白姫さまの征服譚。

潤ナナ

文字の大きさ
40 / 87
第二章 一節。

閑話 連合帝国のバラの皇太女。

しおりを挟む
 
 ◇◇◇

「お祖母様の御髪おぐし、綺麗な銀。なのにわたしってば、桃色よ?大抵、主人公なのに何故か空回りの挙げ句自滅するヒロインみたいで嫌だわ。」
 祖母より贈られた『黒剣』を左上腕に巻き付けた少女が言う。
 因みにこの『黒剣』であるが、これを使いこなせるのはこの世で三人。ローズと皇帝陛下と上皇であるローズの祖母。その三人である。ついでに言うと、ミセリコルディアのお印は『白ユリ』。ローズは名の通り『バラ』だったりする。

「バラの色、ローズ様のお名前にとても似合うお色だと思うのです。全く何て綺麗な色だと嫉妬し妬み嫉む、羨まむわたくしです。ホント憎たらしい。」
「何故か、殺意を感じさせる何時ものアディね。」
 と、茶髪のアディライトに対し言う皇女である。

 アディライトは、あのベルナール伯爵が、曾祖父である。ベルナールは伯爵位を賜り、名を『ベルナール・ド・シュミネ』と改めた。帝国に帰依したのだ。で、アディは伯爵の二女。現在皇女の傍付きの侍女である。毒舌なのは家系による物なのかもしれない。
 現在、ミセリコルディア……ローズの祖母は東の海の向こう、『秋津洲』と言う島国へ『蒸気船』の売り込みの交渉と言うことをしている。

 高い技術力を持つリコリー・ブランシュ連合帝国の上皇である祖母に抜かりは無いであろう。

 祖母の大好きであった二人の名を持つ皇女、『ローゼリア・ローズ=マリー・ド・リコリー・ブランシュ』は、同年代の子らより幼く見える。と言うか、名前全てファーストネームっぽいのは、どうにかならんのか?
 ハーフエルフである現皇帝の血を色濃く継いで、彼女自身も『聖女』であったし、魔力に到っては、祖母をも上回ると言われているのである。
 そんなローゼリアのお付き侍女であるアディライトは、余程の力量のある侍女であった。

「来月には学園に入学なのですから、入寮の用意など、そろそろ始めなくてはなりませんよ。ローズ様。」
「うん、分かった。」
 頭一つ背の高いアディに連れられ、今居る丘の上の牧場裏のバラ庭園から、自分のお部屋へと向かうのであった。

「アディはもう用意したの?」
「はい。とっくに終わっております。」
「アディは何時も完璧ね。それに、アディと私、同い年なのに。私どうして小さいのだろう?」

「皇帝陛下も成長が遅かった。と訊いております。種族的なものでは?ああ、でも『聖女』としての力もありますから、若作り過ぎっ………。
 上皇様も聖女の力の発現のおかげで『不老不死』じゃないか?と言われる程老化しません。未だ二十代にしか見えませんし、陛下などもう70を越えておられるのに……。まるで姉妹かのよう………。ったく、なんだ?オマエラ!」

「………不敬が過ぎる。と思うわ?」
「失言でした?」

「何故に疑問系?」
 と、他愛の無い会話を楽しみつつ、『階段城シャトー・エスカリエ』と呼ばれる皇城に入る二人であった。

 何時からか、帝都ブレは『エスカリエ』と言う名で呼ばれるようになり、街の皆もそう呼ぶものだから、帝都は、『エスカリエ』と言う名前に置き換わって仕舞った。

 だから、来月入学する学園の名称も『皇立エスカリエ学園』と言う。
 学園の学科は、四つ。『文科』『魔法科』『騎士科』『機械科』とある。ローゼリアは、『騎士科』。母や祖母と同じなのだ。
 アディは『機械科』に進むそうだ。


「ああー大変っ!このアディ、失念しておりました姫様。」
 何故かアディは、公的な事柄の時は、ローズ呼びでは無く、『姫様』と言う。

「夕方の列車で、教国へ行くように言われていました。何でも教国で流行り病の兆しがあるとか、お支度せねばっ!ほれ、この通り。」
 と言って、列車の切符を二枚出すアディライト。

「そう言うのって、早目に思い出してよねっ!(プンプンッ)」
「ウザいです。姫様。」

「まぁ、列車に乗るより、ペーターおじ様かポチに頼んだ方が早いけど………。つか、つくづく不敬よね。」
「ペーター様は上皇様が、ポチ様は陛下がお連れですが。」
「そおだったぁー!急ぐわよアディライトぉ!」
「はっ!」
 支度をして、お城から列車の駅迄、馬車で20分。間に合うか、間に合わ無いか、微妙な時間となっていた。

「走れぇー!ローズさまぁーっ!」
「っつか、お前の所為だからねー!アディーのおたんこなすぅぅぅっ!!!」
 こうして列車に乗るローズ一行であった。


 あり得るリコリー・ブランシュ連合帝国、その未来のお話しです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...