奴隷少女は公爵夫婦に助けられました

10

ソフィーは16になり、とても美しい女性となっていた。 舞踏会にも、パーティーにも参加せず、物静かで、屋敷でひっそりと暮らしていた。

「ソフィーちゃん、またピアノ上手になったわね」

ソフィーは音楽室でピアノを弾いていた。リリスは隣に立ってニコニコ笑ってソフィーのピアノを聞いていた。

「ありがとう、ママ」

ソフィーは薄く笑った。リリスは棚から一通の手紙を取り出した。
 
「ソフィーちゃん、そろそろ舞踏会へ行ってみない？お友達を作るのも大切よ」

「ダンスを踊るの苦手…」
 
ソフィーはダンスを踊ることが苦手で、人とコミュニケーションを取るのも苦手なのでそういうものからは距離をとっていた。

「ダンスが苦手ならノアに手伝ってもらいましょうよ！」

ソフィーは口をへの字にした。

「何よその顔は、ノアったらソフィー、ソフィーって言ってソフィーちゃんに会いたがってたわよ。ちょっと顔合わせてあげなさいな」

ソフィーは仕方がなさそうに頷いた。




ソフィーはノアから小さな箱を貰った。

「…………なにこれ」

「開けろよ」

ノアにそう言われたが、ソフィーは苦い顔をして、ノアに返した。

「…指輪はまだ要らない」

「僕もう21なんだけど、早く結婚しなきゃなんだけど」

ノアは指輪をソフィーにまた渡したが、ソフィーは受け取らなかった。

「私まだ16」

「16なら結婚出来る歳だよ。そろそろ結婚の準備しなきゃだろ」

「心の準備が出来てない」

ソフィーは口をとんがらせて、そっぽ向いた。

「6年も準備する期間あっただろ」

「早くダンスの練習させて」

「おい、話聞けよ」

ソフィーは椅子から立ち上がって、ゆったりとした音楽のレコードをかけた。

「僕も得意なわけじゃないんだけど？」

「私より得意でしょ」

ソフィーはノアに手を伸ばした。ノアはソフィーの細い手を取った。 




ソフィーは重いドレスを着て、綺麗なピアスをつけ、あっさりとメイクをしていた。

「ベティ、ちょっとやりすぎじゃ」

「舞踏会ならこれくらいしないと！ソフィーは元が良いし、とっても似合ってる」

ベティはメイク道具を持ちながらにっこりと笑った。

「ノア様もきっとベタ惚れですよ」
 
ソフィーの部屋の廊下ではノアとリリスが揉めていた。

「なんで僕があいつを連れてかなきゃいけないんですか！」

「だって、ソフィーちゃん1人じゃ心配なんだもの。今日暇でしょ？ソフィーちゃん連れていきなさいよ。ほら！」

リリスはノアの背中を押し、ソフィーの部屋へ入れた。

「ちょ、やめ！」

ノアはソフィーを見て、目を丸くした。

「まぁ！ソフィーちゃん、また一段と可愛くなっちゃって！こういうおめかしもたまにはしないとね」

リリスはソフィーを見て、嬉しそうに笑っていた。ノアは口をとんがらせて「まぁまぁだな」と言った。

「褒めなさい！ノア！」

「それよりもう、そろそろ時間ですよ」

リリスは時計を見て、ソフィーの手を取り、馬車へと連れていった。

ソフィーとノアは馬車の中で2人きりになった。ノアは外を眺めながら、馬車に揺られていた。

「まぁ、ほかの女よりは綺麗なんじゃないか」

「それって、他のどんな女性…世界一の美女と比べても、綺麗ってこと？それとも平均的な女性と比べて？」

ノアは顔を顰めてソフィーを見て、また外を眺めた。

「お前のそうゆうとこ嫌い」

ソフィーは小さく笑って、首を傾げた。

「私はあなたのそうゆうところ嫌いじゃない」