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第154話 お母さんは突然に
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日本では暫くはお父さんのニュースで持ちきりだった。
マスコミなどは自分勝手な一方通行の会見だったと、
お父さんの事を叩いた。
でも、ネット住民からは驚きの声が上がっていた。
多くの人からお父さんは認められて、受け入れられ、
祝福の声がかけられた。
僕は、両親のファンのみんなや、
その他の人たちにも受け入れられてよかったと思った。
仕事にはそれほど支障はなかったようだが、
トークショーやコマーシャルなど、
お母さんとの共演のお誘いが増えたようだった。
世間に迷惑をかけたからと、暫くは
やって来た仕事はどんな小さな事でも、
スケジュールをギチギチにして受けたようだ。
そして、お母さんと幾つかの家族のCMに出た。
僕も一緒にとオファーがあったらしいけど、
そこはやんわりとお断りをして、
子役を使い撮影したようだ。
それがあったせいか、
お父さんとお母さんの人気はうなぎ上りになった。
それは置いといて、
あの騒動から1週間がったった頃、
お母さんがLINEに電話して来た。
「どうしてる? 体調は大丈夫?」
その頃、時差ぼけの所為か、
丁度体調を崩しがちになっていた。
それをお母さんに話した事があった。
「お母さん~ それがね、色んなことがあったせいか、
最近疲れが溜まっててさ~」
「どうした?」
「何だか眠たくって、眠たくって、
時差ボケが長引いちゃってるのかな?
ちゃんと眠ってるんだけど、
やっぱり脳はまだ日本時間なのかな~?」
本当は眠れない日も多かった。
先輩の事を考えると、
一晩中涙する日もかなりあった。
「それだけ?」
「え? それだけって?」
「いや、その他の体調の変化もあるのかな?って……」
「う~ん、そうだね~
体内時計が狂ったせいか、胃腸の調子も良くなくって……」
「どうしたの? お腹痛いの?」
「いや、そんなんじゃなくって……」
「じゃあ、どういう風に調子悪いの?」
「ん~ いつもじゃ無いんだけど、
やっぱりご飯食べる時間が変わったせいか、
ご飯の時間になっても食欲無いし、
食べても消化して無いって言うか……
そのせいでちょっと吐き気したり、
眠って無いせいか目眩したり……
ここ最近ちょっと酷くなってるような気がして……
それに便秘かな? と思えば、下痢したり……
食事が合わないのかなぁ~?
それとも貧血かなぁ~?」
「分かった。
あんまり無理しない様に、しっかりと休眠は取る様に!
ちょっと調べものしたら数日後また連絡するから」
そう言って僕達はLINEを終えた。
その数日後、僕は具合が悪くてついに起きれず、
学校をやすんでいると、玄関のベルがなった。
家には僕以外居なかったので、
フランス語も良く分からないし、無視することにした。
すると、LINE電話がかかって来た。
見ると、お母さんだった。
きっと調子を確認するために電話してるんだと思った。
「お母さん? どうしたの?」
「要?
今日家にいるんだろ?
ポールにきいた。
玄関の鍵、開けて」
「えっ? えっ~!? 玄関の鍵?
ここに来てるの?
今フランスに居るの?
玄関の前? なんで?」
お母さんは携帯のビューを変えて、
お母さんの立っている周りを移した。
「ホントだ…… 家の前だ……」
僕は目眩がするのを堪えて
玄関まで行って鍵を開けてチェーンを外した。
お母さんはスーツケースに買い物袋を下げて、
「よ!」
と言ってそこに立っていた。
「どうしたの? 何かあったの?」
お母さんは部屋に入って来るなり、
テーブルの上に荷物を置くと、
僕の首筋に手をまわして、
その場所を探った。
僕は、
“あっ!”
と思ったけど、お母さんは直ぐにその痕を見つけた。
そして静かに目を閉じて上を向いた。
「ごめんなさい!
ずっと黙っているつもりはなかったんだ!
でも僕…… 先輩がどうしても好きで……」
そう言う僕の目からは涙が零れていた。
「大丈夫だよ。
そうじゃ無いかなとは思っていた。
僕らはいつでも要の味方だって言ったでしょ?」
お母さんは何でもお見通しのようだ。
僕は泣きながら、うん、うんと頷いた。
「今日来たのはね、ほらコレ」
そう言ってお母さんが買い物袋から出したのは、
妊娠検査薬だった。
「え? 妊娠検査薬?」
僕は涙を拭きながらそれを手に取った。
「うん、僕の杞憂であってくれれば良いけど、
僕の経験からいくと……
要、きっと妊娠してるよ」
“え? 妊娠?”
僕は思いもよらなかった事に、
頭をハンマーで殴られた様な感覚になった。
「調べよ?
違ったら違ったで良いし、
そうじゃ無かったら病院に行かなくちゃ」
「え? 病院?
嫌だ、僕赤ちゃん出来ていても、ちゃんと産みたい!」
「バカだな、違うよ。
赤ちゃん出来てたら、
ちゃんと検査してもらってケアしなきゃ」
「あ~、そっちか、そうだね、そうだよね。
ドクターに見てもらわないとね」
一瞬ドキッとしたけど、
お母さんのその後のセリフで安心した。
「お母さん、これどうやって使うの?」
「箱の中にスティックが入ってるから、
スティックの先に付いてるキャップを取って
その先にオシッコを5秒ほどかけて数分待って。
妊娠してたら、線が2本出るから。
どう? オシッコを出そう?」
僕はちょっと考えて、
「うん、大丈夫と思う」
と言っておトイレに行った。
お母さんに言われた通りに
スティックの先にオシッコをかけてみると、
数分と言わず、一気に線が2本とも現れた。
赤ちゃんが……
僕のお腹の中に先輩との赤ちゃんが……
そう思うと涙が流れ出した。
僕は怖いとか、不安とかいうよりも、
喜びの方が大きかった。
あんなに一つになりたかった人の赤ちゃんが僕の中にいる。
この子は本当に僕と先輩が混じりあって一つになった証なんだ。
そう思うと、未だ見ぬ正体が愛しくて、愛しくて堪らなかった。
この子が居れば、生きていけるとさえ思えた瞬間だった。
コン・コン・コン
ドアをノックする音がした。
「どうだった? もう結果でた?」
お母さんがソワソワとしてドアの向こうで待っている様だった。
僕はドアをガチャリと開けて、
結果の出た検査薬をお母さんに差し出した。
「あ~ やっぱり妊娠していたんだね。
僕が要を妊娠した時と症状が同じだったからね。
100%の確信は無かったけど、99%そうだと思ったよ。
僕のつわりは酷くは無かったから、
要も大丈夫とは思うけど、そこは経験して見ないとな~」
「はいこれ、つわりに効くかわからないけど、
とりあえず胃腸の調子を整える手伝いをしてくれるから。
僕の時も胃腸に来てね、凄くこれに助けられたんだ」
そう言ってお母さんは僕にカモミールティーを出してくれた。
「これから僕、どうしたらいいの?」
「そうだね…… まずは……
病院に電話するね。
僕が要を産んだ産婦人科だよ。
要を取り上げてくれたドクター未だ居るかな~?」
そんなふうな事を話している時、
お母さんのLINEに電話が来た。
「あ、司君だ」
そう言ってお母さんは電話に出た。
「優君~ 要君どうなったの~?」
「ハハハ、 心配で、心配で仕方ないって顔してるね」
「そりゃそうだよ~
異国の地で具合が悪いって……」
「大丈夫だよ。
司君、お祖父ちゃんになるよ」
「あ、やっぱりそうか?
じゃあ本当に要君は佐々木君と?」
そうお父さんの話す声が聞こえて僕は束さず
LINE画面に映り込み、
「直ぐに教えなくてごめんなさい」
と謝った。
「いいんだよ。
そんな予感はしてたからね。
ま~ 僕も人に言えたもんじゃないしね。
それより、僕お祖父ちゃんになるの?」
「うん、ほら、今検査したところ」
そう言って僕は結果が出たばかりの
妊娠結果薬をお父さんに見せた。
お父さんはどう思うか少し心配だったけど、
やっぱり反応は予想通りで、
電話の向こうで万歳三唱をしていた。
マスコミなどは自分勝手な一方通行の会見だったと、
お父さんの事を叩いた。
でも、ネット住民からは驚きの声が上がっていた。
多くの人からお父さんは認められて、受け入れられ、
祝福の声がかけられた。
僕は、両親のファンのみんなや、
その他の人たちにも受け入れられてよかったと思った。
仕事にはそれほど支障はなかったようだが、
トークショーやコマーシャルなど、
お母さんとの共演のお誘いが増えたようだった。
世間に迷惑をかけたからと、暫くは
やって来た仕事はどんな小さな事でも、
スケジュールをギチギチにして受けたようだ。
そして、お母さんと幾つかの家族のCMに出た。
僕も一緒にとオファーがあったらしいけど、
そこはやんわりとお断りをして、
子役を使い撮影したようだ。
それがあったせいか、
お父さんとお母さんの人気はうなぎ上りになった。
それは置いといて、
あの騒動から1週間がったった頃、
お母さんがLINEに電話して来た。
「どうしてる? 体調は大丈夫?」
その頃、時差ぼけの所為か、
丁度体調を崩しがちになっていた。
それをお母さんに話した事があった。
「お母さん~ それがね、色んなことがあったせいか、
最近疲れが溜まっててさ~」
「どうした?」
「何だか眠たくって、眠たくって、
時差ボケが長引いちゃってるのかな?
ちゃんと眠ってるんだけど、
やっぱり脳はまだ日本時間なのかな~?」
本当は眠れない日も多かった。
先輩の事を考えると、
一晩中涙する日もかなりあった。
「それだけ?」
「え? それだけって?」
「いや、その他の体調の変化もあるのかな?って……」
「う~ん、そうだね~
体内時計が狂ったせいか、胃腸の調子も良くなくって……」
「どうしたの? お腹痛いの?」
「いや、そんなんじゃなくって……」
「じゃあ、どういう風に調子悪いの?」
「ん~ いつもじゃ無いんだけど、
やっぱりご飯食べる時間が変わったせいか、
ご飯の時間になっても食欲無いし、
食べても消化して無いって言うか……
そのせいでちょっと吐き気したり、
眠って無いせいか目眩したり……
ここ最近ちょっと酷くなってるような気がして……
それに便秘かな? と思えば、下痢したり……
食事が合わないのかなぁ~?
それとも貧血かなぁ~?」
「分かった。
あんまり無理しない様に、しっかりと休眠は取る様に!
ちょっと調べものしたら数日後また連絡するから」
そう言って僕達はLINEを終えた。
その数日後、僕は具合が悪くてついに起きれず、
学校をやすんでいると、玄関のベルがなった。
家には僕以外居なかったので、
フランス語も良く分からないし、無視することにした。
すると、LINE電話がかかって来た。
見ると、お母さんだった。
きっと調子を確認するために電話してるんだと思った。
「お母さん? どうしたの?」
「要?
今日家にいるんだろ?
ポールにきいた。
玄関の鍵、開けて」
「えっ? えっ~!? 玄関の鍵?
ここに来てるの?
今フランスに居るの?
玄関の前? なんで?」
お母さんは携帯のビューを変えて、
お母さんの立っている周りを移した。
「ホントだ…… 家の前だ……」
僕は目眩がするのを堪えて
玄関まで行って鍵を開けてチェーンを外した。
お母さんはスーツケースに買い物袋を下げて、
「よ!」
と言ってそこに立っていた。
「どうしたの? 何かあったの?」
お母さんは部屋に入って来るなり、
テーブルの上に荷物を置くと、
僕の首筋に手をまわして、
その場所を探った。
僕は、
“あっ!”
と思ったけど、お母さんは直ぐにその痕を見つけた。
そして静かに目を閉じて上を向いた。
「ごめんなさい!
ずっと黙っているつもりはなかったんだ!
でも僕…… 先輩がどうしても好きで……」
そう言う僕の目からは涙が零れていた。
「大丈夫だよ。
そうじゃ無いかなとは思っていた。
僕らはいつでも要の味方だって言ったでしょ?」
お母さんは何でもお見通しのようだ。
僕は泣きながら、うん、うんと頷いた。
「今日来たのはね、ほらコレ」
そう言ってお母さんが買い物袋から出したのは、
妊娠検査薬だった。
「え? 妊娠検査薬?」
僕は涙を拭きながらそれを手に取った。
「うん、僕の杞憂であってくれれば良いけど、
僕の経験からいくと……
要、きっと妊娠してるよ」
“え? 妊娠?”
僕は思いもよらなかった事に、
頭をハンマーで殴られた様な感覚になった。
「調べよ?
違ったら違ったで良いし、
そうじゃ無かったら病院に行かなくちゃ」
「え? 病院?
嫌だ、僕赤ちゃん出来ていても、ちゃんと産みたい!」
「バカだな、違うよ。
赤ちゃん出来てたら、
ちゃんと検査してもらってケアしなきゃ」
「あ~、そっちか、そうだね、そうだよね。
ドクターに見てもらわないとね」
一瞬ドキッとしたけど、
お母さんのその後のセリフで安心した。
「お母さん、これどうやって使うの?」
「箱の中にスティックが入ってるから、
スティックの先に付いてるキャップを取って
その先にオシッコを5秒ほどかけて数分待って。
妊娠してたら、線が2本出るから。
どう? オシッコを出そう?」
僕はちょっと考えて、
「うん、大丈夫と思う」
と言っておトイレに行った。
お母さんに言われた通りに
スティックの先にオシッコをかけてみると、
数分と言わず、一気に線が2本とも現れた。
赤ちゃんが……
僕のお腹の中に先輩との赤ちゃんが……
そう思うと涙が流れ出した。
僕は怖いとか、不安とかいうよりも、
喜びの方が大きかった。
あんなに一つになりたかった人の赤ちゃんが僕の中にいる。
この子は本当に僕と先輩が混じりあって一つになった証なんだ。
そう思うと、未だ見ぬ正体が愛しくて、愛しくて堪らなかった。
この子が居れば、生きていけるとさえ思えた瞬間だった。
コン・コン・コン
ドアをノックする音がした。
「どうだった? もう結果でた?」
お母さんがソワソワとしてドアの向こうで待っている様だった。
僕はドアをガチャリと開けて、
結果の出た検査薬をお母さんに差し出した。
「あ~ やっぱり妊娠していたんだね。
僕が要を妊娠した時と症状が同じだったからね。
100%の確信は無かったけど、99%そうだと思ったよ。
僕のつわりは酷くは無かったから、
要も大丈夫とは思うけど、そこは経験して見ないとな~」
「はいこれ、つわりに効くかわからないけど、
とりあえず胃腸の調子を整える手伝いをしてくれるから。
僕の時も胃腸に来てね、凄くこれに助けられたんだ」
そう言ってお母さんは僕にカモミールティーを出してくれた。
「これから僕、どうしたらいいの?」
「そうだね…… まずは……
病院に電話するね。
僕が要を産んだ産婦人科だよ。
要を取り上げてくれたドクター未だ居るかな~?」
そんなふうな事を話している時、
お母さんのLINEに電話が来た。
「あ、司君だ」
そう言ってお母さんは電話に出た。
「優君~ 要君どうなったの~?」
「ハハハ、 心配で、心配で仕方ないって顔してるね」
「そりゃそうだよ~
異国の地で具合が悪いって……」
「大丈夫だよ。
司君、お祖父ちゃんになるよ」
「あ、やっぱりそうか?
じゃあ本当に要君は佐々木君と?」
そうお父さんの話す声が聞こえて僕は束さず
LINE画面に映り込み、
「直ぐに教えなくてごめんなさい」
と謝った。
「いいんだよ。
そんな予感はしてたからね。
ま~ 僕も人に言えたもんじゃないしね。
それより、僕お祖父ちゃんになるの?」
「うん、ほら、今検査したところ」
そう言って僕は結果が出たばかりの
妊娠結果薬をお父さんに見せた。
お父さんはどう思うか少し心配だったけど、
やっぱり反応は予想通りで、
電話の向こうで万歳三唱をしていた。
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