなた、結構奇麗な顔してるのよ。誰にも言われた事無い?」と奥野さんが尋ねてきた。
「えっ、取り分けそう言うことは余り…あ、青木君は何時もからかってますけど…」と言うと、
「あなた、自分の事、自覚ないのね。」と言った後続いて、
「実はね、あなたの事、あなたが休んでる間、奇麗な子が入学してきたってちょっと噂になっててね、結構上級生のそれも男・子が、どの子?って見に来たのよ。その上、あの矢野先輩が直々に会いに来たじゃない?そりゃあもう、矢野先輩のお気に入りは誰?って女子も入れ替わり、立ち代わりでね。あなたずっと休んでたから、皆、あなたの事、探すの諦めたみたいだけど…」とびっくりするような情報を教えてくれた。
「そうだったよな! おれ、ドアの所だからもう、毎日、毎日、煩い、煩い…」青木君もそう言って霹靂としている。
奥野さんが矢野先輩を知っていたことが意外で、「奥野さん、矢野先輩の事知ってるの?」と尋ねたら、
「あなた知らないの?彼ってスッゴイモテるのよ。入学して直ぐに噂が回って来たわよ!αであの顔でしょ?それに父親が芸能関係となれば、我、取り入ろうという女子も多いし!それにスッゴイお金持ちじゃない?」と奥野さんもうっとりしながら話してくれる。
「えーっ全然知らなかったよ。先輩がそんなにモテるなんて。」とびっくりすると、
「その上さ、生徒会長もかなりのイケメンで、お金持ちで、実家が権力持ちらしいから、その二人を追ってかなりの女子が受験して、去年と今年はかなりの倍率が女子にはあったみたい。ここだけの話だけど、あくまでも噂よ、なんでも、会長には婚約者居るみたいなの皆知ってて、それでも構わないっていう輩は多いみたいよ。」と教えてくれた。
「へー奥野さん、物知りだね。」と青木君の方をチラッと見ると、「ま、大体は当たってるな。女子の情報網は凄いな」と言って呆れかえっていた。
そして青木君は一言、「あ~その中の女子の一人でも良いから俺に気付いてくれないかな~」とポツリと言った。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ

樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー 消えない思いをまだ読んでおられない方は 、 続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。 消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が 高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、 それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。 消えない思いに比べると、 更新はゆっくりになると思いますが、 またまた宜しくお願い致します。

君に会いに行こう

大波小波
BL
 第二性がアルファの九丈 玄馬(くじょう げんま)は、若くして組の頭となった極道だ。  さびれた商店街を再開発するため、玄馬はあるカフェに立ち退きを迫り始める。  ところが、そこで出会ったオメガの桂 幸樹(かつら こうき)に、惹かれてしまう。  立ち退きを拒むマスターの弱みを握ろうと、幸樹に近づいた玄馬だったが、次第に本気になってゆく……。

すれ違い夫夫は発情期にしか素直になれない

和泉臨音
BL
とある事件をきっかけに大好きなユーグリッドと結婚したレオンだったが、番になった日以来、発情期ですらベッドを共にすることはなかった。ユーグリッドに避けられるのは寂しいが不満はなく、これ以上重荷にならないよう、レオンは受けた恩を返すべく日々の仕事に邁進する。一方、レオンに軽蔑され嫌われていると思っているユーグリッドはなるべくレオンの視界に、記憶に残らないようにレオンを避け続けているのだった。 お互いに嫌われていると誤解して、すれ違う番の話。 =================== 美形侯爵長男α×平凡平民Ω。本編24話完結。それ以降は番外編です。 オメガバース設定ですが独自設定もあるのでこの世界のオメガバースはそうなんだな、と思っていただければ。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

あなたの家族にしてください

秋月真鳥
BL
 ヒート事故で番ってしまったサイモンとティエリー。  情報部所属のサイモン・ジュネはアルファで、優秀な警察官だ。  闇オークションでオメガが売りに出されるという情報を得たサイモンは、チームの一員としてオークション会場に潜入捜査に行く。  そこで出会った長身で逞しくも美しいオメガ、ティエリー・クルーゾーのヒートにあてられて、サイモンはティエリーと番ってしまう。  サイモンはオメガのフェロモンに強い体質で、強い抑制剤も服用していたし、緊急用の抑制剤も打っていた。  対するティエリーはフェロモンがほとんど感じられないくらいフェロモンの薄いオメガだった。  それなのに、なぜ。  番にしてしまった責任を取ってサイモンはティエリーと結婚する。  一緒に過ごすうちにサイモンはティエリーの物静かで寂しげな様子に惹かれて愛してしまう。  ティエリーの方も誠実で優しいサイモンを愛してしまう。しかし、サイモンは責任感だけで自分と結婚したとティエリーは思い込んで苦悩する。  すれ違う運命の番が家族になるまでの海外ドラマ風オメガバースBLストーリー。 ※奇数話が攻め視点で、偶数話が受け視点です。 ※エブリスタ、ムーンライトノベルズ、ネオページにも掲載しています。

【BL】『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとでした

圭琴子
BL
 この世界は、αとβとΩで出来てる。  生まれながらにエリートのαや、人口の大多数を占める『普通』のβにはさして意識するほどの事でもないだろうけど、俺たちΩにとっては、この世界はけして優しくはなかった。  今日も寝坊した。二学期の初め、転校初日だったけど、ワクワクもドキドキも、期待に胸を膨らませる事もない。何故なら、高校三年生にして、もう七度目の転校だったから。    βの両親から生まれてしまったΩの一人息子の行く末を心配して、若かった父さんと母さんは、一つの罪を犯した。  小学校に入る時に義務付けられている血液検査日に、俺の血液と父さんの血液をすり替えるという罪を。  従って俺は戸籍上、β籍になっている。  あとは、一度吐(つ)いてしまった嘘がバレないよう、嘘を上塗りするばかりだった。  俺がΩとバレそうになる度に転校を繰り返し、流れ流れていつの間にか、東京の一大エスカレーター式私立校、小鳥遊(たかなし)学園に通う事になっていた。  今まで、俺に『好き』と言った連中は、みんなΩの発情期に当てられた奴らばかりだった。  だから『好き』と言われて、ピンときたことはない。  だけど。優しいキスに、心が動いて、いつの間にかそのひとを『好き』になっていた。  学園の事実上のトップで、生まれた時から許嫁が居て、俺のことを遊びだと言い切るあいつを。  どんなに酷いことをされても、一度愛したあのひとを、忘れることは出来なかった。  『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとだったから。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

処理中です...