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第132話 記憶の中で
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凄く不思議な感覚だった。
あの時はまさかこんな事になろうとは夢にも思わなかった。
僕は床に座り込み、先輩が座っていた窓の桟に顔をうつ伏せて泣いた。
先輩とはもう今までの様に、
制服を着て会うことは出来ない。
部室に来ても、放課後、
先輩が爽やかに笑って入ってくることは無い。
全て、全て終わってしまった。
ここで隠れてキスをしたことも、
先輩が僕に優しく触れてくれたことも、
床に寝転がって一緒にバカやった事も、
何度も、何度も優しく
愛してると耳元で囁いてくれたことも、
全て、全て終わってしまった。
僕が声を殺して泣いていると、
急に部室のドアの開く音がした。
僕がハッとしてドアの方を振り向くと、
そこには矢野先輩が立っていた。
「要君、どうしたの?
恐らくここに居ると思ったから急いできたんだけど、
裕也はまだ?」
矢野先輩の顔を見た途端、
貯め込んでいたものが一気に堰を切った様に流れ出した。
「先ぱ~い」
僕は先輩にしがみ付くと、
「卒業しないで!
僕を置いて行かないで!」
と泣きじゃくっていた。
「要君、大丈夫だよ。
僕達卒業しても、
ここには顔を出すし、
時間があれば週末だって、遊んだりできるんだよ」
「でも、でも、今までとは違います!」
そう言って床に膝をついた先輩の膝に顔を埋めて
泣いていると、佐々木先輩が大勢の人から逃れてきたような
格好で部室にやって来た。
「ホラホラ、誰かさんも心配して
そこでフリーズしているよ」
矢野先輩が僕の背なかをポンポンと優しくたたき、
そう耳元で囁くと、僕は顔を上げた。
部室のドアの所に立ち尽している佐々木先輩が目に入ると、
僕は直ぐに先輩に駆け寄り、先輩に抱き着いた。
「遅くなって悪かったな。
一人で心細かっただろ?」
「本当に!
君も凄い格好だよ?」
矢野先輩がそう言うと、
僕も顔を上げて先輩を見つめた。
先輩のブレザーはヨレヨレで、
ネクタイも無く、シャツははだけ、
ボタンというボタンがむしり取られていた。
僕はその恰好がおかしくて、今まで泣いていたことも忘れて、
大笑いしてしまった。
矢野先輩の制服は奇麗なもので、
式が終わったのと同時に逃げてきたんだと言う事が分かった。
「いや、ほら、俺はちょっと担任に用があったから
ぐずぐずとしてるうちに捕まってしまって……」
しどろもどろと説明する先輩を横に、
僕はもみくちゃにされる先輩の姿が目に浮かんで、
おかしかったの同時に、少し面白く無いとも思った。
“何で矢野先輩の様にスマートに逃げて来れないの?
沢山の女の子達にベタベタと触られたの?
もしかして可愛い後輩の男子にも?”
そう言う風に思っていたら、だんだんと腹が立ってきた。
「ハハハ、要君が今思っている事、
何だか分かるよ。
当ててみようか?」
矢野先輩がそう言って僕をからかってきた。
僕は真っ赤になりながら、
「せ……先輩!」
と矢野先輩に飛びついて口を塞ごうとしたら、
佐々木先輩が
「お、おま……浩二、要から離れろ」
そう言って僕を矢野先輩から引き離した。
「裕也もヤキモチ焼きだね~
別に要君の事、取って食おうって言うわけじゃ無いんだから!
僕がここに顔を出したのはね、
たぶん君たちはここで会うんだろうなって思ったから。
やっぱりここに居たね?
ねえ、最後に一緒に写真撮ろうよ!」
「あ、良いですね、
是非是非!
あ、それと先輩達、本当はこんな事は言いたくはないいですけど、
卒業、おめでとうございます」
僕は深々とお辞儀をすると、
先輩達も、
「ありがとう!」
そう言って僕達の撮影会が始まった。
僕は泣き腫らした真っ赤になった目が気になったけど、
先輩はこれぞ卒業式の醍醐味!
このままいこう!
と言う事で、僕は真っ赤に泣き腫らした目のまま
写真撮影となった。
「この一年、凄い早かったですよね~」
「そうだね~
僕は入学式で要君に会って、卒業式で別れるから、
キリ目が良いよね」
「先輩~ 大学に行ったら勉強とか大変でしょうけど、
時間ある時は、絶対、絶対、部に顔を出してくださいよ~
それに家にも、もっといっぱい遊びに来てくださいよ~」
「分かってるよ!
来るなって言っても一杯行ちゃうからね!
覚悟しといてね!」
「いや~ 何だかそう言われると怖いですね~」
僕がそう言うと、矢野先輩は大声で笑っていた。
僕は先輩の笑う姿を見て、少し違和感を感じた。
何処がどうだったと言う訳では無く、
言葉で言い表すのは難しいけど、
先輩の笑顔を見た時、
何だか動悸にも似たようなドキドキがしたことを覚えいる。
先輩は部室の窓から外を眺めて、
「だいぶ人が少なくなって来たね。
今日は3年生は担任と副担の謝恩会があるから、
もう行かなくっちゃ……
時間が過ぎるのは早いね~
ゆっくりと後輩たちと卒業の余韻にも浸ってられないね」
そう言って背伸びをした。
「じゃあ、今日は君たちも余り一緒に居る時間無いだろうから、
お邪魔虫はこれで退散するとしましょうか~」
「先輩、先輩はちっともお邪魔虫なんかじゃないですよ。
遠慮しないで一緒に居ても良いんですよ!」
僕がそう言うと佐々木先輩は、
「そーだ、そーだ!
お邪魔虫はとっとと消えろ~」
そう言って笑いながら矢野先輩のお尻を足で蹴っていた。
「じゃあ、又ね、裕也!
それから、要君も……
また今度ね」
そう言った先輩の顔が印象的だった。
僕は咄嗟に、
「先輩!」
そう呼び止めていた。
「どうしたの?」
「あ……いえ……
何でもないんです……」
「ハハハ、変な要君。
大丈夫だよ!
又すぐに会えるからね」
そう言って矢野先輩は3年間学んだ校舎を後にした。
そして矢野先輩の高校3年間の学園生活は終わった。
矢野先輩が去った後、
「どうしたんだ要?
何だか変だぞ?」
そう佐々木先輩が心配して来た。
僕は先輩を見上げ、
何だか分からない胸の苦しさを覚えた。
「ん?」
佐々木先輩にもう一度聞かれ、
「ねえ先輩、矢野先輩ちょっと変じゃ無かったですか?」
僕はそう尋ねた。
「変? そうだったか?
俺は何も気付かなかったけどな?
いつもの浩二だと思ったが……」
「いえ、いつもの先輩に変わりはなかったんですが……
何だか先輩の笑顔に違和感が……」
「え~?
胡散臭いとか?」
佐々木先輩のコメントに、僕はブ~ッと噴出していた。
「そうですね……気の所為かもですね。
きっと卒業で気が張ってるんだと思います。
でも矢野先輩、他の人に見つからずに無事校舎をでれたかな?」
「まあ、あいつは要領がいいから、
見つかっても大丈夫さ」
先輩がそう言うと、僕はプッと笑って、
「そうですね。
僕、彼が矢野浩二だと言う事をすっかり忘れていました!」
と気を取り直した。
「先輩、今日は先輩も謝恩会ですよね?」
「そうだな。
まあ、夕方からだけど……
俺は幹事を任されたから調整の為、少し早めに行かないとな」
「そっか~
寂しいな~
僕だけ取り残されたみたい」
そう言うと、
「お前な、俺にとってはお前を一人ここに残していく事が心残りだよ。
何時、誰がお前に迫って来るとか、
考えただけで、心配で、心配で、眠れない日が続きそうだよ!
お前に近づく奴らに牽制も出来ないからな!
悲しいのはお前だけだとは思うなよ?
ま~ 救いは青木や奥野さんが居てくれる事だな~」
『そうか、先輩も僕と同じように
僕を残して卒業していく事が悲しいんだ』
そう思うと、少し胸の閊えが取れたような気がした。
「どれ、人も引いた様だし、
校舎に鍵がかかる前に出るとするか!」
そう言って僕達は校舎を後にした。
「じゃあ、謝恩会終ったらラインするから」
そう言って僕達は別れた。
夜になり、ソワソワしていると、
メッセージを伝える着信音が鳴った。
僕は “佐々木先輩だ” そう思いメッセージを開いた。
でもそれは矢野先輩からだった。
たった一言。
“今から公園に出て来れる?”
あの時はまさかこんな事になろうとは夢にも思わなかった。
僕は床に座り込み、先輩が座っていた窓の桟に顔をうつ伏せて泣いた。
先輩とはもう今までの様に、
制服を着て会うことは出来ない。
部室に来ても、放課後、
先輩が爽やかに笑って入ってくることは無い。
全て、全て終わってしまった。
ここで隠れてキスをしたことも、
先輩が僕に優しく触れてくれたことも、
床に寝転がって一緒にバカやった事も、
何度も、何度も優しく
愛してると耳元で囁いてくれたことも、
全て、全て終わってしまった。
僕が声を殺して泣いていると、
急に部室のドアの開く音がした。
僕がハッとしてドアの方を振り向くと、
そこには矢野先輩が立っていた。
「要君、どうしたの?
恐らくここに居ると思ったから急いできたんだけど、
裕也はまだ?」
矢野先輩の顔を見た途端、
貯め込んでいたものが一気に堰を切った様に流れ出した。
「先ぱ~い」
僕は先輩にしがみ付くと、
「卒業しないで!
僕を置いて行かないで!」
と泣きじゃくっていた。
「要君、大丈夫だよ。
僕達卒業しても、
ここには顔を出すし、
時間があれば週末だって、遊んだりできるんだよ」
「でも、でも、今までとは違います!」
そう言って床に膝をついた先輩の膝に顔を埋めて
泣いていると、佐々木先輩が大勢の人から逃れてきたような
格好で部室にやって来た。
「ホラホラ、誰かさんも心配して
そこでフリーズしているよ」
矢野先輩が僕の背なかをポンポンと優しくたたき、
そう耳元で囁くと、僕は顔を上げた。
部室のドアの所に立ち尽している佐々木先輩が目に入ると、
僕は直ぐに先輩に駆け寄り、先輩に抱き着いた。
「遅くなって悪かったな。
一人で心細かっただろ?」
「本当に!
君も凄い格好だよ?」
矢野先輩がそう言うと、
僕も顔を上げて先輩を見つめた。
先輩のブレザーはヨレヨレで、
ネクタイも無く、シャツははだけ、
ボタンというボタンがむしり取られていた。
僕はその恰好がおかしくて、今まで泣いていたことも忘れて、
大笑いしてしまった。
矢野先輩の制服は奇麗なもので、
式が終わったのと同時に逃げてきたんだと言う事が分かった。
「いや、ほら、俺はちょっと担任に用があったから
ぐずぐずとしてるうちに捕まってしまって……」
しどろもどろと説明する先輩を横に、
僕はもみくちゃにされる先輩の姿が目に浮かんで、
おかしかったの同時に、少し面白く無いとも思った。
“何で矢野先輩の様にスマートに逃げて来れないの?
沢山の女の子達にベタベタと触られたの?
もしかして可愛い後輩の男子にも?”
そう言う風に思っていたら、だんだんと腹が立ってきた。
「ハハハ、要君が今思っている事、
何だか分かるよ。
当ててみようか?」
矢野先輩がそう言って僕をからかってきた。
僕は真っ赤になりながら、
「せ……先輩!」
と矢野先輩に飛びついて口を塞ごうとしたら、
佐々木先輩が
「お、おま……浩二、要から離れろ」
そう言って僕を矢野先輩から引き離した。
「裕也もヤキモチ焼きだね~
別に要君の事、取って食おうって言うわけじゃ無いんだから!
僕がここに顔を出したのはね、
たぶん君たちはここで会うんだろうなって思ったから。
やっぱりここに居たね?
ねえ、最後に一緒に写真撮ろうよ!」
「あ、良いですね、
是非是非!
あ、それと先輩達、本当はこんな事は言いたくはないいですけど、
卒業、おめでとうございます」
僕は深々とお辞儀をすると、
先輩達も、
「ありがとう!」
そう言って僕達の撮影会が始まった。
僕は泣き腫らした真っ赤になった目が気になったけど、
先輩はこれぞ卒業式の醍醐味!
このままいこう!
と言う事で、僕は真っ赤に泣き腫らした目のまま
写真撮影となった。
「この一年、凄い早かったですよね~」
「そうだね~
僕は入学式で要君に会って、卒業式で別れるから、
キリ目が良いよね」
「先輩~ 大学に行ったら勉強とか大変でしょうけど、
時間ある時は、絶対、絶対、部に顔を出してくださいよ~
それに家にも、もっといっぱい遊びに来てくださいよ~」
「分かってるよ!
来るなって言っても一杯行ちゃうからね!
覚悟しといてね!」
「いや~ 何だかそう言われると怖いですね~」
僕がそう言うと、矢野先輩は大声で笑っていた。
僕は先輩の笑う姿を見て、少し違和感を感じた。
何処がどうだったと言う訳では無く、
言葉で言い表すのは難しいけど、
先輩の笑顔を見た時、
何だか動悸にも似たようなドキドキがしたことを覚えいる。
先輩は部室の窓から外を眺めて、
「だいぶ人が少なくなって来たね。
今日は3年生は担任と副担の謝恩会があるから、
もう行かなくっちゃ……
時間が過ぎるのは早いね~
ゆっくりと後輩たちと卒業の余韻にも浸ってられないね」
そう言って背伸びをした。
「じゃあ、今日は君たちも余り一緒に居る時間無いだろうから、
お邪魔虫はこれで退散するとしましょうか~」
「先輩、先輩はちっともお邪魔虫なんかじゃないですよ。
遠慮しないで一緒に居ても良いんですよ!」
僕がそう言うと佐々木先輩は、
「そーだ、そーだ!
お邪魔虫はとっとと消えろ~」
そう言って笑いながら矢野先輩のお尻を足で蹴っていた。
「じゃあ、又ね、裕也!
それから、要君も……
また今度ね」
そう言った先輩の顔が印象的だった。
僕は咄嗟に、
「先輩!」
そう呼び止めていた。
「どうしたの?」
「あ……いえ……
何でもないんです……」
「ハハハ、変な要君。
大丈夫だよ!
又すぐに会えるからね」
そう言って矢野先輩は3年間学んだ校舎を後にした。
そして矢野先輩の高校3年間の学園生活は終わった。
矢野先輩が去った後、
「どうしたんだ要?
何だか変だぞ?」
そう佐々木先輩が心配して来た。
僕は先輩を見上げ、
何だか分からない胸の苦しさを覚えた。
「ん?」
佐々木先輩にもう一度聞かれ、
「ねえ先輩、矢野先輩ちょっと変じゃ無かったですか?」
僕はそう尋ねた。
「変? そうだったか?
俺は何も気付かなかったけどな?
いつもの浩二だと思ったが……」
「いえ、いつもの先輩に変わりはなかったんですが……
何だか先輩の笑顔に違和感が……」
「え~?
胡散臭いとか?」
佐々木先輩のコメントに、僕はブ~ッと噴出していた。
「そうですね……気の所為かもですね。
きっと卒業で気が張ってるんだと思います。
でも矢野先輩、他の人に見つからずに無事校舎をでれたかな?」
「まあ、あいつは要領がいいから、
見つかっても大丈夫さ」
先輩がそう言うと、僕はプッと笑って、
「そうですね。
僕、彼が矢野浩二だと言う事をすっかり忘れていました!」
と気を取り直した。
「先輩、今日は先輩も謝恩会ですよね?」
「そうだな。
まあ、夕方からだけど……
俺は幹事を任されたから調整の為、少し早めに行かないとな」
「そっか~
寂しいな~
僕だけ取り残されたみたい」
そう言うと、
「お前な、俺にとってはお前を一人ここに残していく事が心残りだよ。
何時、誰がお前に迫って来るとか、
考えただけで、心配で、心配で、眠れない日が続きそうだよ!
お前に近づく奴らに牽制も出来ないからな!
悲しいのはお前だけだとは思うなよ?
ま~ 救いは青木や奥野さんが居てくれる事だな~」
『そうか、先輩も僕と同じように
僕を残して卒業していく事が悲しいんだ』
そう思うと、少し胸の閊えが取れたような気がした。
「どれ、人も引いた様だし、
校舎に鍵がかかる前に出るとするか!」
そう言って僕達は校舎を後にした。
「じゃあ、謝恩会終ったらラインするから」
そう言って僕達は別れた。
夜になり、ソワソワしていると、
メッセージを伝える着信音が鳴った。
僕は “佐々木先輩だ” そう思いメッセージを開いた。
でもそれは矢野先輩からだった。
たった一言。
“今から公園に出て来れる?”
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