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第二章 一節。
閑話 連合帝国のバラの皇太女。
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「お祖母様の御髪、綺麗な銀。なのにわたしってば、桃色よ?大抵、主人公なのに何故か空回りの挙げ句自滅するヒロインみたいで嫌だわ。」
祖母より贈られた『黒剣』を左上腕に巻き付けた少女が言う。
因みにこの『黒剣』であるが、これを使いこなせるのはこの世で三人。ローズと皇帝陛下と上皇であるローズの祖母。その三人である。ついでに言うと、ミセリコルディアのお印は『白ユリ』。ローズは名の通り『バラ』だったりする。
「バラの色、ローズ様のお名前にとても似合うお色だと思うのです。全く何て綺麗な色だと嫉妬し妬み嫉む、羨まむわたくしです。ホント憎たらしい。」
「何故か、殺意を感じさせる何時ものアディね。」
と、茶髪のアディライトに対し言う皇女である。
アディライトは、あのベルナール伯爵が、曾祖父である。ベルナールは伯爵位を賜り、名を『ベルナール・ド・シュミネ』と改めた。帝国に帰依したのだ。で、アディは伯爵の二女。現在皇女の傍付きの侍女である。毒舌なのは家系による物なのかもしれない。
現在、ミセリコルディア……ローズの祖母は東の海の向こう、『秋津洲』と言う島国へ『蒸気船』の売り込みの交渉と言うことをしている。
高い技術力を持つリコリー・ブランシュ連合帝国の上皇である祖母に抜かりは無いであろう。
祖母の大好きであった二人の名を持つ皇女、『ローゼリア・ローズ=マリー・ド・リコリー・ブランシュ』は、同年代の子らより幼く見える。と言うか、名前全てファーストネームっぽいのは、どうにかならんのか?
ハーフエルフである現皇帝の血を色濃く継いで、彼女自身も『聖女』であったし、魔力に到っては、祖母をも上回ると言われているのである。
そんなローゼリアのお付き侍女であるアディライトは、余程の力量のある侍女であった。
「来月には学園に入学なのですから、入寮の用意など、そろそろ始めなくてはなりませんよ。ローズ様。」
「うん、分かった。」
頭一つ背の高いアディに連れられ、今居る丘の上の牧場裏のバラ庭園から、自分のお部屋へと向かうのであった。
「アディはもう用意したの?」
「はい。とっくに終わっております。」
「アディは何時も完璧ね。それに、アディと私、同い年なのに。私どうして小さいのだろう?」
「皇帝陛下も成長が遅かった。と訊いております。種族的なものでは?ああ、でも『聖女』としての力もありますから、若作り過ぎっ………。
上皇様も聖女の力の発現のおかげで『不老不死』じゃないか?と言われる程老化しません。未だ二十代にしか見えませんし、陛下などもう70を越えておられるのに……。まるで姉妹かのよう………。ったく、なんだ?オマエラ!」
「………不敬が過ぎる。と思うわ?」
「失言でした?」
「何故に疑問系?」
と、他愛の無い会話を楽しみつつ、『階段城』と呼ばれる皇城に入る二人であった。
何時からか、帝都ブレは『エスカリエ』と言う名で呼ばれるようになり、街の皆もそう呼ぶものだから、帝都は、『エスカリエ』と言う名前に置き換わって仕舞った。
だから、来月入学する学園の名称も『皇立エスカリエ学園』と言う。
学園の学科は、四つ。『文科』『魔法科』『騎士科』『機械科』とある。ローゼリアは、『騎士科』。母や祖母と同じなのだ。
アディは『機械科』に進むそうだ。
「ああー大変っ!このアディ、失念しておりました姫様。」
何故かアディは、公的な事柄の時は、ローズ呼びでは無く、『姫様』と言う。
「夕方の列車で、教国へ行くように言われていました。何でも教国で流行り病の兆しがあるとか、お支度せねばっ!ほれ、この通り。」
と言って、列車の切符を二枚出すアディライト。
「そう言うのって、早目に思い出してよねっ!(プンプンッ)」
「ウザいです。姫様。」
「まぁ、列車に乗るより、ペーターおじ様かポチに頼んだ方が早いけど………。つか、つくづく不敬よね。」
「ペーター様は上皇様が、ポチ様は陛下がお連れですが。」
「そおだったぁー!急ぐわよアディライトぉ!」
「はっ!」
支度をして、お城から列車の駅迄、馬車で20分。間に合うか、間に合わ無いか、微妙な時間となっていた。
「走れぇー!ローズさまぁーっ!」
「っつか、お前の所為だからねー!アディーのおたんこなすぅぅぅっ!!!」
こうして列車に乗るローズ一行であった。
あり得るリコリー・ブランシュ連合帝国、その未来のお話しです。
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