白姫さまの征服譚。

潤ナナ

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第二章 一節。

第45話 聖女白姫陛下の機関車。

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◇◇◇

 月日は流れ、神月ディユの1日。
 建国記念日だ。
 元の建国記念日は、紅月ルージュの30日であったが、皇城をぶっ潰した神月ディコの1日が都民の見た新皇帝、聖女ミセリコルディアの姿であったものだから、この日が建国祭となった。


 そんな訳で、帝都ブレの街の建国祭が、始まるのだ。

 近隣各国の代表者を呼び、いよいよ『蒸気機関車』のお披露目、である。
 因みに、聖リュンヌ教国は呼んで無い。
 一ヶ月もせずに、大使館を閉鎖させ、教国に居る邦人、大使を呼び戻した。貿易もしないので、かなり乾上がって来ているだろうが、知ったこっちゃ無い。

 ミセリコルディアが驚いたのは、『陛下グッズ』の数々と、おまけに『金貨』などの新貨幣。
 表にユリの意匠が入り、裏にミセリコルディアの横顔だ。

「こ、このお金って、記念じゃ無くて、このまま新金貨だったり、新銭貨だったりするの?」
「以前閣議で決まりましたがなにか?」

「だって、知らなかったし、教えてくれなかったよ?カロリーヌ!」
「何時でも議事録を観覧お出来になれる陛下に、いちいち説明の必要は、無いです。皆無です。」
 なんと言うことでしょう。議事録に目を通さないミセリコルディアがいけないのです。
 事実は、宰相以下文官皆で隠した、と言うのが真相ではあるのですが………。


◇◇◇

 神殿から延びる南門に到る大通り、線路を敷くと同時に『魔光石』の街灯も設置した。
 何時も夕方、係の職員が魔光石を新しく入れ替えるのだ。
 今は、この大通りだけではあるが、何れ他の通りにも設置する予定なのだ。

 昼間のお祭りは、屋台や出店が中心で、夕方になるとミセリコルディアは、聖女として礼拝堂に入る。
 少しは上手くなった讃美歌で締めるのだ。上手くなった。と思う。

 おお広場や他の掲示板に『お触れ書き』で、知らせたように、午後6時から、セレモニーを始める。

 6時、大広場の壇上に立つ、ちっさい白姫。
―――――何時もと同じく、「白姫ちゃーーーーん!」「白姫さまぁーーーー!」の白姫コール。

「あのう、その普段呼び、止めてーーー。一応、他所のお国の偉い方々が、賓客として来ていらっしゃいますので………。」
 これまた何時もやり取りだ。
―――――ドッっと沸く臣民達。

「えー、もう6時です。――――では、皆様方に初披露、蒸気機関車1号、『白ユリ号』です!!!」
――――拍手が、歓声が、大きく響き渡る。そして、真っ黒な煙を上げて機関車が、階段城シャトー・エスカリエから、出て来た。

「シュポシュポシュポ、ガタンガタンゴトン」と言う音と地響きを立てて、会場である大広場の中央をゆっくり進む。

「スゲー!」「大きい!」「おい、横に白ユリの花だぁ!」「白姫様のお印だ!」「わぁー可愛い。」
 などと、歓声が上がる。
 今回は『機関車』だけの登場である。そのまま、汽車は南門へと走って行った。
――――ワアアアアアァァァーーーーー!
 大歓声は続くのであった。

「あの、事前に通知したように、大通りに面しているお家の方、窓とか閉めてますよね?あのように煙が凄いので、気を付けて下さい。
 それと、来年の芽月プールジョンより、南門と神殿の間を汽車が走るようになります。なるべく煙を抑えた汽車で運用したいと考えておりますので、お楽しみに!
 因みに、今、大通りを走っている『白ユリ号』は、都市間列車として運用されますので、後、2年弱、走りません。っとぉ、戻って来ました!!!」

 また、歓声が上がる。各国の賓客もド肝を抜かれ、放心している者も散見された。

「また、賓客の皆様には、ささやか……」
――――シュポポポーポーガタンゴトンガタンゴトン。。。
 一生懸命喋っている宰相閣下の声は聞こえず。大広場の駅に機関車は止まって、「シューーーーーシューー。」とか言ってる。
(もうなんかいいやあー。わたくしなんてわたくしなんて………。)
 といじける宰相カロリーヌ。
 そんなのお構い無く、駅に止まる機関車に興味深々な賓客様達であった。


◇◇◇

 シャトー・エスカリエにて、パーティーとなる。
 毎年、建国祭ではデビュタントが行われる。それは、ミセリコルディアの治世になっても変わらない。

 今年は、エリィ、『エレオノール・ヴィクトリア・ド・ベルジュ』がデビュタントだ。
 それに、ミセリコルディアの帝国掌握事案により、去年フイにさせたル・ソワレ伯爵家の令嬢も参加する。

 今年は豪華だ。式典から、パーティー迄、周辺諸国重鎮が賓客として大勢が参加しているのだから。

 午後8時と、かなり遅めではあるが、式典官の声で始まる。

「皇帝ミセリコルディア一世陛下、ご出座あー。」
 ゆっくり進み、玉座に着く。
 先に宰相カロリーヌは、壇上の下に立っている。

 ざわめく会場に対し、片手を上げ、制する。

「では、デビュタントの入場です。」
 爵位の高い家格の者から、順に入る。そして一人一人、カーテシーをして挨拶を済ませて行く。
 今年は、公爵と侯爵家の令嬢がいないのだそうで、一番にエリィの挨拶であった。
(つか、エリィってば大胆!あんなに大きくデコルテの空いたっ――――――何あれ?エリィのお胸、大きい、だとぉ!!!)

 少し放心した、ミセリコルディア。たしか、「綺麗なピンクのドレスね。」と言ったのは、覚えている。多分、お義父様のエスコートで…………。(お胸に嫉妬で、覚えていない。お胸。。。)


 ル・ソワレ家令嬢は四番目であった。父君のエスコートで入ったのだ。

「昨年は、ゴメンね。一年遅らせる結果になって仕舞って。」
「そ、そんな畏れ多いです。」
「あら?そうすると、同い年、よね?学園でお会い致して、おりませんわね?」

「わたくしは、何時も陛下にお会いしております。只、お声を掛けていないもので………。」
「あら、それじゃあ、貴女のお顔を覚えたので、わたしから、お声をお掛けしますね?」


 デビュタントの子女の列が終盤に向かう頃、会場内のざわつきが大きくなっって来た。
 原因は直ぐに分かった。残念エルフが残念じゃ無いバージョンで入場したのだ。

「アーデ、去年やりましたわよねぇ?」
 そりゃあ騒ぐよ。父であるコルネリウスのエスコートだもの!
(イイナー!………って、わたしアーデに嫉妬している?)

「ご機嫌麗しゅう陛下。あたし今年はキチンとデビュタントしたいッス!」
 あー。安定の残念エルフに戻ったー。
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