消えない思い

樹木緑

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第91話 バイトの後で

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「今日はお疲れ様、
ほんとに助かったよ。

これお給料ね。
叔父さんが少し色を付けてくれたから!」

僕は初めて自分で働いて
稼いだお金に少し興奮していた。

「うわ~ ありがとうございます!
凄いですね。
お金を稼ぐって、
ほんと、大変なんですね。
僕、お父さんとお母さんに
おんぶに抱っこなので
社会勉強出来て良かったです!」

「こちらこそ、
喜んでもらえて嬉しいです。
どうですか?
月一とかで週末にバイト、
やってみませんか?
学校は届を出せば大丈夫なんでしょう?」

そう言いながら、
奥野さんの叔父さんが、
出来立てのチャーハンとスープを持ってきてくれた。

僕は彼のお誘いに、

「是非やらせてください!」

と、即座に返事をした。

「え~ 要君がやるんだったら、
僕もやりたいな~」

と矢野先輩が呟くと、
奥野さんが即座に、

「先輩は受験があるでしょう!
家でバイトしてたから落ちたって言うのは
イヤですよ!」

と嗜めていた。

「要君だけだとちょっと心配だな~
今日だって声かけられてたし……」

「そうなんだよね~
赤城君だけでは無くて、
先輩の事だって結構聞かれたんですよ。
次は何時働いてるのかとか、
名前は何ていうのかとか、
彼女いるのかとか……」

「ほんとに女の子凄かったですよね。
何だか僕、ここはホストクラブ?って
思うときがありましたよ!
先輩まだ高校生なのにお姉さまキラーですね」

そう言うと、先輩は僕の頭をスコーンと
チャーハンについていたスプーンで軽くたたいた。

「イヤ、イヤ、私、先輩は軽い……
あ、イヤ、人懐っこいから分かるんだけど……アテッ!……」

今度は、奥野さんも先輩から
スプーンの愛のムチを受けていた。
僕は彼らのその姿が凄く微笑ましかった。

「で、僕が軽いから僕は分かるけど何?」

先輩が続きを尋ねると、

「それがね、赤城君をご指名の人も多かったんだよ!
それもね、男性から!
私さ、彼は男の子ですよ!って言ったらさ、
彼はΩでしょ?って尋ねる人が何人か居てね。
彼らってきっとαだね。
そんな匂いがプンプンしたよ」

「奥野さ~ん、そんな身も蓋も無いような言い方……
匂いプンプンだなんて……」

「いや、やっぱさ、分かる人には分かるんだね。
やっぱ、イヤらしい体つきの所為かな?」

と彼女が言うと、今度は彼女の叔父さんが、

「こら、もっと上品な話し方をしなさい!」

と奥野さんを窘めていた。

彼女は、舌をペロッと出して、お茶目に

「は~い!」

と一言言った。
その横で矢野先輩は独り言のようにブツブツと、

「やっぱり、要君一人では危ない……
やっぱり僕も一緒に……」

と過保護な父親の様になっていた。 

「丁度ね、週末に入ってた人が
辞めちゃうのよ。

美術部って週末は自主ですよね?
私も赤城君と一緒に入ろうかな~
ね、月一と言わず、毎週入らない?
私もその方が楽しいし!

ね、おじさん、いいでしょう?」

「ハハハ、赤城君さえ良ければ私は大歓迎だけどね」

奥野さんの叔父さんは乗り気な様だ。
僕は少し考えて、

「それでは、学校の方に申請してみます。
週末のみですので、問題はないと思いますが、
今週中に返事します!」

そう言うと、奥野さんも、

「じゃあ、明日一緒に申請だしに行こうよ!
私のクラブも週末はお休みだし!」

と乗り気だ。

只先輩だけが、ブツブツと
まだ納得して無さそうだった。

「いや、今日は本当に楽しかったです。
社会勉強も出来ましたし、
ご飯も美味しかったです!

学校から許可が下りた際には宜しくお願いします」

「うん、先輩も、赤城君も
今日はありがとう。
また明日学校でね」

そう言って僕達はカフェを後にした。

去り際に、看板の陰に居た人に声を掛けられた。

「あの……すみません……」

通り際に振り向くと、
お昼に僕に声を掛けてきた大学生っぽい人だった。

「やっぱり、お仕事中に話すのは
失礼かと思って待ってたんですが、
どうしても知り合いになりたくて……
もしよかったらお友達からでも……」

そう彼が言った時に先輩が、

「すみませんが、
彼は僕と付き合ってますので、
そう言った類はお断りさせてください」

と言って、僕の手を取って、
僕の手にキスをした。

その行為を見たその人は、
ガクッと頭を垂れて、そして、
深く一礼して、

「すみませんでした。
彼氏さんが居るとは思ってませんでした。
僕の理想が服を着て歩いているような人だったので、
せめて知り合いになりたいと思ったのですが……
不愉快な思いをさせてすみません」

そう言って彼は走って去ってしまった。

僕は先輩の方を見て、
開いた口が塞がらなかった。

先輩はと言うと、
カフェに逆戻りし、

「僕もバイトする!
何があっても絶対する!
要君が入る時は僕も全シフトいれる!」

奥野さん達に向かってそう断言していた。



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